2023.05.15

日本はまた軍事大国・経済大国を目指すのか - SDGsの時代、日本は慎ましやかに堅実に生きるべき - 23.05.15

<国会議員の任期延長が憲法改正の第1号か?>
 安倍晋三から菅義偉と代わり、宏池会の岸田文雄でハト派路線を歩むかと思いきや、全く逆方向に向かい始めている。危険である。
 私は今、8年振りに憲法審査会にいる。毎週1回必ず開催されるが、それぞれが思い思いの発言をし、大半が尻切れトンボになっている。やれロシアのウクライナ侵攻だ、北朝鮮のミサイル発射だ、中国の台湾侵攻だと騒ぎ立て、緊急事態に国会議員任期を延長することを初の憲法改正にと喧しい。
 私は、いくらコンセンサスの得やすい事項からといっても、ピントがズレすぎていると思う。まず、上記のことが、3分の2の国会議員の賛成により発議され、初めて国民投票にかけられる。長らく憲法改正の議論をしていて、その1番目の成果が自らの保身ととらわれかねない、緊急事態での任期延長では、国民の失笑を買うことだろう。そして、半分の賛成は得られず改憲派が望む憲法改正は更に遠のいてしまうのではないか。憲法改正に対する国民の拒否反応は昔より少なくなったが、諸手を挙げて賛成しているわけではないからだ。

<国会機能の維持全般を発議すべし>
 私は、国会機能・組織がそれほど大切ならば、①憲法53条は臨時国会の召集は要求があってから20日以内(立憲民主党と維新の会が法案を提出済み)。②7条解散はあまりにも恣意的なので、3年過ぎたらとか不信任案の可決か信任案の否決とか条件をつける。➂緊急事態で衆議院の任期が切れる頃には、54条の参議院の緊急集会に任せ、前衆議院議員に「諮問会議」として意見を述べる、ということとセットにすべきではないか、という極めて現実的なことを考えている。ところが、どうも議論が小さなことに向いてしまい時間を無駄に費やしているとしか思えない。
 一方で自民党は9条を持ち出し、自衛隊の役割を明記すべしと主張し、立憲民主党は国民投票法の問題点をまとめてからと意見が咬み合わない。
 軍事大国に向かう第一歩が憲法改正で、自衛隊を書き込むことのようだ。

<軍事大国化への途>
第2にきな臭いのが、ずっと武器輸出を自制してきたのに27.1兆円と史上最大の貿易赤字を記録したこともあり、自動車だけでなく武器弾薬も輸出する国に向かって舵を切ろうとしている。おまけに防衛産業も国が支援していこうとしている。
 第3に防衛費の増強で、今後5年間で43兆円とし、GDPの2%に達するというのだ。
 軍事大国に向けて準備しているとしか思えない。ふた言目には国際情勢が大きく変化しているから日本も自国防衛のために軍事大国化しないとならないと言う。戦争を体験したことのない人ばかりになりつつあり、国民は巨大なフェイク・ニュースに煽られて踊らされ、防衛予算の増額も、防衛産業(軍需産業)の支援も憲法改正も皆認めつつある。これでは本当に『いつか来た道』ではないか。

<3.11も忘れて原発再稼働>
 軍事大国だけではいびつな国になってしまう。まさか北朝鮮と同じにはならないだろうが、裏付けとして経済大国がないと軍事大国にはならないし絶対できない。
 「今だけ、金だけ、自分だけ」ではなく、人類全体どころか動物の権利も考えていかなければならない時代に突入している。人類が地球環境を壊し、地球全体の危機も作り出してしまっている。地球温暖化である。世界を挙げて気候変動対策に取り組まなければならないが、日本は知らん振りである。石炭火力発電を平然と続け、世界から顰蹙を買っている。
 その一方でCO2 を出さないからという屁理屈で原発の再稼働、そして運転期間の延長をやり出した。3.11以来、国民は原発には厳しい眼を向けてきたが電気料金の値上がりで原発の再稼働も仕方がないと言い出している。将来世代のことよりも、今の今を楽に生きることを優先しているのである。電力会社や政府の術中にまんまと嵌ってしまっている。最近の世論調査でも、原発再稼働を認める者が急激に増えて、50%を上回っている。嘆かわしい限りである。省エネに努め、再生可能エネルギーによる発電を待つ気がないのだ。日本国民の現世優先主義、ミーイズムは止まるところを知らない。

<60年の計算に停止期間を入れないという姑息な手段>
 5月5日、石川県で震度6強の地震があった。能登半島は最近大きく揺れている。地震大国日本に原発は危険すぎるのだ。これがすぐ隣の福井だったら原発銀座はどうなっていたかと考えないのだろうか。南海トラフ地震で浜岡原発は大丈夫なのだろうか。
 政府はGX(Green Transformation)とやら、子供だましの名前で原発の梃入れをしはじめ、GX2法が成立せんとしている。原発は当初40年がいつの間にか10年ごとのチェック(人間ドックと同じか?)で60年の運転が認められることになった。信じ難いが、運転期間中しか計算に入れず、休止期間は除くのだそうだ。劣化が起きないからだというのだ。人間も動かないで休んでいたら歳をとらないというのだろうか。そういう姑息なことをしてまでも原発をなるべく長く使おうとしている。3.11の過酷な事故のことを既に忘れてしまったのだろうか。

<ご都合主義の外国人労働者受け入れ>
 そこにもう1つ加わるのが、外国人労働者の無制限と言ってもいい受け入れである。
 日本の経済を維持するために、この少子高齢化時代には外国人労働力に頼らざるを得なくなり、今までのごまかしの技能実習制度を根本的に改めるというのだ。5年前の2018年秋の臨時国会ですったもんだの挙句改正された入管法で、最長5年の滞在が認められることになった。それを更に、ゴタゴタ言わずすんなりと低賃金労働者として受け入れるというのだ。まさに恥も外聞もない大変身である。

<30年前の専門家の予測が外れっぱなし>
 30年前に外国人労働者の受け入れ問題が発生した。私はまだ農水省の役人だったが、必死にこの問題を追いかけた。日本のアイデンティティー(identity)を危うくするかもしれないと危惧したからである。今と違って日本人の賃金が上がりすぎて、企業がこぞって中国や東南アジアの低賃金国へ工場を移転させた。当時は甲論乙駁で反対者は、受け容れたとしたら中国から経済難民が山のように押し寄せてくると主張していた。賛成者は、人手不足は一時的でいずれ技術革新により物造りに人手がいらなくなり、欧米と同じく大量失業時代が来るとのたまわっていた。前者は中国の共産主義体制がもたなくなると予想していた。しかし、現実には30年後GDPで日本を追い越しアメリカと比肩する国になっている。一方後者は一時凌ぎのために厳しい制限もとり入れて、いらなくなったら帰ってもらえばいい、と踏んでいた。人権も何もあったものではない。

<節度がなく大国化に走る見苦しい日本>
 その結果日系ブラジル人だけに特別枠を与えるという変な妥協が成立した。そしてその後、一向に人手不足は改善されず、外国人労働者は急激に膨れ上がっていった。
 アメリカでも不法移民が後を絶たない。しかし、アメリカ社会は経済に低賃金労働者が組み込まれており、いくらトランプ前大統領が米墨国境を壁で遮ると言っても止められない。必要悪として認められている。それに対して日本はしゃあしゃあと抜け道(技術実習制度)を法律にする変な国である。そこまでして単純労働者を入れないという「日本の国是」に拘っていたのに、背に腹は代えられないとあっさり方針を変更せんとしている。
 日本は恥ずかしながら軍事も原発も労働者も全く節度がない乱れた国に成り下がっている。
 これでいいのか、というのが私の問いかけである。

投稿者: しのはら孝

日時: 2023年5月15日 16:10