2023.12.16

環境

【気候変動シリーズ①】 トリガー条項凍結解除協議にこそ化石賞を - 日本も世界(COP28)のCO2排出抑制に呼応すべし - 23.12.16

 今、中東UAE(アラブ首長国連邦)ドバイでCOP28(国連気候変動枠組条約第28回締約国会議)が開催中である。首脳会合には派閥の政治資金収支報告書問題、増税・減税問題で内閣支持率が下がりっぱなしの中、岸田首相も出席し、石炭火力発電所の新設は終了すると、一歩前進のスピーチをしている。

<地球温暖化のダメージは続く>
 2100年までに産業革命以降の地球の平均気温の上昇1.5度未満に抑えるべく、世界は四苦八苦している。地球温暖化で気候変動が激しく世界各地で自然災害が起きている。日本で言えば、線状降水帯による大洪水、温暖化による史上一番熱い夏、更に長野で言えば、果樹の凍霜害等。世界では地中海の山火事、カナダに至っては日本の国土面積の4分の1が山火事で焼失、アメリカは熱波で140人死亡、欧州のブドウ産地の大干ばつ、インド・パキスタン等での大洪水と枚挙にいとまない。

<獲れる魚が大変化し、南の魚が北で大量に獲れる>
 ところが、陸地よりも海にもっと明白な変化が現れている。2~3年前からサンマの不漁が続いている。海流と餌の問題もあるが、海水温の低いところを好むサンマが温かくなった日本近海に近づかなくなったためとも言われている。更に、明白なのはホタテである。青森県陸奥湾は4℃ほど上がり、稚貝が相当斃死してしまった。中国の水産物輸入制限と併せてダブルパンチである。またここ数年北海道、東北でイカの不漁が続く中、暖流漁のブリやフグが大量に獲れるようになりつつある。更に今秋はサケの漁獲量が北海道では3割減、東北は8~9割減となっている。いずれも地球温暖化が原因である。

<トリガー条項凍結解除はCO2排出抑制の妨げ>
 そうした中、政局絡みで自民、公明、国民民主の三党で租税特別措置法のトリガー条項の凍結解除が昨年に引き続き話し合われている。トリガー条項とは、レギュラーガソリン価格が全国平均で160円/ℓを3か月超えると25円分のガソリン代の上乗せ課税を止める、3か月連続で130円/ℓを下回れば再び課税するという仕組みだが、2011年の東日本大震災の復興財源の確保のため、民主党政権下に特例法で凍結している。
 ガソリン価格の高騰は需要を抑制し、CO2の排出を抑制する効果があるが、トリガー条項の凍結を解除して発動するとガソリン価格が下がり、需要を下支えし、CO2排出抑制を妨げることになる。

<政局に悪用されるトリガー条項>
 国民は円安による輸入価格の高騰による物価高で困っていて、何もガソリン価格だけが問題なのではない。都市部の低所得層にとっては、食品の値上がりがより深刻な問題だ。その意味では、物価上昇に対する対策は消費減税こそピッタリであり、食品の消費税をゼロにするのが最も恩恵が大きい。消費税は全体にかかるものであるが、一つの品でしかないガソリン税に法で拘泥するのは歪んでいる。
 更に国民民主党がそこに政党の存亡をかけるというのはとってつけた感がまぬがれない。他の思惑に動かされたものでしかあるまい。

<燃油価格の補助金に6兆円は法外>
 それよりも何よりも、世界中がドバイに集まってCO2排出量の削減に取り組んでいるというのに、日本が石油の価格が上がったからという理由で、ガソリン、軽油、灯油、重油を対象に燃料価格の激変緩和を打ち出した。21年度補正予算の893億円を皮切りに、23年度補正までに合計6兆3,665億円もの巨額の補助をして、従来どおりに石油燃料を使えるようにしていることだ。世界に背を向けていると言う他ない。この補助金で石油業界が潤って、後述の政治献金の元金の一部になっていたとしたら、それこそ噴飯物である。
 農林水産省予算が約2兆円強なので、その3年分に当たる。無駄だとは言わないまでも、他にやることがあるだろうということだ。

<透けてみえる選挙対策>
 当初1ℓ当たり5円の補助金が、値上がり状況に合わせて25円となり、更に35円となり・・・と続き出口が見えないまま24年3月まで続けられる。解散・総選挙をにらんだ選挙対策と見られても仕方あるまい。日本はガソリン価格が政争の具となり、CO2の排出を増やす方向に向いているのである。G7の一国としてガソリン価格も上がったのを契機に思い切ってガソリン使用の削減に向けた政策を導入すべきなのだ。それを逆に6兆円も補助をして、今までと同じくCO2を排出しているのだ。世界の常識や潮流に逆行している。

<円安是正で復興財源の確保を優先すべし>
 そこに拍車をかけるのが、前述の自・公・国民の3党によるトリガー条項の解除のための協議である。130円/1ℓが3か月続いたら再び元の価格に戻すことになっているが、今の状況では、そんなに下がることはないので、税収は減ったままである。鈴木財務相は1兆5000億円の減収になると警鐘を鳴らしている。ガソリンの消費も元のままで、安心してガソリンを使い続けることになる。SDGsが叫ばれる中、ここまで国民に迎合する必要はない。
 今回の値上がりの根本原因は度を越える円安である。どうしてこれを何とかするという前向きで長期的な政策転換をしないのか。私は不思議でならない。

<地球温暖化対策に「対決」する愚>
 国民民主党は「対決より解決」と称して自民党にすりより、予算案にも賛成している。その一方では、内部で前原誠司と対決している。それよりも何よりも罪作りなのは、COP28に完全に「対決」していることである。地球温暖化の解決には、全くそっぽを向き、内向きのことに血眼になっているのである。世界との危機感を全く共有していない。
 自民党は政治資金収支報告書の不記載、キャッシュバック問題でガタガタである。他党が対決していては政府自民党に塩を送るだけである。

<真面目にCO2削減に取り組む中国を見習うべき>
 地球温暖化により、世界中が危険に晒されている。日本でも前述のとおり第一次産業は重大な影響を受けており、一時のガソリン価格の上昇にかまけてはいられない。
 中国はこの機にEV化に拍車をかけている。産業政策として世界をリードせんとしていることもあるが、都市の大気汚染が深刻なことも要因の一つである。これ以上ガソリン車に走られてCO2を出されると健康被害も拡大してしまう。ただ、せっかくのEV車も、電源の62%が石炭火力発電によるものであり、その点では矛盾を抱えているが、ともかくガソリンの消費を減らそうとしていだけ、日本より立派なのだ。
 要するに、日本はCO2排出削減にG7で、最も無責任な国なのだ。

<前向きな政策に予算を使うべし>
 日本もガソリンの消費が抑えられている間に環境に優しい方向に誘導すべきなのだ。他にも、どこでも使える太陽光発電・ペロブスカイトの研究等に100分の1でもつかぅたらよい。IPPCが「今後10年の対策が(人類や地球に)数千年にわたり影響を与える」と警告しているのに、ガソリン価格の維持に湯(油?)水のごとく予算を使っている。
 これでは日本は脱炭素社会を全く考えていないと世界から冷やかにみられても仕方あるまい。もっとまじめに地球温暖化防止政策を果敢に導入しないとならない。

投稿者: しのはら孝

日時: 2023年12月16日 09:47