2023.02.06

アメリカの非対称:非民主的軍事・外交と国内に定着する民主主義 ー現職の大統領をも追及し、15回の投票で下院議長を選ぶ民主主義に感服ー23.02.06

アメリカは軍事的には横暴な国である。岸田首相は情けないことにアメリカに行きバイデン大統領(以下「バイデン」)に肩を組まれ、日米関係が未だかつてこれほど良好だった事はないと褒めたたえられて喜んでいる。日本国民を守ることよりも、米中覇権争いの中でアメリカの肩を持つ方に完全に向いてしまっている。これではまるで属国ではないかと疑いを持ちたくなるくらいである。アメリカの国際政治の中における他国に対する非民主的な態度には苛立つばかりであり、それにホイホイとついていく我が国についてはもっと苛立ちを感じざるを得ない。

<機密文書の持ち帰りで現職大統領をも追及するアメリカ>
ところがアメリカの国内政治に目を転じると、ほとほと感心させられることばかりが目白押しである。トランプ大統領(以下「トランプ」)の脱税疑惑や家族の蓄財については、大統領選の最中からいろいろ取り沙汰されていた。その後、現職の時からもマスコミは追いかけていたが、大統領を辞めてからも同じことが続いていた。トランプのフロリダの自宅を家宅捜索し、100件以上の秘密文書が自宅に持ち込まれたことが糾弾されている。他にもトランプが暴徒の国会への乱入を煽り立てたということも追及されている。この点については、私はアメリカも韓国が前任の大統領を罪人に仕立て上げているのと同じようになりつつあるのではないかと危惧する面もあった。

<モリカケサクラを隠し通す日本との民主主義格差>
しかし、今や現職の大統領のバイデンをも同じ過ちで追及されているということには驚かされる。しかも大統領になってからではなく、オバマ政権の副大統領の時に自宅や私的オフィスに機密文書を持ち帰ったということで追及されているのである。それに対してバイデンは捜査に極めて協力的だという。
私は日米両国のFBI・検察の追及の姿勢やトップの対応の違いに民主主義の成熟度合いの格差を感じざるをえない。日本では8年も続いた安倍政権がモリカケサクラに象徴されるように、でたらめなことをしていたのに、最後まで追及されたことがない。財務省の公文書偽造などについても誰の目から見ても明らかに酷いことをしていると思われるが、厳しい措置がとられていない。権力を振りかざし隠し通してしまっている。それに対してアメリカはたとえ現職大統領であってもきちんとした決着をつける。

<ドンデン返しの下院議長選びも民主主義の証し>
下院議長の選出にあたっても、びっくり仰天である。1回の投票で決まらなかったのは100年振り、それがとうとう15回にも及んでいる。日本では根回し文化があり、「まあまあ」「なあなあ」の対応があり、多数派が例え1票でも多ければそれで決定といったようなことになるけれども、最後まで民主主義の原理である多数決にこだわり、反対者を説得するという日本の政治では考えられないことを行っている。内容を見ると多数を占める共和党は過半数218を僅かに上回る222。5人が反対するだけで物事が進まない。これに乗じてトランプの意向を汲んだわけでもない強硬保守派(自由議員連盟、2011年の保守系の草の根運動Tea Partyの流れを汲む)が、マッカーシー下院議長候補を気に入らなくて反対し続けたことにより、事態が膠着した。途中トランプも登場し、もうこの辺でマッカーシーに投票しても良いのではないかと発言したが、功を奏さなかった。議長解任動議の提出を1人でできるといった妥協案が通ってしまうなど将来に不安を残したが、少数意見がこれだけ通るのは民主主義の証しである。

<二大政党制が民主主義を後押し>
この根本には435名の下院議員のうち、いくら共和党が多数を占めたとはいえ、民主党も圧倒的多数ではなく共和党に僅差であり、拮抗していることに由来している。つまりアメリカ国民がバランスよく大統領は民主党だけれども下院は共和党を多数にするということで、チェック&バランスができるような投票結果を導き出しているのだ。羽田孜元首相や私が2大政党制のほうが政治はダイナミックになり、2大政党制を確立しなければ日本の政治が変わらないと考える所以である。アメリカではまさに民主主義が体現されているのである。

<人工中絶を巡る対立も続くが分断とはいえず>
その他のことに目を転じても日本では到底考えられないことが次々に起きている。例えば人工中絶の問題である。この点については女性の身体を守るためもあり、女性の人権、女性が産むか産まないかを決めればいいということで、中絶は認めるという判決が出されていた。ところがブッシュ政権で最高裁判所の中で人工中絶に反対する勢力が大きくなり、その判決が覆された。その後13州程は中絶を州法で禁止している。
そうしたら今度は、それに大反対して中絶を認めるべきだ、という大規模なデモが行われている。日本では最高裁の判決があったらそれがほぼ確定し、それで世の中がおさまっているのではないかと思われる。ところがアメリカではその判決が覆されている。日本ではこれをみて、すぐに分断されるアメリカ社会といった報道がなされるが、これも民主主義の1つの流れではないかと思われる。

<日本のような同調圧力ではなく、個々人が動く>
コロナ対応でみても差は歴然としている。日本はワクチンの追加接種回数が世界一であり、政府が命令すれば皆それに従う。それに対してアメリカは、ワクチン接種など誰がするかという人たちも多く、州によっては懸賞金を出してまでワクチン接種を勧めるほど、接種は進んでいなかった。ましてマスクなど強要しても絶対聞かない人たちである。この感覚が日本とは違うのであろう。私は必ずしもこれがいいと言うわけではないけれども人工中絶に賛成する人も反対する人も自分で考え自分で行動し、極めて民主的に物事が動いていることには驚かされる。

<軍事、外交面では極めて非民主的覇権国アメリカ>
民主主義国家は大切であり、世界をその方向に持っていくのがアメリカの方針である。中国に対してもオバマ政権までは民主化を勧める政策をとっていたが、トランプ政権になってから中国に対する対応をガラリと変えている。ロシアに代わり中国を覇権を争う競争相手として対応し出した。そしてそれを日本にまで押し付けてきている。
国内政治については上述のように本当に民主主義を体現しているのではないかと思う。日本は中国のゼロコロナほどではないが、法律も作らず未だマスクの着用について何の法律もなく国の推奨だけで国民みんなが従っている。同調圧力に乗っかって極めて非民主的な形で、大切なことを決め実行している。そしてこのことが、防衛政策の大転換期でも平然と行われている。

<日本は外に向けても民主主義国であることを示す必要あり>
こういった状況をみたら諸外国が、日本はいつかいとも簡単に国の方針を変え、軍事大国に豹変するのではないかと恐れるのは無理がないような気がする。つまり、国家としての意思決定が民主的とはいえないのである。それに対してアメリカは外交は高圧的だが、国内は対照的に民主主義的に物事を決めており感服せざるを得ない。
2022年末の安保関連3文書の決定は、日本がとても民主主義国とはいえない国だということを示しているような気がしてならない。

投稿者: しのはら孝

日時: 2023年2月 6日 10:43