2023.04.05

【脱炭素シリーズ①】 GX (脱炭素)推進法は延命策にしかならず -炭酸ガスの大量排出者に賦課金を課すのが先- 23.4.5

<ズルい一本化束ね法案>
 今回グリーン・トランスフォーメーション(GX)と称し、GX推進法とGX脱炭素電源法という2つの法律が提出されている。2つ目の法律は実は5本の法律からなっている。本来なら1本ずつ改正すべきものを似たような内容だからと、束ねて一本化している。原子力基本法、炉規法(核燃料物質及び原子炉規制に関する法律)、再処理法(原子力発電における使用済燃料の再処理等の実施に関する法律)の3本の原子力関係法と、電気事業法、再エネ特措法(再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法)の5本を一本化している。

<連合審査になる重要広範議案>
 したがって立憲民主党は、2本とも経済産業委員会だけではなく環境委員会と原子力特別委員会の連合審査(両方の委員会で一緒にして審査)を要求した。
 GX推進法は、参考人質問を含め4日間審議し、3月29日(水)に採決される見通し。我が党は、2度にわたり賛否について激論を交わし、決着付かず幹部一任となった。私の記憶では、立憲民主党になってこれだけ意見が分かれたのは初であり、10年前の政権担当時代のTPPや社会保障と税の一体改革を思い出した。
 この後もっと問題の多いGX脱炭素電源法は連合審査が受け入れられた。従って相当の日にちをかけて審議することになっている。当然のことである。
 私からすると原子力関係法を一本化し、GX推進法と、後者の電気事業法の改正と再エネ特措法の3本を一本化して2つに分けたほうが議論しやすかったのではないかと思うが、なぜかしら変な分け方になっている。GX脱炭素電源法は原発の運転期限を60年に延長する規定が織り込まれており、多分ここに焦点が当てられることになる。

<ごまかしに使われるカタカナ和製英語>
 脱炭素の英語はdecarbonizationなりdecarbonizingである。ところがかっこよくGreen Transformationなる言葉を使っている。これはAI・ITで既に耳慣れたDX:Digital Transformationに倣って経済産業省が打ち出した和製英語である。政府がこのようなカタカナを使うときは必ずどこかに悪い意図が隠されていると言ってよい。諸外国ではGreen EconomyとClean Energyとか言われているが、GXはどうも本当のグリーンにはなっていないような気がしてならない。

<先に飴を与え後からムチという甘い政策>
 他の同僚議員は大体30分前後の質問をする中、私はたっぷり1時間質問した。
 GX推進法は、変わった仕組みを2つほど作っている。一つは、環境先進国では環境国債というのが発行され、その国債で調達したお金を環境に関わるものに投資するということが相当前から行われている。それをやっと日本も取り組むということである。この点では一歩前進である。とこらが名前をGX経済移行債とかいう仰々しい名前にしている。やり方もちょっとズレている。その償還を大分遅れて始めるのだ。CO2を大量に排出している企業の賦課金(2028年)と、それからこれも前から言われている排出量取引制度(2030年)の2つで集めたお金を充てるというのである。
 普通に考えたら本来逆である。つまり悪いことをしているCO2を大量に排出しているその企業に賦課金を課し、それでCO2を排出しないよう工夫して取り組む企業なりに投資するのが普通である。それを先に脱炭素の企業を支援し、償還すなわち返済するお金を後から集めるというものだ。

<米余りと炭素の排出し過ぎの政策比較表>
 コメの作り過ぎとCO2を出し過ぎというのは似ているので、これに対応する政策の違いを明らかにしてみた。(別表に掲げてあるので比較していただきたい)コメ余りを抑えるために行政ではどうしたか。今回、エネルギー政策ではどうしようとしているかを比較して質問の形を整えた。
 コメ余りの時は、どぎつい政策を導入している。散々批判された「減反」である。コメを作らなければ一反歩(10a)当たり数万円というお金を出した。何も作らないのにお金を出すのはあんまりではないかという批判が当然沸き上がってきた。それで外国から大量に輸入している麦や大豆や菜種やソバ等に転換する「転作」に変え、そのあと水田活用云々とか名前は多少変わったが、基本的には転作でずっと進んできている。これを促進するため、当時の農林水産省得意の補助金で公民館をも建設した。全国に「転作促進センター」なる看板がまだ残っている公民館・公会堂の類があるのはその名残りである。

<上手くいきかけた転作>
 この転作がそれなりに上手くいき始めたことがある。民主党政権が導入した、いわゆる農業者戸別所得補償である。いくら規模拡大してもコメ農家も採算が合わないので、10aあたり1万5千円所得補償する。他の土地利用型作物は元々採算が合わなかったので外国からの輸入に頼ったものであり、もっと手厚く3万円とかの所得補償をした。今更ではあるが、これをし続けていたら転作が進み、適地栽培が定着し米余りは相当解消し、自給率も上がっていたであろう。自民党政権に戻ったら(多分産地で)止めてしまった。3年3カ月しか政権の座にいられなかったのは残念でならない。
 これをCO2の排出になぞらえると、まずはCO2を多く排出しているところにそんなことはいけないと、賦課金を課す方が順当である。そういうことを野放図にして米を作らせておいて、大分遅れて後から米を作り続ける者からお金をとるというのは、やはり順序が逆ということを分かってもらうために比較表を使った。農政をかじったことがある人ならある程度理解できたかと思う。
 ところが経産省は、先に飴(つまり支援)ばかり与え、あとから鞭(すなわち賦課金)を振ろう(徴収する)というのだ。米作りは自給を目指して援助されていたのに対して、CO2の排出はとっくの昔から抑えなければいけなかったのに、それをしてこなかったのだ。それにしてもどうも対応がなまくらである。

<非脱炭素の延命策になるおそれ、Green Wash>
 日本も少し脱炭素に向き始めてはいるがどうも釈然としない。なぜかというと、この法律はいわゆるGreen Washグリーンウォッシュ(私はこれはマネーロンダリングに倣ってGreen launderingグリーンロンダリングと言ったほうがいいと思うが)と呼ばれるごまかしがたくさんあるからだ。環境に優しいことをしているからと投資してもらうけれども、実はそうではなく、CO2を出し続けることの延命になってしまっている部分が多く見られることである。
 10年間で政府が中心となって20兆円投資し、民間が150兆円投資する。ところが、その投資の内訳もよく分からない。公表されている表によると、民間の投資は22の分野に分かれていて、一番金額が多いのは自動車産業に34兆円。一番多くて然るべき再生可能エネルギーに20兆円。
 そして私も含めた反原発の人たちが目くじらを立てる問題の次世代革新炉(新しい小型の原子力発電)に1兆円。水素・アンモニアに7兆円というのもある。水素・アンモニアは火力発電に混入すると、燃焼効率が良くなってCO2の排出が数%減少するという。世界は石炭火力を廃止しているのに日本は今も石炭火力をやめようとせず、姑息な手段を講じてまた使おうとしているのは国際的にはとても許されないだろう。またCOPで化石賞をもらう不名誉が続くことになる。

投稿者: しのはら孝

日時: 2023年4月 5日 10:33