2023.10.07

【日本政府の悪い癖シリーズ その③】 途中で方向転換できない2025年大阪万博の危うい行末 -SNS、メタバースの時代に大規模万博は役割を終えたのではないか-23.10.07

<保険証廃止する岸田政権>
 今、マイナ保険証で岸田政権は炎上中である。国民の声がこれだけ湧き上がっているにもかかわらず、岸田政権がそれに耳を傾けないからである。日本は、物事を決め動き出したら止まらず方向転換できない国である。

<神宮外苑再開発を止められず>
 私が心血を注いでいる神宮外苑再開発の廃止も同じである。小池都知事はエコ知事で、緑の服を着、わざわざCOP27でエジプトまで行くという環境知事を持って任じているが、何もしようとしない。三井不動産、伊藤忠商事は、もう既にビルを建てた後の部屋の割り振りまで全部セットされているので、身動きできなくなっているという。今どき大都市の公園の緑を潰してビルを建てるような、SDGsに全く逆行する都市、国はない。都知事が簡単に中止できるのにそれをしようとしない。
 この愚行にビックリしたイコモス(国際記念記念遺産会議、本部パリ)が、9月7日に文化遺産が危機に瀕しているとして出した緊急声明「ヘリテージ・アラート」を発出して、事業者に計画撤回を都に環境影響評価の再考を求めた。
 それでも事業者は、反論して日本イコモスの質問には答えない。

<コロナ禍でオリンピックも延期しただけで止められず>
 最近でいえは東京オリンピックも同じだった。いくらコロナがどんなにひどくても中止できなかった。終了後、電通がらみでかなりの贈収賄事件が発覚した。更に上記の神宮外苑再開発も絡んでいたかもしれない。さわやかであるべきスポーツの祭典が、汚職にまみれていたのである。「やめられない、とまらない」のキャッチフレーズではないが、頑迷固陋な日本政府の姿勢が表れている。

<中海干拓中止は例外か>
 私の記憶では、このような日本の政策で中止されたのは、中海干拓以外にはないのではないかと思う。景観も壊すし、余り始めた米を作っても仕方がないじゃないかということで、中止に追い込まれている。ところが道路の建設などは一旦俎上に上って計画がされたら止まったためしがない。

<1970年万博は華があった>
 1970年万博は1964年にオリンピックが終わった直後で、日本はまだ勃興期にあった頃に開催された。当時、小中高の同級生が、私の京都の三畳一間の下宿を根城にして何人か万博に訪れた。もちろん、篠原が京都にいるから、そこに泊まれば交通費だけで宿泊費はかからないという事情もあったろうが、皆万博で見られる新しい技術や製品に興味津々だったのだ。動く歩道、電気自動車など当時の先端技術も人々の関心を呼んだ。私も訪問者のお相手で京都から電車に乗って何回も万博会場に行くことになった。アメリカ館やソ連館などは大人気であり、行列ができてなかなか入れなかった。延べ来場者は6400万人と日本人の半分近くが行ったことになっている。それを今回は半分以下の2300万人の来場者だと予想している。
 岡本太郎の太陽の塔は今も大阪の万博公園にあるという。私の個人的哀愁だが、50年前を思い出すべく再訪してみたいと思う。また、「こんにちは、こんにちは、世界の国から」で始まる明るいメロディの三波春夫の歌は、今も耳にこびりついて離れない。長らく私の生まれ育った農村集落に来るJAの移動販売車のテーマ音楽だったからだ。

<21世紀は万博の時代にあらず>
 ところが今、万博の時代かというとそうではない。NHKの8月中旬の世論調査によれば、関心のある人は35%に過ぎず、ない人が59%となっている。多くの情報がインターネットで即時に入手できており、時代が変わったのである。
 25年万博は、政府と大阪市が動き、ドバイ(21年)の後に開催できることが決まった。政府は各国参加を呼びかけ、150ヶ国と地域が応じている。その中で50ヶ国が自らパビリオンを建設することになっているが、8月中旬現在、建設の手続きが始まっているのは、韓国のみという。スロベニアは洪水対策もあり自前の出展を断念している。①資材が前年比7%も値上がりした②人手不足もますますひどくなる③計画地の夢洲へのアクセスが2ルートしかない➃電気も24年7月まで通らず、それまで自家発電で賄うしかない等の悪条件が重なり、建設業者が応じないのはよくわかる。

<維新は万博こそ身を切る改革路線を貫徹すべし>
 こうしたことから会場開発費が2700億円と膨らんだ。2018年の当初の1250億円の8割増しである。国、大阪府、市、経済界が3分の一ずつ負担することになっているが、増加分を国に押し付けるはやめて欲しい。維新政権(?)の大阪府・市は得意の身を切る改革の党是から、とてもこれ以上税金を注ぎ込むことはあるまい。
 しかし、こうしたことが予想されながら、工事の大幅遅れという混乱を生じさせ、放置してきた万博協会と政府・大阪市の責任は重い。安倍政権と松井大坂市長(前維新代表)と比べ、岸田政権と馬場維新代表、吉村大阪府知事の関係が密でないとか、国際的には全く通用しない言い訳が聞こえてくる。関係者が一体となって取り組まなければならないはずなのに、どうも熱意が伝わってこない。
 身を切る改革を唱える維新は、政府が更に事業費を注ぎ込むことには反対しなければ矛盾する。自前で、つまり大阪府・市・経済界でやり遂げるのが筋である。ところが、どうもそういう姿勢がみられない。そればかりか、もう1つご執心のカジノも進捗していないという。まさかここにも国費を更に投入するなどと甘い考えはないことを願う。

<万博工事従事者を残業規制から除外はしらじらしい要求>
 今物流業界は、2024年問題を控えて大弱りである。24年4月から猶予されていた残業規制がそのまま運転手にも適用され、日本の物流が滞るおそれがあるからだ。トラックを大きくするとか、はたまた、高速道路のスピード制限80㎞/hがきつすぎるので100㎞/hにすべきだというトンデモナイ意見が出されているが、さすがに再度の猶予といった図々しい意見は出されていない。
 それにもかかわらず、万博協会が恥ずかしげもなく、政府に万博の工事従業者は例外的に残業規制から例外するように要望した。トラック業界と同様に24年4月まで猶予されていたのである。それを更に延長というのは呆れるしかない。労働時間が減れば、作業人数を増やす必要があり、今もう直面している人手不足に拍車がかかり、ますます工事が進捗しなくなってしまう。

<万博は立ち止まって考えてみる必要がある>
 2年後に万博が控えているというのに、外国が自ら館の建設をするという申し出がほとんどないという。慌てた万博協会が、自ら建物を造ってそれを貸し出す仕組みにしようとしている。しかし、他の参加国も今更万博かというムードになっているのではないかと思う。1970年のような血沸き胸躍る陳列品がないということもある。例えば当時、月の石などの目玉には宇宙に興味を持つ人たちの長蛇の列ができた。インターネットを通じて欲しい情報が難なく手に入り、仮想空間上で展示会なども開催できる情報化時代、大規模展示会の役割はもう終わったのではなかろうか。1850億円の開催費に対して経済効果も約2兆円にすぎない。動き出したら止まれず方向転換できない日本の悪癖が現れている。私は、無理した開催にまた有象無象が群がり、東京オリンピックと同じ贈収賄事件で世間を賑わすのではないかと危惧している。

投稿者: しのはら孝

日時: 2023年10月 7日 11:38