2022.08.06

政治

【安倍首相国会論戦追悼シリーズ③】 篠原の冗談交じりの嫌味質問に真面目に答弁をする安倍首相 -仕返しに「尊敬する篠原議員」と3度も打ち返される-22.08.06

<篠原さんは安倍首相と漫談>
 我が党の真面目なベテラン議員からは「篠原さんは安倍首相と漫談しているようなものだ」と嫌味を言われた。また、「篠原さんほど安倍首相にキツイことを言っている人はいない。それなのに篠原さんにはカッとなって怒らない。安倍首相は篠原さんの皮肉の褒め殺しの言葉を本気に褒められていると勘違いしているからではないか」などと失礼な解説をする同僚議員もいた。安倍首相はユーモアのわかる人で、言い返しも上手くて、私とのやり取りをある意味楽しんでいたのかもしれない。そして、私のこうした質問のファンも多くいた。
 私が相当どぎつい嫌味を言っても怒らなかったのは、私が一国のトップとして安倍首相に敬意を表しつつ質問していたからである。言っては悪いが、最初からケンカ腰でワンワンキャンキャン喚かれては、まともに答弁する気にならないのも仕方あるまい。

<小泉元首相の原発廃止の忠告は聞くべし>
2014年1月31日 予算委
篠原...小泉元首相は、フィンランドに行かれて、あんな小さな国が高レベル放射性廃棄物の処理を責任をもってやっているとびっくり仰天し、突然言い出されたと思っておられると思います。二年前に、私の『原発廃止で世代責任を果たす』という本を、読みたいと言って読んでおられます。つまり、もうずっと原発がおかしいとお考えになっていたんです。原発を持っていることがもとで、日本がつぶれてしまうんじゃないか、オリンピックもできなくなるのではないか、と思って小泉首相が目をおかけになった安倍首相に忠告されているんだろうと思います。当選回数の少なかった安倍首相の才能を見出し期待しておられたんです。私はそれに報いるべきだと思います。
安倍...尊敬する篠原委員の本が小泉元総理に影響を与えていたというのは今初めて承知をした次第でありますが、私にとっては政治の師というのは、小泉さんもそうでありますが、同時に、森先生もそうでありまして、お二人は私は官房長官としてお仕えをさせていただきまして、お二人の指導によって今の自分があると、こう思っているところでございます。エネルギーについては、多様化していくことも大切であるわけでありまして、もちろんこの三年間でしっかり再生可能エネルギーにも力を入れていく考えでございます。そうしたものが原発を代替していくという確証を得ることができなければ、原発をやめるというわけには、責任ある立場としては言えないわけでありまして、これからも課題について向き合いながら、我々は低廉で安定的なエネルギー供給、そしてなるべく自前のものを増やしていく。そういった観点も入れながら、原発依存度をできる限り低減していきながら、エネルギーのベストミックスを目指していきたい。

 大恩ある小泉元首相を持ち出し、情の安倍首相に情で攻めるも、森元首相も師だとかわされた。ただ、珍しく原発に代替するエネルギーの確証が得られれば減らしていける、と少し妥協した素振りを見せる。一抹の後ろめたさの故であろう。

<満蒙開拓の悲惨な集団自決には素直に手を合わせる>
2014年1月31日 予算委
篠原...満蒙開拓団高社郷の集団自決は、終戦の事実を告げられなかった悲劇です。関係者はほとんど亡くなっていて、慰霊碑もできなかったところ、阿智村に満蒙開拓の平和記念館ができています。こういう人たちこそ国が祭って、国がすいませんでしたと言うべきだと思うんです。
安倍...私は寡聞にして存じ上げなかったんですが、人々に終戦の事実を知らせていなかったということについては、これは大変な問題でありますし、このことによって悲劇が起きていたということは、我々しっかりと肝に銘じなければならないだろうと思う次第であります。そうした戦争の惨禍で人が苦しむことのないような時代を作っていかなくてはならないと決意を新たにし、こうした悲劇で亡くなられた方々に対して、私も手を合わせていきたいと思います。

 特定秘密保護法は、秘密を洩らした役人や記者を罰することになっているが、大事な事実を隠して語らない政府にも罰を与えるべきと主張。それに対し、安倍首相は阿智村の平和記念館に手を合わせるとしおらしい反応をした。安倍首相は行かなかったが、この質問の成果か16年11月17日平成天皇皇后両陛下が訪れている。

<安保法制懇の偏った委員構成>
2014年2月13日予算委
篠原...安保法制懇のメンバーは、ほとんど全員が集団的自衛権の行使を容認する人たちだらけです。選挙の洗礼を受けた国会議員がきちんと議論して決めていくべきであって、このやりかたはよくないと思います。
安倍...尊敬する篠原委員は誤解をされているんだろうと思います。メンバーについては外交防衛政策に関する実務経験者、政治、外交、憲法、国際法等の学会関係者、経済界の民間有識者といった幅広い代表の方々に参加をしていだきまして、現実的な状況、国際情勢についてしっかりと議論をされる方、知見を持った方が議論をしておられるわけであります。

翌15年の安保法制が念頭にあったのだろう、答弁はぶっきら棒そのもので、委員の偏りは空疎な議論を排しているだけだ、と聞き入れなかった。

<農政の通説を数字でくつがえす説明>
 この日の質問ではいつものように数字を駆使して、日本の農業が言われているほど保護されていない、日本の畜産、特に養鶏、養豚は土地の制約がないので、規模は世界一だ、といったことを説明し、もっと農家を手厚く保護すべきだと訴えた。視聴者の方から数字をくれという要望が殺到した。
2014年2月27日 予算委
安倍...篠原委員が、日本の農業の予算に占める比率、あるいは国際比較について大変
わかりやすくご説明いただきました。日本の農業についても、しっかりと、規模拡大、
生産性の向上に努力をしてきたのは事実であろうと思います。同時に、基本的に
日本の国土には山があり、そして浜が迫ってきているという狭隘な国土において、
相当の努力をしてこられたわけでございます。...(中略)...やはり、農業というのは産
業というだけでは切り取れない様々な側面をもっているということは間違いない。だ
からこそ、農業、第一次産業は国の基ではないかと考えているところであります。

<安倍「官邸農政」は、官邸に巣食う政僚(政治的官僚)の間違い>
 本シリーズは安倍首相の追悼が目的であり、安倍政治の功罪を論評するものではない。ただ、第二次政権になってから強引に推し進めた、農協法や農業委員会法、主要農産物種子法の廃止等、どれをとっても、農政に40数年携わった私から見ると、背筋が寒くなるほどの酷さだった。はっきり言って何一つまともではない。現に日本の地方、そして農業・農村は急激な速度で疲弊しつつあり、農山漁村の急激な人口減少にその弊害が如実に表れている。直接現実世界に影響のない憲法などと異なり、農政は直接現場に届いてしまうのである。
これらは官邸に巣食う「政僚(政治的官僚)」が、国家戦略特区諮問会議や、規制改革推進会議を悪用して、農林水産省に押し付けたものである。
安倍首相の関与があるとしたら、誇り高い安倍首相が、農民そして農協に07年参院選の仕返しをしていたのではないかと疑いたくなることである。味方をこよなく愛し厚遇し、敵は徹底的に叩きのめすという安倍首相の姿勢からすると、十分ありうることである。

投稿者: しのはら孝

日時: 2022年8月 6日 19:23