2024.01.09

2024年・令和6年 地元各紙新年号への寄稿文 ー24.01.09

【北信ローカル】
一歩でも有機農業に近づき、日本の美しい自然を復活する

 2021年2月農林水産省は突然「みどりの食料システム戦略」という方針を打ち出した。本当に突然であった。国連はSDGsを標榜し、世界各国は地球温暖化に危機を抱き、最近では世界の首相が最も多く集まる国際会議がCOPである。ところが日本は、そこでいつも環境NGOから気候変動対策に対して足を引っ張った国に与えられる「化石賞」という不名誉な賞を頂いている。

 EUは既に2030年に農地の25%を有機農地にするという大目標を立てている。現在8%が既に有機農地になっており、諸々の農薬規制は当然のこと、畜産分野でもケージ飼いは既に禁止されている。
 それを全く猿真似したのが、農林水産省の突然の方向転換である。現在、有機農地は僅か0.2%しかない。ところが2050年までに25%(100万ha)を有機農地にするというのである。有機農業を冷たくあしらってきた今までよりはマシであるが、具体策が乏しい。ただ、有機農業が国の政策の中に入ったことは大きな前進である。

 私は少年時代、リンゴ畑の横に置かれた土管の中で、粉や液体の消毒液を撹拌したり、消毒液がボタボタ落ちる中、叱られながらホースのねじれを戻す手伝いをしていた。防除の苦労は経験しているので、完全な無農薬は難しいことも承知している。

 かつてはドジョウもメダカもタニシもいて、トンボが飛び交っていたのに、農薬と除草剤と水路の3面コンクリート整備で、これらの愛おしい水生生物がすっかり少なくなってしまい、私はかねがね苦々しく思っていた。この地球環境時代、様々な手を尽くして日本の美しい自然を復活させなければならない。

【長野経済新聞】
現代に蘇る石橋湛山の上日本主義

永田町では石橋湛山が一種のブームを呼んでいる。僭越ながらこの動向に火をつけたのの1人が私である。なぜなら、今から38年前1985年東洋経済新報に「新小日本主義の勧め」という論考を5頁にわたって掲載し、それを入れ「農的小日本主義の勧め」というタイトルの本にまとめた。

去年の3月、同僚の議員からせがまれて、私が代行で石橋湛山研究会を発足させた。もちろん野党だけである。2回開催したところで、与党自民党の古川禎久議員から、「大学時代に篠原さんの本を読んで感銘を受けて、石橋湛山に関心を持っていた、自民党の我々も入れてほしい」と言う申し出があった。それを受け入れて、自、立憲、国民の3党の共同代表の超党派の議員連盟として6月に再スタートした。そして既に3回回を重ねている。

なぜ今石橋湛山かというと、あのタカ派の安倍晋三内閣を凌ぐ岸田内閣のあまりの右傾化にある。GDPの1%枠を撤廃し2%にし、防衛予算を5年で43兆円にする。突然敵基地攻撃能力(後に反撃能力に改められた)と言い出し、専守防衛を踏みにじっている。そして、紛争地域等への武器の輸出は控えるべき、殺傷武器は輸出しない、といったかつての武器輸出三原則が、いつの間にか防衛装備移転原則になり、武器を輸出せんとしている。このあまりの変貌に与野党議員が、これではと危機感を抱いたのだ。
石橋湛山は、軍事進出を抑制し、満州開拓をも否定し、アメリカへの出稼ぎ移民も否定した。第一次大戦後日本は大国の仲間入りし、植民地を拡大せんとしていた中、敢えてその動きに釘を刺したのだ。今では当然のことと受け止められるが、当時としては、何をしみったれたことを言うかという反応だったに違いない。
つまり、小さな国で分をわきまえて生きろということ説いていたのである。そして、結果は湛山の正しさを説明している。
 今、石橋湛山の考え方を現代に蘇らせるべきである。


【長野建設新聞】
石油の値上がりを契機に脱炭素社会を目指すべき

日本は、生活になくてはならないものをたくさん外国に頼っている。そこに昨年春からの円安の影響により、日本で全く取れない石油や、自給率の低い食料品類が総じて値上がりしている。食料品では特に、自給率ゼロの油脂関係の値上がりが顕著である。一方、しっかり国内で自給しているために米の価格はほとんど上がらずにいる。米農家がやっていけるよう米価こそ上がって欲しいと思うのだが、品目毎の値上がりに大きな差が出てきている。

諸物価値上がりの中でも、車がなければ生きていけない地方は、特にこのガソリン価格の値上がりに四苦八苦している。因みに長野県は、ガソリン価格が日本で1、2位で高い県である。これに対し、国民民主党がトリガー条項の解除ということを言い出した。石油にかかる税金として、毎年一兆5千億円ほど税収が上がっているが、それをとっぱらおうというのだ。ただ、同党が国民に迎合し恰好を付け、選挙を有利にしようという見苦しい魂胆も透けて見える。

ほとんどの人たちが私の主張に目をむいて怒るかもしれないが、私はこの石油の値上がりを契機に方向転換をすべきだと思う。脱炭素も遅れ、環境対策もほとんどしないで、今までの贅沢な生活をそのまま続けているのは、先進国では日本だけなのだ。いつまでも許されるとは考えられない。これを機に、便利な車に乗ることを控え、なるべく公共交通機関を利用し、CO2を排出しない社会に変えていくべきではないだろうか。

投稿者: しのはら孝

日時: 2024年1月 9日 14:34