2022.04.09

政治

選挙前の危機だからと国民に飴ばかりをバラまく政治は無責任 -5千円給付、ガソリン価格値下げ、原発再稼働は国民に迎合しすぎではないか- 22.04.09

<選挙前の政府与党のバラマキ政策は見え透いている>
 突然出てきた政府・与党の年金受給者らへの5千円給付案は、野党はもちろんこと与党からも批判を受けている。選挙目当てという魂胆が見え透いているからである。政府は、世界中が財政規律を度外視してコロナ対策に暴走しているのをいいことに、107兆円もの歳出になる大型予算を組み、3月22日に予算が成立する前から、既に大型の補正予算という声も聞かれている。今や5千円給付は白紙になりつつあるが、当然のことである。
 本当は、野党こそそうした歪んだ政策をしっかり監視しなければならないのだが、政府・与党に輪をかけた大衆迎合的政策で、参院選に臨もうとしている。私は好ましいことではないと思っている。

<トリガー条項凍結解除で与党に抱きつく国民民主党は野党にあらず>
 その最たるものは、ガソリン価格の高騰に対するトリガー条項の凍結解除である。我が立憲民主党も含め、野党はこぞってトリガー条項(ガソリンの平均小売価格が1リットル当たり160円を3ヶ月連続で超えた場合に発動される。ガソリン税(1リットル当たり53.8円)のうち、「揮発油税」と「地方揮発油税」の特別税率分として上乗せされている分(同25.1円)の課税を停止し、税負担を抑える仕組み)の凍結を解除して、本法どおりガソリン価格を値下げすべきと主張している。なかでも見苦しいのは国民民主党であり、政府与党が確約もしておらず、ただ「検討する」といっただけなのに、いわば抱きついて予算案に賛成してしまった。
 私はすぐさま、野党筆頭理事を務める倫選特委員会の質問時間配分で、従来衆議院11人の共産党と10人の国民民主党に等しく時間を割り振っていたものを、野党内の小政党に余分に時間を割いている慣行をやめ、共産党21分、国民民主党は8分(ドント方式で計算したもののみ)とした。その後、国民民主党が3月22日の参議院でも予算に賛成したのを機に、立憲民主党として質問時間の融通はしないことに決めた。

<ガソリン価格の値下げでカーボンニュートラルは長期的目標達成が遠のくばかり>
 食料品をはじめ諸々の価格が値上がりしており、ガソリン価格の値下げは願ってもないことである。だから、政府は石油元売り各社への補助金の上限を1ℓあたり25円に引き上げている。
 しかし、気候変動防止のためCO2排出をゼロにするというカーボンニュートラルとの整合性はどうなるのだろうか。それよりも、25.1円/ℓを失う地方財政への打撃はどうするのか。一方予算は通過したので、予算組み替えの議論は回避したが、トリガー条項凍結解除には法改正が必要であり、実行に移すには補正予算が必要でもある。財政規律の健全化などもうどこかへ吹っ飛んでしまっている。

<環境に優しい生き方に誘導する政策を織り込む>
 ウクライナ国民は戦火の中にあり、命の危険にさらされている。世界も日本も痛みをお互いに分かち合い、我慢をしなければならない時である。それを一斉に耳障りのいいことを大声で主張するなら、政治家も政党もいらないと言ってよい。仮に一時しのぎにガソリン価格の値下げをしたところで、石油資源は先細りであり、この機に思い切って脱炭素を加速化する政策を盛り込まなければならない。
 ない知恵で私見を述べるなら、ガソリン価格の値下げは生活食料等必要品を運ぶトラック等に限定すべきであり、少なくともレジャー用の乗用車には適用すべきではない。それと同時に列車や船を多用するモーダルシフトを支援すべきなことは言うまでもない。このようなピンチをチャンスに変えるのである。

<原発再稼働を声高に主張する維新、国民民主党>
 電力供給が逼迫してはじめて電力需給逼迫警報(東日本大震災を後に導入され、予備率が3%に下回った時に発する)が発せられた。ここぞ好機とばかり恒常的な電力不足を回避するため、この際原発の再稼働を認めるべきという主張が噴出した。経済界からは、ロシアに石油・天然ガス等のエネルギー資源を依存するEUで原発回帰の動きを見せるフランスを参考にすべき、という都合のいい声が聞こえてくる。しかし、ドイツ、オーストリア、デンマーク、スペイン等はそうした動きに反対している。「身を切る政策」が売りの維新の松井代表が大きな声で主張し出した。また、玉木国民民主党代表もすぐ飛びついている。見苦しい限りである。

<国民は福島第一原発事故の再来を恐れている>
 こうした中、朝日新聞の3月19、20日の世論調査によると、ガソリンや電気光熱費の値上がりが家計を圧迫しているにもかかわらず、原発の再稼働反対が46%と賛成38%を上回っている。一時凌ぎよりも原発攻撃に不安を感じ(59%、感じない35%)、自然災害による原発事故も心配(88%)している。
 地震による津波を「想定外」として起きたのが福島第一原発事故である。日本国民はウクライナへのロシア軍の侵攻という、今再びの「想定外」による原発リスクへの波及に震撼しているのである。驚くべきことに、国民のほうが長期的視点に立脚して原発をみており、ポピュリズム政党が人気取り政策に堕しているのである。

<再生可能エネルギーへの転換のチャンスととらえる>
 電力需要増大や災害による大停電(ブラックアウト)を避けるためには、他にいくらでもやるべきことがある。例えば大規模発電所の分散であり、再生可能エネルギーの地産地消である。今回も揚水式水力発電所で急場を凌いでいる。太陽光、水力、風力など地域に合った再生可能エネルギーの開発に重点投資すべきなのだ。他にも50ヘルツと60ヘルツの違いを超えた東・西日本の融通である。更には、思い切った省エネであり、夜中の不必要な照明、冷暖房のかけすぎ等を抑えるだけでも大分違う。
 政府は税収が足りないことを肝に銘ずるべきである。経済界は右肩上がりの成長はいつまでも続かないことに気付くべきである。国民も今までのようなぜいたくはできないことを知るべきなのだ。日本のエネルギー自給率は11.2%と低いが、だからといって原発に頼るというのは安きに流れ過ぎである。歯を食いしばって再生可能エネルギーによる地産地消にもっていくことである。

<立憲民主党は、ミレニアム世代、Z世代の声に耳を傾け環境重視を打ち出すべし>
 昨年の総選挙で快進撃を遂げた維新は、地元(になりつつある)兵庫・西宮市長選で現職にダブルスコアで敗北した。非核三原則の見直しまで言及し調子に乗った維新へのお灸に他ならない。国民の政治家を見る眼は、着実に肥えてきているのである。党首を先頭に支離滅裂な国民民主党にも、いずれ国民の厳しい審判が下るだろう。
 政治は相変わらず経済政策のオンパレードだが、ミレニアム世代(1980~1995年生まれの25~40歳ぐらい)やその下のZ世代(25歳以下)といった将来世代は、環境問題により関心が高くなっている。政治家がそれに気付いていないのだ。
 国民に嫌われても、もっと遠くを見据えた政策をうちたてる政治家・政党が必要とされており、立憲民主党が先頭に立って行かなければならない。

投稿者: しのはら孝

日時: 2022年4月 9日 09:47