2023.08.02

【神宮外苑シリーズ➃】 都心の緑を守ったエコロジスト石原東京都知事 -むやみに風致地区を乱開発する東京都の堕落- 23.8.2(当初23.4.10)

 3月29日、忙しい合間を縫って神宮外苑議連の仲間とともに、石川幹子中央大学教授の案内で、樹齢100年の巨木が次々と伐採される現場視察に赴いた。そして翌週には、4日(火)、7日(金)の2日にわたり、神宮外苑再開発を阻止すべく環境委員会の質問に立った。

<白いフェンスで隠された建国記念文庫の森>
 政府は都合の悪い文書は、一応公開するが全面黒塗りになっていることもある。それを今度は、神宮外苑再開発事業者は3mは超える白いフェンスで、建国記念文庫の森の巨木の伐採を隠さんとしている。悪いことをした時の隠ぺい体質はどこも同じである。天然記念物ヒトツバタゴ(通称なんじゃもんじゃ)はこの森に一番多くあるという。スダジイ・クスノキ・カシ・シイといった樹齢100年を超える巨木がことごとく一気に姿を消してしまう。(大都会の緑を減らすという愚行は、世界中どこにも見られない。世界は気候変動防止、SDGsの観点から挙げて植物や森林の保全に取り組んでいる。それを今日本は全く逆のことをしようとしているのだ。

<立派だった石原都知事>
 私は石原慎太郎東京都知事の評伝「太陽の男 石原慎太郎伝」(猪瀬直樹)を読み終えた。そこには記述はないが、石原知事は森を守るために英断を下していた。
2007年都心の一等地(ホテルニューオータニの向かい)に16階高さ56m80室の参議院清水谷宿舎建設が計画されていた。ところが、一帯は23区内に15しかない風致地区であり、開発には知事の同意が必要とされていた。そこで動いたのが石原知事と猪瀬副知事である。現地を視察して反対を表明した。今の我々の主張そのものである。
 ・この森をつぶすのは反対(石原)
 ・宿舎を今建っているところに立て直せばいい(石原)
 ・巨木が多い、新しく植えるより今あるものを残した方がずっといい(猪瀬)
 建設予定地は国有地だったが、西岡武夫参議院議会運営委員長は、建設の凍結を決めた。その結果森は守られ、13年後の2020年、元の場所に半分の規模の8階高さ30mの宿舎が、周辺の木を数本切るだけで建設された。都心の森は残された。知事はやろうと思えば何でもできるのだ。

<風致地区で平気で乱開発を許す東京都>
 日本イコモス委員会は、今回の計画が取り沙汰されて以来、東京都都市計画審議会(環境影響評価審議会)に対して、何度も意見書を出してきたが、ほとんど梨のつぶてでまともな返答はない。事業者と行政が結託して突き進むばかりで、形式にすぎない日本のアセスメントが事業を止めた事例は一つもない。先日亡くなった音楽家坂本龍一が最後の力を振り絞って、神宮外苑の再開発に反対する手紙を小池知事に出しているが、何も応えていない。

<東京都は参考人出席を拒否>
 今回も4事業者と東京都庁が強引に進めている。神宮外苑再開発の鍵を握るのは東京都なかんづく小池都知事である。そこで私は東京都の担当者に問いただすべく、7日の質問のため4日から質問概要を伝え、4月6日午前中には最終版を渡していたが、午後3時過ぎに、公務多忙で出席できないと断ってきた。地方自治体や民間の○○社長とかは参考人と呼ばれ、こちらからお願いする仕組みになっており、出欠は先方に任される。従って仕方なく急遽他の質問を用意するとともに、せっかく用意した質問をたどって東京都政のいい加減さを指摘しておいた。

<東京都への疑問>
 東京都への疑問は増々高まるばかりであるが、以下のとおりである
×高所得者専用の高級テニスクラブなどを計画に入れ、木を伐採しているのは都民のためにならず。
×テニスコートが、風致地区なのに手続きも踏まず(都がかってにできる?)再開発促進地域にしているのは法律違反ではないか。
×反対運動しているグループへの適切な説明がなされていない
×今ある場所で建て替えしない理由に、スポーツの試合を継続するためを挙げているが、大学野球界か、ラグビー協会か、ヤクルトスワローズ等からそんな要請はなかったのではないか
×ラグビーも野球もいくらでも他の球場でできるが、巨木は一度切ってしまえば同じ原木にするのに100年もかかってしまう。どっちを重視すべきか明らかではないか。
×ラグビー場の門扉が閉じられていて一般に供されていないから、民間に再開発させる区域に変更するとしている。ラグビーの試合はずっと行われてきており、言いがかりでしかないのではないか。
・樹木伐採本数も、アセスメントでの報告よりもずっと多く3000本にも及ぶことが発覚した。都の3m以下の低木はカウントしなくていいとの言説はあまりにも無責任ではないか。
・計画の段階で(石原知事の提案と同じく)元の場所で建て替えが検討されなかったのか。
・ラグビー場はJSC、神宮球場は明治神宮の所有というが、神宮外苑自体は国有ではないか。
・老朽化しているのは分かるが(神宮球場1926年、秩父宮ラグビー場1947年)従来の雰囲気を残しつつ改修(リノベーション)すればいいのではないか。それがダメでも同じ場所で建て替え耐震構造にて機能強化をすれば、巨木の伐採はしなくて済むのではないか。
・日本スポーツセンター(JSC)は国の独立行政法人なのに、民間事業者と一緒になって森をつぶすのに加勢するのはもってのほか(⇔JSC、文科省)
<歴代環境大臣(長官)は蛮勇を振って自然を守った>
環境省は、1992年環境庁として発足した新しい役所であり、省に昇格した今も「今だけ、金だけ、自分だけ」の現代日本ではしいたげられ続けている役所である。
 従って、環境を守るための権限も与えられていない。いつも開発派官庁、イケイケドンドン役所や企業に大手を振って歩かれ、いくら自然や景観を守ると叫んでもなかなか通らない。三井不動産は北海道の31市町村で500haの森を守っているというが、東京にビルを建てるために樹木を守れないでは社会的な責任を全く果たしていない。

 そうした中で、大石武一初代環境庁長官が、福島、新潟、群馬の3知事が田中角栄の後ろ盾もあり尾瀬自動車道を計画していたのを、路線を変更させている。また、真鍋賢二環境庁長官も伊勢湾の藤前干潟の埋め立てに異を唱え、中止に追い込んでいる。いずれも法的権限などないにかかわらず、大臣としての意見表明で、日本の国土の劣化に歯止めをかけている。西村大臣には、先輩に続けと発破をかけエールを送った。(別紙参照)

<私が神宮外苑再開発阻止に力を注ぐ理由>
 今統一地方選挙の最中である。原発行政を改変するGX脱炭素電源法もある。それに加えて、3月中旬から地元の精鋭秘書2人を、山口2区の平岡秀夫選挙事務所に送り込み、永田町での援軍の呼びかけ等にかなり時間を割いている。4月6日(木)には、菅直人元首相等とともに平岡への自主的支援の記者会見も開いた。県議選を終えて10日のお礼の朝街宣をしたら、すぐ山口に行き、私も平岡選挙に全力を傾注することにしている。
 そうした中、4月7日の熱中症予防法(仮称)の審議でも、「私は、今神宮外苑再開発阻止に「熱中」している」と冗談を交え、ヒートアイランド化を防ぐためにも都会の緑を保全すべしと主張した。
 更に、私の意を受けた地元熱血秘書が、長野1区内で信濃毎日新聞に折り込みチラシを入れて署名を集めようと提案、4月11日に14万部が配布されることになっている。
 100年の樹木は、一旦切られたら取り返しがつかない。原発も、防衛の勇み足も止めないとならないが、より緊急性がある樹木伐採の阻止に全力で取り組んでいる。

投稿者: しのはら孝

日時: 2023年8月 2日 14:22