2022.07.22

外交安保

【ウクライナシリーズ⑤】日本がウクライナと同じくアメリカの代理戦争で戦場化するおそれ- 歯止めのかからない日本の浮かれた軍事国家への道 -22.07.22

 岸田政権は、ウクライナ侵攻に乗じるかのように敵基地攻撃能力(改め反撃能力)、防衛費をGDPの2%に引き上げ、核兵器禁止三原則に風穴をあける核共有、武器輸出禁止原則もとっぱらう、自衛隊を明記する憲法9条改正、と勇ましくなりすぎている。

<台湾有事には動くという危ういバイデン発言>
 もし中国が台湾に手を出した時にアメリカがどう振る舞うか。故安倍晋三元首相は台湾有事は日本有事であり、日米同盟で一緒に対応すると明言してはばからなかった。
 5月23日の日米首脳会談でバイデンが「台湾有事には動く」と発言し、ホワイトハウスが火消しに回っている。アメリカの公式見解は「台湾自らの防衛努力を支援する」であり、ウクライナと同様に直接手を下さないで、背後で糸を引く逃げ腰の態度に終始する可能性が高い。それを日本では「最高の失言」などと有頂天になっている者がいる。
 日本は逆に台湾有事に巻き込まれないようにしなければならない。中国が台湾に侵攻すれば、台湾がウクライナと同じく戦場化し、米中の代理戦争が行われることになる。それが日本にも飛び火し、米中代理戦争の場が日本にまで広がるおそれがなきにしもあらずなのだ。

<アメリカはウクライナ同様に台湾に直接介入はしない可能性大>
 バイデンの台湾防衛発言は三度目であり、言わば確信犯である。日本での発言となると失言では済まされなくなる。中国は反発し台湾は謝意を表明した。バイデンはロシアの侵攻を防げなかった反省から、中国を牽制せんとしているのだろう。ウクライナへの派兵を度々否定し、6月5日ニューヨークタイムズに改めて同趣旨の寄稿をしているのと好対照である。しかし、ウクライナでの腰の引けた対応を見るにつけ、台湾有事の際にもアメリカ軍の参戦が直ちにあるとは思えない。現に台湾はアメリカのウクライナへの対応からしてアメリカの援軍をあまりあてにしないようになってきている。

<アメリカが介入した場合は、日本も参戦し戦場化する恐れ>
 アメリカがバイデンの言うとおり、中国の台湾攻撃を放置せず台湾を守ろうとする時には、日米安保条約6条(極東条項)により基地は提供する義務がある。更に、日本が我が国への武力攻勢に至る恐れがある「重要影響事態」と認定した場合、自衛隊は米軍への補給や輸送を担えることになる。米船舶が攻撃されれば、日本の存立が脅かされる「存立危機事態」になり、集団的自衛権が行使できることになる。もし、中国が日本の米軍基地をミサイル攻撃の標的にした時には、敵基地攻撃能力ないし反撃能力を持ち出さなくとも、自衛のための戦いをしないとならない。
 かくして、台湾有事にアメリカが参戦すれば、法律上も日本も参戦し、日米台対中国の戦いとなり、日本も戦場化する可能性が高いのだ。

<世界のウクライナ支援、ロシア非難が中国の台湾侵攻の歯止めになっている>
 バイデンの台湾有事への関与発言は、ウクライナに介入しないというメッセージが強くなりすぎたことへの反省かもしれない。なぜなら、アメリカの軍事的行動への強い拒否感が、プーチンにはアメリカの腰のひけた姿勢と映り、その後の侵攻に拍車をかけた可能性が強いからだ。そしてこのままアメリカの弱腰の姿勢、すなわち不介入の状態が続くとなると、ロシアだけでなく、中国も積極的に現状変更のための軍事的行動すなわち台湾併合といったことをしかねないからだ。
 しかし、幸いなことに全世界のロシアの侵略への猛烈な風当りとウクライナへの同情支援に恐れをなした中国は、うかつに台湾に攻め込んだらどうなるか思い知ったところであり、当面行動を起こせないだろう。経済制裁の行方もしかと見守っており、中国はいわばウクライナの様子見といったところだろう。
 その意味では、ウクライナの結果は今後の世界に重要な意味を持ってくる。もし、ウクライナの独立が保たれなければ、再び弱肉強食の時代となり、大国の横暴が繰りかえされることになる。逆だと、今のリベラルな国際秩序が維持されることになる。民主主義社会にとって、ここが正念場である。

<日本はアメリカの軍産複合体の願ってもない上客>
 次に、中国が問題の尖閣諸島に手を出したら、アメリカは日本の味方をしてくれるのかという、かねてからの日本の重大関心事がある。中国は無人島で日本を刺激するようなことはするはずもないと思うが、一部の人たちはそれを煽って日本の軍備増強を急ごうとしている。
 アメリカないしバイデン、そして軍産複合体にしてみたら、日本は飛んで火に入る夏の虫である。ウクライナばかりではなく、東アジアに金持ちで武器をどんどん買ってくれる国があり、その国日本が「防衛費をGDPの2%にまで上げる」などと言い出してくれているのだ。ウクライナへの武器援助にはアメリカの税金が使われているが、日本であれば自国の金で大量に買ってくれるのだ。
 そしてこのようなことは、戦場化する恐れのないアメリカ(の軍産複合体)は大喜びするが、中国や北朝鮮は警戒して侵攻の口実としてしまうかもしれない。そればかりでなく、日本に侵略された歴史を持つ東南アジア諸国も反発することは必至である。

<アメリカの代理戦争で東アジア全体が戦場化する恐れ>
 ロシアは、ウクライナには米軍基地などなく、ただNATOに加盟するかもしれないというだけで侵攻した。ところが、日本には既に日米安全保障条約があり、韓国には米韓相互防衛条約がある。日韓とアメリカは一体なのだ。沖縄を中心に日本中に米軍が配備されている。中国ばかりではなく北朝鮮にも十分に攻撃の大義名分を与えている。ややこしくなるので省くが、韓国も巻き込まれることになり、東アジアが一気に戦場化してしまう。つまり、東アジア全体が巨大戦場化する恐れがあるのだ。
 6月10日のシンガポールのアジア安全保障会議(シャングリア・ダイアローグ)の基調講演の中で、岸田総理は「ウクライナが明日の東アジアかもしれない」と述べ、外向けには警鐘を鳴らしている。同時に、必要なのは日本国内に向けての軍事突出への歯止めである。日本一国だけで突っ走るのではなく、NATOに代わるQUAD(日米豪印戦略対話)、AUKUS(米英豪軍事同盟)等で協力して中国に対峙するのが順当である。その意味では日韓が徴用工問題や慰安婦問題で対立している時ではない。日米韓の中国や北朝鮮に対する抑止力が試される時を迎えている。

<沖縄だけが悲惨な戦場化したが、本土は未経験のため警戒意識が低い>
 日本は第二次世界大戦に敗れはしたものの、県民の4分の1、約20万人が犠牲となった沖縄以外は戦場にならなかった。6月23日ウクライナの内戦状態の中、77年前を思い起こし沖縄慰霊の日が開催された。もちろん、広島・長崎に原爆は落とされたし、東京大空襲をはじめとして、あちこちで民間人も巻き添えになった。旧ソ連や仏・独・伊等も、国土の中で戦った経験があり、その悲惨さを承知している。中間地帯にあるウクライナは古くから各国の凌ぎを削る場所で、多くの血が流されBloodlands(流血地帯)とも呼ばれている。それに対して、島国日本の多くの日本人はどうも日本の戦場化などあり得ないと甘く見ているような気がする。もっと自らの危険を悟らなければなるまい。

投稿者: 管理者

日時: 2022年7月22日 11:56