2022.12.15

政治

<旧統一教会シリーズ⑥> 不幸な家庭を作らないためにも今国会での救済法案成立を -自民党は腰が引け、政府与党案では救済できず- 22.12.15

<もたつく救済新法協議>
 我が党はとっくの昔(10月17日)に法案を提出している。
 自民党は、野党(立憲民主党と維新)に手柄を立てられては大変と、完璧な後出しで、なまくらな法案を提出してきた。公明党も含め与野党4党は、10月21日から協議会を何回も開いてきている。更に、4党に共産、国民民主党を加えた6党の幹事長、書記局長会談も行われている。
 ややこしいことに、政府与党は既存の消費者契約法と国民生活センター法の一部改正(既に提出済み)と、12/1国会に提出された新法「法人等による寄付の不当な勧誘の防止等に関する法律」(以下「救済新法」)の三本の法律で、被害者救済を図ることにしている。
 野党は一斉にこれでは救済にならない、もっと実効あるものにと修正要求をしており、12月5日現在、折り合いがついていない。残された会期はあと1週間のみであり、今国会成立が危ぶまれている。

<認知症の母が1億6,000万円を献金>
 いかに実効性に乏しいかを具体的事例に即して説明する。
11月22日、中野容子(仮名60代、母が信者、本人は信者ではない、長野県)の証言を聞く。
(1) 寄附の概要
 ・2004年母(75才)が入信。その後、人参類、水晶の購入などを含め、
  6年間で1億6,000万円を献金
 ・2009年2月父死亡
 ・2009年果樹園を売却
(2) 母の異変
 ・2015年5月父の7回法要に、中野が母の異変に気付く。8月統一教会の
  関係が明らかになる
 ・2015年8月に母が脱会の意思表示
 ・同11月公証人役場で念書、陳述書(自分の自由意思で献金)を作成。
  教会に提出。婦人部長が娘容子の関与は認めない等のやりとりをVTR
  に撮影
 ・2016年5月 アルツハイマー型認知症と診断
(3) 裁判
 ・2017年3月 東京地裁に献金の取り消しを提訴
 ・2021年5月 訴え却下の判決、完全敗訴、東京高裁に控訴
 ・2022年7月 高裁でも地裁判決を追認、完全敗訴、上告を検討

<救済新法はいかに実効性が乏しく、全く役に立たないか検証>
 新法(詳しい内容は省く)で、この中野の案件を救えるかをみる。
 母が自由意思で献金しており、法のいう、霊感や脅迫といった禁止行為がないため訴えられず。
困惑させられたことが条件となっているが、認知症がある者の困惑を説明できず、訴えられず。
 野党は明確に定義を求める、「完全にマインドコントロール下にある」が条文化もされず、そのような状態かは不明で訴えられず。
 新法は、マインドコントロール状態をただ配慮すべきとあるだけで実効性がない。
 中野は、60代であり、独立していて母の扶養下にもないため、扶養の範囲の取り消しすらもできない。(18歳未満の未成年は、訴訟を起こすことは現実には難しい)かくして、新法下でも中野は一向に救われないことになる。今回の立法過程を踏まえ、最高裁が旧統一教会の悪辣な献金(と称される詐欺行為)に厳罰を与えてほしいと願うばかりである。

<国会やメディアばかりでなく、形式的裁判しかしない司法も役立たず>
 私は上記の裁判で感ずるのは、日本の裁判所は全く形式審査で全体を見ていないというのが驚きである。統一教会側にやましいことがあるから、わざわざ娘(中野)に訴えさせないといった念書を書かせ、口頭でも自らの意志と言わせるVTRを残した。それを念書等が揃っているからと中野の訴えを退けている。本当に真から信じて献金している人に、わざわざ念書を書かせたり、VTR証拠を撮ったりする必要はない。娘が訴えてくることを想定して証拠を残したのは明らかである。孤独な高齢者につけ入り、1億6,000万円も献金させたのである。こういうことを繰り返してきたから統一教会をのさばらせ、不幸な人・家庭をいっぱい作ってしまったのだ。
 上記の例で仮に娘が10代だとしても、家族の救済は将来取れるはずの養育費などの範囲しか取り戻せず、全額を返還要求できないことになる。つまり、1億6,000万円のうち、1,000万円ぐらいしか戻らないのだ。こんな法律はザル法どころか、バケツに大穴の空いた全く役立たない法律であり、むしろ、統一教会の高額献金を助長することにもなりかねない。

<屈辱的教義の統一教会は日本での活動を抑えないとならない>
 私は、当初から幹事長代行として本件の対応を取り仕切ったこともあり、岡田幹事長体制になってからも、旧統一教会被害者対策本部(西村智奈美代表代行)と野党国対ヒアリングの双方にほとんど出席して、宗教二世を中心とする筆舌に尽くしがたい苦労を聞いてきた。途中「カルトの花嫁」という合同結婚式で韓国に渡った女性の凄まじい20年間を綴った本も一気に読み、改めて統一教会のあくどさに驚愕した。エバ国家(日本)のアダム国家(韓国)への奉仕は、お金ばかりではなく、日本の女性でもなされてきたのだ。涙するとともに嘆息が出るばかりだった。

<日本の女性を不幸にしてはならない>
 ほとんどの専門家もマスコミも指摘していないが、旧統一教会の信者は女性のほうが多い。これは他の新興宗教にもみられることだが、不安を抱えているのは女性の方がずっと多いという証左でもある。韓国ではまともな結婚をできない男性が、日本のまじめでよく働く女性と結婚できるとなると、14万円程度を支払って進んで入信するのは当然である。そして、合同結婚式を経てまた不幸が拡大する。
 日本女性を守るためにも、国は屈辱的教義の下、勝手気ままに悪行を続ける旧統一教会の活動を抑えなければならない。血と汗の結晶のお金が韓国の本部に渡っているというのも腹立たしい限りである。

<今国会で成立させないと無意味>
 今も現に続いている被害者を救うためにも、今後同じような被害を出さないためにも、法律的に難しいことはわかるが、なるべく多く禁止事項を明確化し、なるべく多くの関係者が取り消し権を行使できるようにし、その権利の行使期間も長くすべきである。
ややこしい法律であり、時間をかけて審議すべきだという理屈もわからないではない。しかし、足りなかったら、見直してきつくしていけばよい。また、信教の自由を妨げるとしたら改めていけばよい。ともかく今国会で日本の政府としての毅然とした態度を韓国(の旧統一教会本部)に対して示すべきである。
 予算委の質疑応答をみるかぎり、岸田首相は野党案にもかなり理解を示しているように思われる。残された審議はもう1週間しかないのだから、消費者特委での議論とともに、思い切った修正を行い、せめて80点ぐらいまで持っていくべきである。
(本稿は、12月5日(月)長野駅前街宣のビラで配布、しかし、本案の採決前だったのでブログ掲載は、シリーズ7号と同時とした。)

投稿者: しのはら孝

日時: 2022年12月15日 15:01