2022.08.05

政治

【安倍首相国会論戦追悼シリーズ②】憲法、原発、TPPとことごとく対立する政策理念- お互いに本音のぶつかり合いで真摯な質疑応答- 22.08.05

 政権運営に汲々として漂流する民主党政権を尻目に、11年秋、自民党総裁選(安倍、町村、林、石原、石破)が行われ、安倍首相は総裁に復帰した。私は長野駅前の演説会を遠くから見守っていた。一方、09年08月の総選挙で308議席の大勝で政権交代を果たした民主党は鳩山、菅、野田と3人がほぼ1年交代で首相を務める。安倍首相は消費増税、TPPと功名に走る野田首相を唆し、12年11月の解散に持ち込んだ。民主党は57議席と大惨敗で、僅か3年3ヵ月で政権を自民党に明け渡すことになった。
 そして、この後に続く安倍政権で、私と安倍首相との国会論戦が度々行わることになった。それを辿って追悼してみたい。

<長野県の高齢者医療費が安い理由>
13年3月18日 予算委
篠原...福岡県と長野県の医療費の差は年間約40万円なんです。そして、75歳以上後期高齢者は1,470万人いるんです。日本人全員が福岡県人、長野県人だとしたら、医療費の差がどれだけになるか。5.6兆円なのです。65歳以上は日本全体で約3,000万人。正確な計算ではありませんが、12兆円も節約できるわけです。医療費はGDPは8%、34,5兆円かかっています。ですから、国益を考えるのであれば、規模拡大ばかりではないような気がしているのです。
安倍...篠原委員のご指摘された通りだと思います。私がかつて自民党で、社会部長(現厚生労働部会)の時に、長野県に倣えといって、政策を中心的に予防に力をいれるようにしたところでございます。私も地元で、長野県に見習うようにということを常々申し上げております。ほかでは悔しいですからあまり言わないんですが。
確かに健康寿命も、そして1人当たりの医療費も少ない、そして人生ずっと仕事を持ちながら、生きがいを持ちながら、かつ自然と触れ合いながら、物を作っていくという喜びに触れながら人生を送ることは、健康を維持し、かつ豊かな人生につながっていくのだろうと思います。こういう観点もしっかり採り入れながら、すばらしい国、美しい国をつくっていきたいと思うところでございます。

 数字をもとに安倍さんに規模拡大ばかりではない、ゆったり農業をやる人がいた方が医療費も少なくて済み、国益にかなう、という逆手の指摘をした。それに対して、安倍首相は社会部長の時に長野県を倣えと言っていた、と正直に反応した。更に、私が云わんとした高齢者が農業に勤しむのもいいということを言ってのけた。

<タカ派の岸信介ばかりでなく、安倍寛も見倣ったらいかが>
13年3月18日 予算委
篠原...攻めの農政という言葉は1975年安倍晋太郎農水大臣が使われていた言葉なんです。安倍総理はお父さんを意識されているのでしょう。総理、おじいさん(岸信介)のことも考えていらっしゃる。私は、これは同じDNAだから当然だと思いますけれど、どうも外に出て行って云々というTPPは安倍総理の政治哲学とちょっと違うような気がしています。満州に、東南アジアに出ていく。これで日本が失敗した。しかし、安倍寛さんというおじいさんもおられて、この方は東条英機さんの方針に反対して、翼賛選挙のときも無所属で出られて当選されている。つまり、いたずらに外に出ていくのはまかりならぬということで政治活動をしておられたんじゃないかと思うんです。(時間足りなく答弁求めず)

 母方の祖父岸信介ばかりでなく、翼賛選挙に反対していた父方のリベラルな祖父安倍寛も見習ったらと親切な注文。こんなお節介を国会質問でするのは私ぐらいだっただろう。安倍首相は政治家としては10年先輩だが、人生では私が6年先輩。時々駄々っ子をあやすような気になっていた。
 後(14年5月28日予算委)に岡田克也が、自席で野次るような言い方でなく、懐深く議論をと言ったときには、猛反発していたが、私のこの手の忠告には一度も怒ったことがなかった。

<憲法は自説を長々述べる>
13年10月21日 予算委
篠原...憲法九十六条で、憲法改正の発議を、衆参両院の3分の2から2分の1にするという、非常に横道からの変なアプローチです。そして集団的自衛権を認め、法制局長官を変えて解釈を変える、というのはよくないやり方じゃないかと思っております。安倍総理は何ごとにも正攻法です。3矢を300本打つという気概でやっておられるんだと思いますが、この2つは絶対に賛成できない。
安倍...なぜ九十六条なのかといえば、3分の1を超える人たちが反対すればたとえ、国民の6割、7割が変えたいと思っても国民投票すらできないというのはおかしいのではないかという問題意識であります。
そして、憲法解釈の問題でありますが、これは集団的自衛権に限ったことではありませんが、長官に解釈を変えさせるということではなく、安全保障法制懇の場で議論を行い、そして与党の中でも議論を行い、その中で判断していきたいと考えております。

 長々と自説を展開した。憲法改正への拘りが手に取るように分かった。

<原発輸出は日本のノウハウを輸出と強弁)
13年10月21日 予算委
篠原...世界に原発を売り込むことをやられていますが、異様だと思います。こういうことにあまり口を出されるべきではないと思います。
安倍...原発において過酷事故を経験したが、それによって培われたノウハウがあります。この経験を世界に共有する責任があると考えているわけでありまして、その中において、我々の高い水準の技術を世界に出していくべきだろうとこのように判断しているところでございます。
篠原...日本の国土の3%が住めなくなっている、16万人が避難している。この国土を汚してもいいんでしょうか。日本の国土を守ろうとした靖国神社の英霊は、しっかり考えてくれと言うんじゃないでしょうか。

 昭恵夫人は原発に反対するなど「家庭内野党」だ、と雑誌の対談記事で冗談を言われたことがあった。安倍首相は国内に原発を置くことはともかく、さすがに原発輸出は強弁だと気づいていたのだろう。同じ反論でも迫力は感じられなかった。
 安倍首相の右寄りの考えをくすぐらんとした靖国神社の英霊発言は、本人には通用しなかったのに、私はネトウヨ(ネット右翼)の標的にされてしまった。

<STOP!TPPネクタイで篠原ワールドが出来上がる>
13年10月21日 予算委
篠原...皆さんこのネクタイご覧いただけますでしょうか。「STOP!TPP」と書いてあるんです。これは総理、ご存知だと思います。全国的に使われているわけではないんです。山口県農協中央会が、えんじと紺の2セットを作っています。

 質問の終了後、安倍首相が近寄ってきてネクタイ論議。「野党議員なのに、安倍首相と馴れ馴れしいのは問題」と一部の視聴者からお叱りを受ける。しかし、私が6年間ずっと着用し続けた「反TPPバッジ」と「STOP!TPPネクタイ」を、水戸黄門の印籠よろしく晒した時に大爆笑が生じたことは間違いない。
 この時の同僚から、「順番を篠原さんの質問の後にするのはやめてほしい。完全に篠原ワールドが出来上がってしまっていて、普通の質問がしにくい」との苦情が出されていたことを知った。 

<慢心なくして、あと数年間政権を担ってほしい。民主党的総理になるな。>
2013年10月21日 予算委
篠原...総理がくるくるかわるのはよくないです。この次の総選挙ぐらいまで頑張っていただくというのが一番いいんです。絶対長くやっていただきたい。見ていますと、ちょっと慢心がおありになるような気がする。我が党の三年間、それが過ぎたようです。総理がそういうふうな民主党的な総理に絶対なられないことをお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。(時間切れで答弁なし)

 私には第二次安倍政権は07年の屈辱を胸に反省し、同じ失敗をすることなく長期政権になるであろうことが予測できた。1年交代の首相では世界に通用しないので、長く続けてもらいたいと元気づけると同時に、世論受けを狙う「民主党的な総理」になるなとアドバイスをしただけである。これに対して、野党第一党の議員なのになんだと同僚議員から批判された。

投稿者: 管理者

日時: 2022年8月 5日 17:10