2023.10.11

長野1区以外の政治活動2題の中間勝利の中間報告―水俣病患者救済裁判は全面勝利、神宮外苑再開発は延期― 23.10.11

 私は長野1区選出の衆議院議員である。だから長野1区の抱える問題の課題解決にまず専念しなければいけない。しかし、政治家をしているといろいろ目に余るものがあり、首を突っ込みそれに時間を割くことがある。例えば、満蒙開拓の高社郷で起きた500人余の集団自決を弔う慰霊法要である。私は2014年の予算委員会で触れてから、相当な手間暇をかけて慰霊碑法要を続けてきている。それでもこれは長野1区に関わる事項である。
 それに対して、長野1区とはほとんど関わりのないことに時間を割いていることもある。その典型的な例が水俣病患者救済であり、もう一つが神宮外苑再開発という難問である。

<水俣議連の元会長として環境委でも質問>
 水俣病については、4大公害病で誰でも小学校の教科書に出てくるので当然知っている。67年前に発生しており、解決済みと思われているが、実はまだ救済が終わっていないのだ。超党派の「水俣被害者とともに歩む議員連絡会」があるが、元会長の辻元清美が2021年の総選挙で落選してしまい、私がしばらく会長を引き受けていた。やはり関係者中心にということで、阿賀野川水銀問題を抱える新潟1区の西村智奈美会長、水俣に隣接する鹿児島3区の野間健事務局長という体制に引き継いだ。
 22年末に水俣病患者の救済を急ぐべきだと環境委員会でも質問をし、それをブログ(「まだ水俣病の救済は終わっていない」23.01.18)にまとめた。

<原告・患者側の全面勝利という異例の判決>
 それから1年弱、熊本・大阪・東京・新潟の4つの地裁で起こされているノーモアミナマタ第2次訴訟で、大阪地裁の判決が9月27日に下り、かつてない程の被害者側の全面勝利に終わった。判決では、救済に「期限と地域を区切っている」国・熊本・チッソの主張はほとんど認めなかった。128人全員に賠償金の支払いを命じ、こんな完璧なものはないという全面勝利となった。
 詳細については触れないが、私は、当然のことではないかと思っている。ただ、2週間以内に控訴をするか、それとも一審の判決に従うか決めなければならず、控訴期限は10月11日である。チッソはすでに控訴すると発表しており、これに対する国と熊本県の対応に注目が集まっているが、未だ宙ぶらりんである。

<人生を狂わされた無念は想像に余りある>
 これについては、主要5紙を含め26紙が全紙一致して控訴を断念すべきであり、水俣病患者の救済は早くしなければいけないと主張している。患者の皆さんは既に高齢であり、このまま放っておいたら次々に亡くなっていく。まだ存命のうちに救済の措置が講じられなければならないという当然の主張である。
 恥ずかしいことに、67年前のことがまだ解決していないのだ。本件では20年の除斥期間が過ぎたからといった理屈は通用しない。何故かと言うと、若い間ピンピンしているから足のしびれや視野が狭まるといった症状は出なくても、歳をとるにつれ出てくるからである。それから地域の限定などますます信じられない。今は大阪に住んでいても、18歳まで水俣近辺で育ち、大阪に出て、そこでずっと生活してきたところ、70歳近くになったらいろいろ体に変調をきたしてきた。何か変だと病院に行ったが原因不明で、気が付いてみれば水俣病だったいうことである。住んでいる地域が水俣から離れた地域だといっても、処理水ではないが海はどこにでも繋がっている。狭い有明海はどこも汚染されていたのである。近辺の魚を食べたひとたちは、メチル水銀が体内に溜まってしまっているのだ。そういう点では大阪地裁は極めて常識的な判断をしたことになる。

<岸田首相の決断で控訴断念を>
 ところが、国側が控訴して上級審の大阪高裁や最高裁と上がっていく可能性もある。そうなると裁判は長引き、その間にまた亡くなっていく人たちが多く出てきてしまう。そうした愚かなことは絶対に避けなければならない。だから全紙が一斉に、控訴断念を主張しているのである。これは政治の力で解決するしかなく、政府は控訴を断念し、第一審の判決に従うこととし、残る3つの裁判も和解に持ち込むことである。過去にも行政訴訟ばかりでなく、薬事訴訟でも、政治が動き決着したことが多くあり、今回もそうなって欲しいと願っている。

<イコモスの警告でやっと東京都も動き出す>
 もう一つの神宮外苑の再開発については、長野1区で反対署名を呼びかける14万枚のチラシを新聞折り込みにしたこともあり、あからさまに長野1区の有権者から批判も受けた。青木島遊園地問題について発信しないで、なぜ東京の公園の事について時間を割いているのかというもっともな指摘である。この件は、私の価値観に反するので、船田元衆議院議員からの要請もあり、ナンバーツーと言うわけじゃないが実質的に相当時間を割いて補佐して取り組んできている。
 つい最近の9月7日、国際記念物遺跡会議イコモスが、文化遺産が危機に瀕しているとして緊急声明(ヘリテージ・アラート)を発した。その成果もあって、東京都は9月12日、事業者に対して樹木の保全について、もう一度計画をちゃんと見直せという指示を出した。つまり、やっと「待った」をかけたのだ。それを受けてさすがの事業者も、9月中に樹木を伐採し、再開発の工事をすることになっていたものを、来年1月以降に延期している。ラグビー場の解体工事は始まっていたが、三井不動産は9月29日、伐採する樹木の本数削減を盛り込んだ環境評価書の変更を東京都の審議会に報告するなど、やっと少しだけまともな対応をし出した。これも極めて当然のことである。

<世論が政治を動かす>
 喜ばしいことに故坂本龍一、村上春樹に加え桑田佳祐などの著名人も参画し、学者でも斎藤幸平東大准教授が論評を寄せてくれている。死せる坂本が世論を動かし、熱血桑田が戦いの火蓋を切った。ユニクロが外苑再開発見直しを歌った桑田の曲をCMに起用すると発表したところ、SNSで歓迎の声が多く寄せられたという。また、一番動かないとならない都議会にも9月5日遅ればせながらやっと超党派の議員連盟が発足した。更に、明治神宮がイチョウ並木の保全のため神宮球場の場所を移動させるなどの方法を検討し始めた。
 ただ、両方ともいってみれば中間の勝利である。裁判は一旦は勝ったけれども、控訴されて上級審でひっくり返される可能性が残っている。後者の神宮外苑再開発も、あくまで延期されたのであって、撤回ではない。だから放っておいたらこちらの方も危ういことになってしまう。どちらも議員連盟の動きが大切である。
 私のささやかな願いが天に通じたのか、偶然2つとも一旦はいい方向に進んだ。このまますんなり行くほど甘くはないだろうが、私は心血を注いで戦っていくつもりだ。

投稿者: 管理者

日時: 2023年10月11日 13:28