2024.01.27

政治

【政治とカネシリーズ①】ロッキード→リクルート→キックバック -政権交代なくして「政治とカネ」の膿は政権交代なくして出しきれず- 24.01.27

【キックバック問題は、他党、自民党のことであり、口を挟むのはやめておこうと思ったが、政治の行方を揺るがす大問題なので、私の考えを素直に述べることにした。本稿は23年12月25日に脱稿している。その後の進展があるが、そのままブログ・メルマガとしてお届けすることにした。また、その書き続けていたものも順次まとめてお届けする。】

 今から50年程前、1972年山崎拓、加藤紘一、小泉純一郎が初当選同期として国会で席を並べた。第一次田中角栄内閣が組閣された年で、田中角栄の支持率70%とまさに全盛期であった。しかし、数年後田中派自体は力を失って行ったが、その流れを受け継いだ経世会(現平成研)が、党内で大きな力を持ち続けていた。これに対抗すべく、1991年に加藤が同期の山崎と小泉に呼びかけ「YKK」と呼ばれるトリオが生まれた。

<企業・団体献金の廃止でパーティーが重要になる>
 自民党長期独裁政権は、何回も「政治とカネ」で国民から批判され、マスコミからも追及されてきたが、膿は出し切れていない。そのたびに政治改革が叫ばれた。例えばYKKの時代1994年にはゼネコン汚職をきっかけにして派閥や政治家個人への企業・団体献金が禁止された。これにより派閥の資金力が低下して、今問題となっているパーティーが重要になっていった。

<大派閥→不祥事→分裂と繰り返される歴史>
 141人と党内で圧倒的な権力を握っていた田中派だったが、ロッキード事件、田中の入院等により3つに分裂した。そうした中1987年に竹下登が経世会を設立すると田中派の大半が参加し、118人の大派閥として実権を握った。しかし、その竹下もリクルート事件で崩れ、なお且つそれから七奉行、小沢一郎・羽田孜らが新生党として離れ、最終的に自民党の政権の崩壊を招いた。政界は田中派の不祥事と分裂により大山鳴動したのである。
そして今、代わって権力を握った安倍派(清和政策研究会)が99人と最大規模になり、政治をほしいままにしてきた。その安倍派も安倍本人が凶弾に倒れ、今キックバック疑惑で窮地に立たされている。大きくなりすぎた組織が勢力を振るい、不祥事を起こして分裂、瓦解していく様はまさにデジャヴである。
 当時さんざん金権政治を批判した清和会が今回もっと小汚いことをしていたのは皮肉としか言いようがない。

<神宮外苑もキックバックも森会長の頃から始まったという>
 その清和会は福田赳夫から始まり安倍晋太郎へと引き継がれていったが、田中派と比べて派閥の資金が不足していた。急速に成長した清和会は、企業献金が完全に廃止された中で新たなキックバックという仕組みを造り出したのである。
詳細は知らないが、既に週刊誌では「全ては森喜朗から始まった」と報じている。私が心血を注いで阻止しようとしている神宮外苑のとんでもない乱開発も森喜朗から始まったと言われている。

<名前を明かさず20万円を献金できるパーティー>
 個人が政治家に対して献金した場合、額が5万円以上になった場合に献金者の名前を出さなければならない。正々堂々と献金すればよいものをそれを極端に嫌う。そこですり抜けができたのが政治資金管理団体の主催するパーティーである。1口2万円のパーティー券を購入して献金することになるのだが、上限20万円すなわち10枚までの購入であれば購入者の名前が明かされないことになっている。だから大体の大企業でも20万円(10枚)にとどめ、もっと献金する場合は子会社や関連会社の名義で20万円を振り分けている。

<安倍派のゴマカシが二階派よりずっと性(タチ)が悪い>
 そこに登場したのが派閥主催の資金管理パーティーである。そして、ノルマが課されており、ノルマ超過分が派閥からその議員個人に戻されるキックバックシステムが生み出された。
 それでも、きちんと両方(派閥、個人)の政治資金収支報告書に書かれていればいいものを、安倍派の場合は両方とも全く記載していなかった。安倍派に対して二階派(志帥会)があまり取りざたされないのは、安倍派の5年間で5億円という金額に比較すれば二階派の1億円が少なかったということだけではなく、二階派はその出し入れを両方とも記載していたからである。その点で安倍派は出した派閥側にも受けた議員側にも一切記載がなく、完璧にチョロまかし、裏金として使われてきていたということである。

<キックバックは悪質で他の2事件と比較にならず>
 よく例に出されるロッキードもリクルートも政治家は受け身だった。ロッキード社は世界に飛行機を売るため金をバラまいており、日本のみならず世界中で問題になり、その1人が田中角栄だった。リクルートも江副浩正が、NTTの利権狙いで派閥の領袖クラスに未公開株を配っただけであり、政治家は受け身だったのだ。それに対して、キックバックは政治家自らがゴマカシ続けていたのであり、その悪質性は群を抜いている。【別表『キックバックとリクルート事件の比較表.pdf』参照】

<安倍元首相はいかがわしさに気付いていた>
 公訴時効が5年ということから、最近5年で5億円とか1億円とか報じられているが、かなり昔から慣習になっていた。それが22年細田博之に代わり安倍晋三が会長になった折、この如何わしい手法を止めるように指示したという。そして一旦は廃止になったが、22年7月に亡くなったことから再び復活した。この間の安倍はキックバックの存在を知らず、初めて気付いて直ちにやめるように指示した、とまことしやかに言われているが、とても信用はできない。別途詳述するが、検察の追及を察知した安倍が先手を打とうとしただけのことである。それを他の幹部が気付かずに今日の騒動を招いているとみてよい。
 さて、これらの関係者をどう罰するかが問題である。金額が一つの基準というが、もっと重要なのは、誰が指示したか、誰が認めたかということである。つまり、会計責任者と共謀して虚偽記載等をしたかどうかが重要なのだ。金額の多寡で4,000万円を超えた3人の処分で終着してしまった。

<秘書給与流用疑惑では該当議員は辞職した>
 これに関わった政治家は、こうした手法に手を染め、旨みを吸い続けた事実をもって断罪してもよく、金額の大小に関わらず一旦全て辞職してしかるべきだと思う。かつて、秘書給与流用疑惑という問題があった。その時、社民党で勤務実態のない適当な人を政策秘書として雇い、国から出る給与のうち毎月5万円ずつ、つまり年間60万円をその秘書に支払い、残りの1,000万円を超える額を党に寄付してもらい、それを政治活動費に充てということがあった。辻元清美はこれで議員辞職している。これまでもお金に関わることでいかがわしいことがあった政治家には辞職という重い処分が下っていたのである。

<葉書に投票依頼で辞めさせられている>
 前川清成(近畿ブロックの維新の衆議院議員)は、選挙前に関西学院大学の同窓生に宛てて、「今まで民主党だったが今度は維新から出馬するのでよろしくお願いします」という主旨の葉書を送ったことから、公職選挙法違反の選挙期間前の事前運動にあたるとされ有罪となり、議員辞職をしている。これらのことと比較考慮をすれば、多額の現金が絡む今回の問題は関係者は全員辞職に値する。こういうことを"まあまあ、なあなあ"で見逃していると、いつまで経っても政治とカネのいかがわしい問題はなくならないからである。今後検察委員会を経てしっかり追及しないと国民は納得しないだろう。

投稿者: しのはら孝

日時: 2024年1月27日 10:55