2022.02.25

社保・医療

豪州のジョコビッチ入国拒否が提起したワクチン接種義務化の問題点-日本もワクチン接種要件を貫き通した豪州を見習うべき-22.02.25

<ジョコビッチの入国を認めなかった豪州>
 ジョコビッチは、テニスファンなら誰もが知っているフェデラー、ナダルと並ぶ三強の1人である。そのジョコビッチが年始早々、豪州の入管で入国の要件を満たす証拠が提出できないことから隔離施設に送られ、入国を拒否されて世界中のニュースとなった。1月4日に、自らのTwitterでワクチンは未接種だけれどもワクチン接種免除措置を了解してもらっているので、全豪オープン4連覇を目指して出発すると書き込んでいたという。しかし、入管はそれを受け付けなかった。

<新大陸は旧大陸の病原菌の侵入を防ごうとする>
 豪州は、新大陸であり遠く離れているので、旧大陸にある病原菌がほとんど存在しないことから、もともと動・植物検疫が他の国よりずっと厳しい。なぜならば、病気が発生したら得意の農畜産物を外国に輸出できなくなるからである。そのため、感染症に対しても他の旧大陸諸国よりもずっと敏感なのは頷ける。これが交易なしに生きられず、こうしたことに鈍感な日本人や陸続きで交流している旧大陸の国の人にはなかなか理解できないことである。

<コロナでも軍事面でも筋を通す豪州>
 モリソン首相の与党(自由党・国民党)の支持率が下がり、野党(労働党)に2%差をつけられていることから、国民感情に配慮して人気取りのために強硬措置に出た、と報じられているが、本質を捉えた見方ではない。このことは別稿で触れたいと思うが、貿易関係では中国と仲たがいすると鉱物や農産物が輸出できなくなり相当不利になるにもかかわらず、軍事面のあまりにも横暴な中国に対して厳しい態度をとっている。つまり豪州は何かにつけて筋を通す国であり、米中激突の前に豪中激突が起きている。

<豪政府の対応を甘くみたジョコビッチの誤算>
 ジョコビッチがすぐ裁判所に訴えたところ、豪側にも手続きに不備があったことから、一旦はビザの取り消しは止められたが、その後10日間ほどドタバタし結局入国できずに帰国することになった。なぜなら、①12月にPCR検査で陽性になったけれども、フランスのメディアの取材を受け、友人達とパーティーを開いていた。②書類に不備があった。③入国前にスペインに行ったことが記入されていなかった等の行状がよろしくなかったからだ。
 これらの3点についてすべてで詫びてはいるが、時すでに遅しであった。全豪オープンは、ジョコビッチが2010年に初めてグランドスラムで優勝した大会、かつ今3連勝中で史上初の4連覇がかかっていた。また3強がグランドスラム(4大会)の優勝回数を争っているが、ここで優勝するとジョコビッチが一歩リードすることになる。それを全て棒に振ったのである。

<豪政府の首尾一貫振りに敬意を表す>
 豪政府は、20年3月に外国人の渡航を禁止するとともに、ワクチンの義務化や外出制限等厳しい措置を講じていた。そうした中で世界のスターとか政治家とか有名人を特別扱いするのは国民が怒るに決まっており、もし例外を許せばワクチン接種を嫌う人たちに示しがつかないという状況だった。前号(ワクチン義務化を急ぎ規制緩和に動く欧米諸国 22.02.21)のデモに揺れる各国をみるとよくわかる。しかし、私は豪政府が筋を通した事に敬意を表したい。日本等の「まあまあ」「なあなあ」の国々では例外扱いをされていたのではないかと思うからである。

<自然な生き方、グルテンフリー食生活の先導者ジョコビッチ>
 しかし、私は別の観点からジョコビッチに同情する点がある。1つは彼は『ジョコビッチの生まれ変わる食事』という本も出版しており、食生活に非常にこだわるアスリートだということである。プロ選手になってから、小麦のグルテンに不耐性だとわかり、それ以来小麦なしの食生活をして体調が良くなったという。炭水化物ダイエットが世界に広まる一つのきっかけになったと言われており、同じスポーツ選手のベッカムや歌手のレディー・ガガが同じように炭水化物ダイエットをしているという。
 こうした生活態度からもわかるように、彼は自然に生きることを重視しており、当然その延長線上で自然界ならありえないワクチンを打つことを拒否していたのだ。小さなことだが、EUは平均60%~70%のワクチン接種率だが、東欧諸国は政府に対する信頼も薄く、そもそもあまり政府に従わないことが多く、セルビアは47%にすぎない。だからセルビアのアレクサンダル・ヴチッチ大統領は、自国の世界的選手をかばって豪政府を非難する声明を発している。緊張が高まるウクライナ情勢とは雲泥の差だが、ワクチン接種を巡り小さな国際論争が発生したのである。

<世界ランキング1位の驕りもあった>
 ただ、これと全く反対になるけれども、もう一つ私が気になることがある。記憶が薄れかけていると思うが、東京オリンピックの折り、真夏の暑さのみならず蒸し暑く湿度の高い中での競技日程を強いられたことから、ジョコビッチはテニスの試合時間をもっと遅くにずらしてほしいと要請した。メドベージェフが最初に言い始めたことを受けてジョコビッチが支持している。そのもっともな要請が受け入れられ、試合開始時刻が午前11時から午後3時に延期された。
 もともとアメリカのテレビの放映料に引っぱられたIOCが、真夏のオリンピックを日本に押し付け、それを唯々諾々と受け入れるという愚かなことを日本がしていたことに端を発している。ジョコビッチがテニス会場の有明コロシアムでは煌々と照明がついていて、夜遅くなったほうが選手には好都合だし、アメリカやヨーロッパのテレビの放映時間にも合っているのではないかと合理的なことを述べている。つまり、ワクチン拒否同様に、理路整然としているのである。
 そこに世界ランキング1位としての思い上がりやその延長線上で豪政府も4連覇を目指す自分を拒否するはずがない、という驕りがあったとしたら鉄槌ものだが、そうではなくスポーツ選手として自然に振る舞っている。

<ワクチンを受け入れない生き方を認める>
 ワクチンの義務化に対してヨーロッパ諸国ではデモが行われるなどして、自分の体の中に異物を注射することをどうしても嫌がる人達がいっぱいいる。私は彼らのそのような気持ちを、それなりにわかる日本人の一人である。ベジタリアンとかヴィーガンと呼ばれる人たちが欧米に多く日本には少ないが、彼等は変なものを食べない、変なものを注射しないということを信条としているのである。日本で食品添加物、農薬、遺伝子組換えに拒否反応があるのと同じである。彼はスポーツマンであり、自分の肉体は自分で管理するという信念を持ち、その一環としてワクチンを拒否するなら立派としか言いようがない。ここにこの問題の根深さがある。

<ジョコビッチが提起するワクチン義務化問題>
 日本は今、「パンデミック疲れ」した財界がこぞって、水際規制の緩和を求めている。1日の入国者の枠を3000人から5000人にしただけで、とても外国人留学生をかつてのように受け入れる状況ではない。
 そうした中、2月21日、2年前から外国人の渡航を全面禁止していた豪政府が、ワクチン接種等を条件に解禁した。移動制限は緩和する方向に向かい始めた。
 ただ、ジョコビッチがこのままワクチン接種を受けないままだとすると、3年も豪州に入国できないことになる。また、フランスでも既にスポーツ担当相がローランギャロス(全仏開催地)への入場はワクチン接種が必要と明言している。これをそのまま貫徹されると5月の全仏オープンにも出場できなくなる。イギリスは規制緩和の先進国であり、ウインブルドンには参加できる。
 強制的なワクチン接種そしてそれに伴う水際対策は、これだけ問題を抱えているということだ。これがジョコビッチのように国際試合に出場できるかどうかとなると顕在化する。
 ジョコビッチ騒動に内在する問題については、日本でもよく考えてみる必要があるのではないかと思っている。

<ジョコビッチの入国を認めなかった豪州>
 ジョコビッチは、テニスファンなら誰もが知っているフェデラー、ナダルと並ぶ三強の1人である。そのジョコビッチが年始早々、豪州の入管で入国の要件を満たす証拠が提出できないことから隔離施設に送られ、入国を拒否されて世界中のニュースとなった。1月4日に、自らのTwitterでワクチンは未接種だけれどもワクチン接種免除措置を了解してもらっているので、全豪オープン4連覇を目指して出発すると書き込んでいたという。しかし、入管はそれを受け付けなかった。

<新大陸は旧大陸の病原菌の侵入を防ごうとする>
 豪州は、新大陸であり遠く離れているので、旧大陸にある病原菌がほとんど存在しないことから、もともと動・植物検疫が他の国よりずっと厳しい。なぜならば、病気が発生したら得意の農畜産物を外国に輸出できなくなるからである。そのため、感染症に対しても他の旧大陸諸国よりもずっと敏感なのは頷ける。これが交易なしに生きられず、こうしたことに鈍感な日本人や陸続きで交流している旧大陸の国の人にはなかなか理解できないことである。

<コロナでも軍事面でも筋を通す豪州>
 モリソン首相の与党(自由党・国民党)の支持率が下がり、野党(労働党)に2%差をつけられていることから、国民感情に配慮して人気取りのために強硬措置に出た、と報じられているが、本質を捉えた見方ではない。このことは別稿で触れたいと思うが、貿易関係では中国と仲たがいすると鉱物や農産物が輸出できなくなり相当不利になるにもかかわらず、軍事面のあまりにも横暴な中国に対して厳しい態度をとっている。つまり豪州は何かにつけて筋を通す国であり、米中激突の前に豪中激突が起きている。

<豪政府の対応を甘くみたジョコビッチの誤算>
 ジョコビッチがすぐ裁判所に訴えたところ、豪側にも手続きに不備があったことから、一旦はビザの取り消しは止められたが、その後10日間ほどドタバタし結局入国できずに帰国することになった。なぜなら、①12月にPCR検査で陽性になったけれども、フランスのメディアの取材を受け、友人達とパーティーを開いていた。②書類に不備があった。③入国前にスペインに行ったことが記入されていなかった等行状がよろしくなかったからだ。
 これらの3点についてすべてで詫びてはいるが、時すでに遅しであった。全豪オープンは、ジョコビッチが2010年に初めてグランドスラムで優勝した大会、かつ今3連勝中で史上初の4連覇がかかっていた。また3強がグランドスラム(4大会)の優勝回数を争っているが、ここで優勝するとジョコビッチが一歩リードすることになる。それを全て棒に振ったのである。

<豪政府の首尾一貫振りに敬意を表す>
 豪政府は、20年3月に外国人の渡航を禁止するとともに、ワクチンの義務化や外出制限等厳しい措置を講じていた。そうした中で世界のスターとか政治家とか有名人を特別扱いするのは国民が怒るに決まっており、もし例外を許せばワクチン接種を嫌う人たちに示しがつかないという状況だった。前号(ワクチン義務化を急ぎ規制緩和に動く欧米諸国 22.02.21)のデモに揺れる各国をみるとよくわかる。しかし、私は豪政府が筋を通した事に敬意を表したい。日本等の「まあまあ」「なあなあ」の国々では例外扱いをされていたのではないかと思うからである。

<自然な生き方、グルテンフリー食生活の先導者ジョコビッチ>
 しかし、私は別の観点からジョコビッチに同情する点がある。1つは彼は『ジョコビッチの生まれ変わる食事』という本も出版しており、食生活に非常にこだわるアスリートだということである。プロ選手になってから、小麦のグルテンに不耐性だとわかり、それ以来小麦なしの食生活をして体調が良くなったという。炭水化物ダイエットが世界に広まる一つのきっかけになったと言われており、同じスポーツ選手のベッカムや歌手のレディー・ガガが同じように炭水化物ダイエットをしているという。
 こうした生活態度からもわかるように、彼は自然に生きることを重視しており、当然その延長線上で自然界ならありえないワクチンを打つことを拒否していたのだ。小さなことだが、EUは平均60%~70%のワクチン接種率だが、東欧諸国は政府に対する信頼も薄く、そもそもあまり政府に従わないことが多く、セルビアは47%にすぎない。だからセルビアのアレクサンダル・ヴチッチ大統領は、自国の世界的選手をかばって豪政府を非難する声明を発している。緊張が高まるウクライナ情勢とは雲泥の差だが、ワクチン接種を巡り小さな国際論争が発生したのである。

<世界ランキング1位の驕りもあった>
 ただ、これと全く反対になるけれども、もう一つ私が気になることがある。記憶が薄れかけていると思うが、東京オリンピックの折り、真夏の暑さのみならず蒸し暑く湿度の高い中でテニスを強いられたことから、ジョコビッチはテニスの試合時間をもっと遅くにずらしてほしいと要請した。メドベージェフが最初に言い始めたことを受けてジョコビッチが支持している。そのもっともな要請が受け入れられ、試合開始時刻が午前11時から午後3時に延期された。
 もともとアメリカのテレビの放映料に引っぱられたIOCが、真夏のオリンピックを日本に押し付け、それを唯々諾々と受け入れるという愚かなことを日本がしていたことに端を発している。ジョコビッチがテニス会場の有明コロシアムでは煌々と照明がついていて、夜遅くなったほうが選手には好都合だし、アメリカやヨーロッパのテレビの放映時間にも合っているのではないかと合理的なことを述べている。つまり、ワクチン拒否同様に、理路整然としているのである。
 そこに世界ランキング1位としての思い上がりやその延長線上で豪政府も4連覇を目指す自分を拒否するはずがない、という驕りがあったとしたら鉄槌ものだが、そうではなくスポーツ選手として自然に振る舞っている。

<ワクチンを受け入れない生き方を認める>
 ワクチンの義務化に対してヨーロッパ諸国ではデモが行われるなどして、自分の体の中に異物を注射することをどうしても嫌がる人達がいっぱいいる。私は彼らのそのような気持ちを、それなりにわかる日本人の一人である。ベジタリアンとかヴィーガンと呼ばれる人たちが欧米に多く日本には少ないが、彼等は変なものを食べない、変なものを注射しないということを信条としているのである。日本で食品添加物、農薬、遺伝子組換えに拒否反応があるのと同じである。彼はスポーツマンであり、自分の肉体は自分で管理するという信念を持ち、その一環としてワクチンを拒否するなら立派としか言いようがない。ここにこの問題の根深さがある。

<ジョコビッチが提起するワクチン義務化問題>
 日本は今、「パンデミック疲れ」した財界がこぞって、水際規制の緩和を求めている。1日の入国者の枠を3000人から5000人にしただけで、とても外国人留学生をかつてのように受け入れる状況ではない。
 そうした中、2月21日、2年前から外国人の渡航を全面禁止していた豪政府が、ワクチン接種等を条件に解禁した。移動制限は緩和する方向に向かい始めた。
 ただ、ジョコビッチがこのままワクチン接種を受けないままだとすると、3年も豪州に入国できないことになる。また、フランスでも既にスポーツ担当相がローランギャロス(全仏開催地)への入場はワクチン接種が必要と明言している。これをそのまま貫徹されると5月の全仏オープンにも出場できなくなる。イギリスは規制緩和の先進国であり、ウインブルドンには参加できる。
 強制的なワクチン接種そしてそれに伴う水際対策は、これだけ問題を抱えているということだ。これがジョコビッチのように国際試合に出場できるかどうかとなると顕在化する。
 ジョコビッチ騒動に内在する問題については、日本でもよく考えてみる必要があるのではないかと思っている。

投稿者: 管理者

日時: 2022年2月25日 09:39