2024.01.27

政治

【政治とカネシリーズ②】抜け道を合法化してきた自民党 -政治と金に纏わるドロドロした経緯- 24.01.27

 政治資金規正法も1948年に成立した。政治と金という問題は戦前から付きまとっていたので、戦後すぐにできた。

<辰年に露呈した田中金権政治、リクルート事件>
 1972年金脈問題で田中角栄首相が退陣。75年企業団体からの政党への献金は1億円、それ以外の政治団体には5千万円に制限された。この結果、徐々に政治資金パーティーが流行るようになっていった。1976年辰年、田中角栄首相は任意の事情聴取を受けている。それから12年後の辰年1988年、リクルート事件で大規模贈収賄が発覚し、竹下登首相、宮澤喜一蔵相と自民党の大物が辞任した。そして今年2024年も辰年である。

<ほぼ全ての問題を網羅した1989政治改革大綱>
 その結果を受けて政治改革大綱が翌1989年に出来上がり、国民の政治に対する不信感は頂点に達し、我が国政治史上例をみない深刻な事態と考えているとして、政治資金の透明性を高め、公正さを確保すると謳った。伊藤正義、後藤田正晴が中心となってまとめたもので、非常に的を射たものとなっている。それを受けた経済主要5団体は、自民党にパーティーの自粛を求めている。そして今、石破茂などは、政治改革大綱が原点に立ち返るべきだと主張している。つまり、せっかくの改革方針が30数年後も全く実行に移されていないことを物語っている。

<金丸信ヤミ献金問題>
 92年から93年にかけて、東京佐川急便事件がある。金丸信元自民党福総裁の5億円のヤミ献金が発覚したが、事情聴取もなく略式起訴で幕を引いた。自宅に隠された「金」には国民も度肝を抜かれた。その結果、1千万円を超えたパーティー券の購入者の名前を公表、政治資金パーティーの購入上限を1人、1社あたり150万円という上限が設けられた。初のパーティーの規制である。

<ゼネコン汚職から55年体制が崩壊>
 しかし、自民党と政治とカネをめぐる動きはとどまるところを知らなかった。ゼネコン汚職で、多数のゼネコンが自民党の有力議員に毎年、盆暮れ中心にヤミ献金、裏金を提供したことが発覚した。その結果、7月の衆議院選挙で経済団体は、自民党の単独支持を止め、新生党やさきがけといった他の保守政党にも支持を拡大した。その結果、93年自民党が55年から続いた与党の座から転落し、細川護煕内閣が成立した。

<政治改革関連4法で今の政治制度の骨格ができあがる>
 翌94年政治資金規正法が大幅に改正された。内容は政党と政治資金団体(つまり派閥)、政治家個人の資金管理団体(これは〇〇会とよく言われるもの)の2つ以外の政治家個人への企業・団体献金が禁止された。また、政党、政治資金管理団体及び政治家個人の後援会への寄付の公開基準を5万円越えの場合は公開することに厳格化された。そして、パーティー券購入者の公開基準も100万円超えから20万円超えに引き下げられた。かくしていわゆる政治改革関連4法成立した。
 この1994年の改正を受けて、96年の衆議院選挙では、中選挙区制が廃止され、小選挙区比例代表制という今の形ができた。つまり94年から96年にかけて政治制度の大改革が行われたことになる

<悪いことをする者はどこでも悪をする>
 98年、森喜朗が清和会会長になり、この頃からパーティーによる裏金作りが始まったと言われている。森喜朗は、私が今必死になって阻止せんとしている、神宮外苑の再開発にも相当前から絡んでいると言われている。一連の東京オリンピック疑惑も森の周辺である。

<企業・団体献金は禁止されるも政党・政党支部へは可能>
 99年の政治家個人の資金管理団体に企業・団体は献金が禁止された。これは94年改正に5年後の改正が明記されたことによるものである。ただし、ここで第一の抜け穴が出来ている。政党・政党支部への献金は可能であるため、政治家個人が代表を務める、例えば○○党第何区総支部といった類のところには、企業・団体が献金できることになっている。この結果、県議会議員が代表の支部、職域の総支部、地域の支部と、企業・団体献金を受け入れるための党支部がそれこそ星の数ほど創られ、その受け入れ窓口となった。これにより、事実上政治家個人への企業・団体の献金が禁止は形骸化された。
 自民党・政府の改正というのは、このように常にどこかに抜け穴を残しているということである。もっと露骨に言えば、規制という体制をとりつつ、むしろ抜け道を作るための改正だった。

<岸田首相は派閥離脱のルールさえ守らず>
 それから、首相とか閣僚とかの大規模パーティー(売上1千万円以上)が自粛することも、01年に決められたが、これもまったく形骸化して閣僚たちも平気でパーティーを開いてきている。首相や党の三役も派閥から離脱するというルールも、岸田首相が今回のキックバック騒動に2023年12月に慌てて離脱したのでわかるとおり、全く守られてきていない。

<平成研への1億円ヤミ献金を契機に5000万円規制、銀行振り込み義務化>
 2004年、日本歯科医師会政治連盟の旧橋本派(今の平成研)への1億円ヤミ献金事件が発覚し、村岡兼造元官房長官が起訴され有罪となった。この結果、政治団体間の献金、例えばこの日本歯科医師会政治連盟から旧橋本への献金の上限が5000万円に規制された。いつも何か事件が起きると、その付け焼き刃でそれを禁止する法律ができるという悪い例である。ヤミ献金ばかりが横行するので、政治資金団体の献金は原則銀行振り込みにされた。しかしこれもどれだけルールが守られているかわからない。

<事務所費問題で導入された監査義務も政党と派閥は対象外という抜け穴>
 松岡利勝農水相の何とか還元水に象徴される事務所費問題では、事務所の運営に相当金を使っているという問題が吹き荒れた。その結果07年国会議員の政治団体は1円以上の領収書は全て公開ということになった。そして、弁護士や第三者による監査が義務付けられた。ところがまたしり抜けがある。派閥や政党本部は外部監査の対象にならない。つまり自由民主党あるいは安倍派は監査の対象にならないのである。どこまでも際限がないしり抜けだらけなのだ。

<抜け道のパーティー券にますます頼る悪弊が定着>
 その結果どうなったか。
 度重なるこれら改正で献金ルートを絶たれたことから、だんだんパーティー収入に頼らざるを得なくなっていった。その後、08年資金管理団体は人件費を除く、すべての経費について領収書を添付するという改正が行われた。また09年には、国会議員関係の政治団体は、人件費を除く1万円以上の領収書の提出が必要となり第三者の会計検査、会計監査が必要となっている(これも、開示要求があれば1円以上の開示が必要であり、実質全ての費用の開示が義務付けられている)。
 篠原孝の緑政会はこれに属する。ところが、前述の通り、派閥の清和会等にはこの監査制度も1万円の領収書の提出も必要ないということになっている。
更に1番典型的な抜け穴が、政党から政治家に流れる政策活動費の数億円の支出先は全く闇の中であり、官邸の官房機密費と同じなのだ。

<選挙のために陣中見舞いで金を配ることなど今もって許されているのは不思議>
 2022年、参院選広島地方区 河井案里の買収事件があった。買収は公職選挙法違反だが、選挙のための陣中見舞いで国会議員が地方自治体議員や市町村長に金を配るのは許されているのだ。河井は当然買収ではないと主張したが、聞き入れられなかった。どこに境界があるのかわからない。こんなことすぐに禁止すべきことだ。
 21年の総裁選の岸田文雄候補の公約に基づき、22年5月には自民党を運営の指針(ガバナンスコード)が作成され、政治資金の取り扱い等に関する疑問を持たれた議員は、国民に対して丁寧な説明を行うとされたが、キックバック問題では全く実行されることなく、関係者は逃げてばかりいた。
 2022年11月赤旗の18~20年まで2,500万円の不記載という記事から、上脇博之神戸学院大学教授がこれを東京地検に告発し、一連の捜査が行われて今に至っている。

 なお、この点について、時系列で一覧表『政治資金規正法の主な改正と事件.pdf』をまとめたので参照されたい。

投稿者: しのはら孝

日時: 2024年1月27日 11:08