2024.02.02

政治

【政治とカネシリーズ⑤パーティー・付番外編】政治資金パーティーは派閥も個人も全面禁止すべし―正々堂々寄付して政治を支えるのが王道ではないか―24.02.02

<20年前の民主党の政治資金論議>
 私がまだ2期生の2000年代初頭、民主党の中で政治改革推進本部が設けられ、政治改革委員長、そして私が小委員長で、公職選挙法等について18回にわたって勉強会を重ねた。そしてそれなりの改革案をまとめたが、その結果はほとんど実現されていない。ことほど左様に、選挙法や政治資金についての議論というのはまとまりにくいということである。
 私はそれ以来根幹の問題、すなわち選挙制度と政治資金の問題についてきちんとしなければならないという思いから、特別委員会は、常に「政治倫理及び公職選挙法に関する特別委員会」(以降:倫選特)を希望していた。あまり希望をする者が多くないようで、何回か忘れたが大半を倫選特で過ごしている。

<アメリカのように完全自由化vs.企業・団体献金完全禁止>
 そうした中で、非常に印象に残っているのは、真っ二つに割れた政治資金に関する議論であった。私は、とりまとめ役だったので発言はずっと控えていた。
 1番過激な意見は、政治資金などというものは、その議員の実力によって集まるものであり、規制をせずに企業・団体献金(以下、「企業献金」)も何も全部オープンにして、そのかわりきちんと誰からどれだけ寄付を得たかということを公開すればいい、というものである。アメリカでは、膨大なお金を集めて選挙を戦っている。日本もそのようにしていくべきだというのだ。従って、政治資金管理パーティは当然許されることになる。
 2番目はその正反対で、企業献金などは政治と企業の癒着が見え見えなので、絶対禁止すべきであり、公開すればいいというものでもなく、その代わりに個人献金を認める、というものである。
 全面自由にすべきだという過激な意見は、民主党が上り調子の時であり、それに乗っかって連続当選をしている当選2~4回の人たちのものだった。将来のし上がっていき、自ら派閥を作り、その長になんなんとする意欲満々の中堅の人たちであった。絶対に禁止すべきだという者は既に名声を得て全国的に名が知られて、資金的にも恵まれ、選挙でもボランティアに手伝ってもらっているような恵まれた人たちだった。
 他に禁止に賛成したのは、私同様にそれなりに歳をとって政界に入ってきた人たちだった。公的資金で賄えるという政治資金助成制度ができたのだから、その範囲でやっていけばいいという欲のない人たちだった。

<県議と比べて段違いに金のかかる国会議員活動>
 その中で印象に残ったのが、県会議員出身の衆議院議員の意見だった。
 県会議員は年に60日ぐらいしか審議がなくて、秘書も必要ない。このまま議員を続けられたらずっと県会議員でいたいと思うぐらい、お金にも困らず選挙にも困らず、悠々自適であった。だからこのままいったら、だらだらと県会議員を続けてしまうのではないかという恐れから、危険を犯して衆議院選挙に出て、幸運にも当選し、国会議員を続けているという。
 ところが、お金の点で、県議と国会議員で雲泥の差ということに気がついた。それは、衆議院は3人の公設秘書がいるが、それだけではとても政治活動ができない。私設秘書を数人雇わなければならない。ところがその資金がない。定期的に地元有権者に宛てて国政報告発行しなければ「議員活動の内容が全く伝わってこない」とお叱りを受けてしまうので、チラシも相当頻繁に配らなければならない。国会議員活動にお金がこんなにかかるとは思わなかったと嘆いていた。

<パーティーによる政治資金集め>
 本シリーズの①,②で触れたとおり、1975年「田中金権政治批判」があり、政党への企業献金が1億円に規制され、また1994年に政治家個人への企業献金が中止されるなど規制が強化されたことから、パーティーによる資金集めがますます重要になった。(シリーズ2の別表参照)
 パーティーと一言でいうが、その規模は様々である。我が党の議員もしているような中小規模のもの、一回の開催の収入の小さなもので400万円、中規模で8~900万円、こうした規模のものは、年間何度も場所を変え人を変えて開催される。1,000万円以上の収入のある特定の大規模パーティーは収支報告書に、開催の名称や対価の支払いをした者の人数など別途記載が求められるため、1年に何度も開催することは避けられている。こうした規模のものなら1,500~2,000万円の収入になる。これら大きなものから小さなものを繰り返し、毎年5,000万円とか、多い人は1億円ものお金を集めている。
 信濃毎日新聞が、今回のパーティー券騒動で、長野県選出の国会議員の収支を1面トップで載せたので、その表に私が手を加えたものを別表に資料『2022年長野県選出国会議員の企業・団体からの寄付・パーティー収入比較.pdf』を掲げたので参照されたい。与党議員は、寄付と献金で多額のお金を集めているのに対し、野党議員は、そうしたものに頼れず、私のように4000万円前後で政治活動をしている者が多い。

<1994年、1999年の政治改革はほとんど効果なし>
 パーティーとは名ばかりで、献金と何ら変わることがなく、名前の出る上限が5万円以上から20万円以上になっているだけなのだ。パーティーは料理を楽しみ談笑する場なのに、収容人数をはるかに超える数千枚のパーティー券が売られるのだ。出席者はせいぜい150~300人程度、その結果収益率は8割9割となり、1千万円前後の利益になる。パーティーの主催者からすると、券を買うだけで出席してくれないのが一番の上客なのだ。大規模なパーティーほど、利益率も金額も上がり、これが派閥や大物議員となると数千万円から億の金が残ることになる。その他に、お酒も豪華な食事も必要なくコスパのよい、朝食セミナー名目のパーティーを小刻みに開催して数千万稼ぐ手法も多用されている。西村康稔はまさにこの手法で8000万円を稼いでいる。
(資料『安倍派5人衆の2022年の収支報告概要.pdf』参照)
 シリーズ2号で指摘してきたが、日本では制度に公然と抜け道を作り、平気で辻褄の合わないルールを作っているのだ。その意味では1994年、1999年の政治改革は金の規制では完全に失敗であり、うがった見方をすれば、この不完全な制度が故に小選挙区制度や二大政党制が遠のき、自民党政治の存続、ひいては安倍一強体制を作り出してしまったのかもしれない。

<安倍前首相は全てをわかっていたから、キックバックをやめろと指示>
 安倍はこのキックバックの仕組みを知らず、22年2月に派閥の会長になってから知り、それからやめるように指示したが、7月8日の死亡後に5人衆とやらが復活させたと、まことしやかに言われている。ずっと口をつぐんでいた幹部が立件されないとみてこぞって説明しだしたが、知らなかったと言い続け、本件は会長と会計責任者の間で行われ、事務総長は関与していない、と帰らぬ人となった細田・安倍両会長に罪を押し付けている。一方で、「安倍さんにすまない」と口裏を合わせている。何よりも、国民に先に謝らなければならないのに、何を勘違いしているのだろうか。安倍の神格化(?)や、お涙頂戴に騙されてはならない。
 もし、派閥のパーティー券の処理が安倍派の言うとおり、会長と会計責任者だけに任されていたとしたら、二階派と岸田派の2人の会長こそ糾弾されなければならないことになる。それを知ってか、岸田総裁は安倍派の幹部の処分には慎重である。ブーメランで必ず自分の元に投げ返されるからである。都合のいいことばかり並べたてる岸田総裁や安倍派5人衆の説明で納得する人はいないだろう。

<安倍派さくらを見る会の経験からキックバックの捜査の危険を予測>
 安倍は「さくらを見る会」の件で、首相でありながら事情聴取を受け、担当秘書が略式起訴されたことに驚き、検察人事への介入を始めたが、それが黒川の失脚でままならなかったために、際どいインチキを是正して尻尾を握られないように(捜査が及ばぬように)キックバックを止めて備えたにすぎない。
(資料『黒川弘務氏検事定年延長問題と桜を見る会・前夜祭問題【簡易版】.pdf』を参照されたい)。
 安倍は、金集めは会長がやる、議員はノルマをしっかり果たせばよい、ノルマを超えた議員は、ポストや選挙で優遇すればよい、と言っていたこともある。キックバックのシステムを知り尽くしていたのである。谷川弥一が、7期生なのに大臣をやっていない、だから必死でパーティー券を売って成績を上げようとしていた、と正直に嘆いている。入閣適齢期には、安倍の言うとおり派閥にせっせと上納していたのだ。それを信じて悪に手を染めたにもかかわらず、念願の大臣になれずに政界を去る谷川弥一は哀れである。

<派閥も個人もパーティーは絶対に禁止すべき>【派閥パーティーの全面禁止】
 2022年335団体がパーティーを行い、3年振りに増加し、82億円を集めたという。麻生派は一位の2億3,331万円を集めた。1999年の企業・団体献金禁止の抜け道はまさに頂点に達したのである。そして、今回のキックバック裏金騒動で国民の信頼を一挙に失った。自民党のとってつけた政治刷新本部でも、さすがにパーティー券によるごまかしは続けられないと観念したのだろう、派閥のパーティーは禁止する方向となっており、一歩前進である。
 パーティー券の名前を出す条件を今の20万円から一般寄付並みに5万円といったなまくらな改善などやってもあまり効果は期待できない。
 また、個人はいいではないかという考え方もある。ところがすぐに派閥の有名な領袖議員、例えば存命ならば領袖の安倍晋三個人の名前で大々的なパーティーが開いて大金を集め、それを派閥の議員に配るという尻抜けが編み出されるであろう。従って政治資金管理パーティーは派閥も個人も絶対禁止以外ない。


番外編

<私のたった1回のパーティー>
 私は悪い見本か良い見本かは知らないが、励ます会等をやらずに政治活動を続けてこられている珍しい議員の1人である。
 ただゼロかと言われるとそうではない。2012年私が書いた『TPPはいらない』、『原発廃止で世代責任を果たす』という本を同僚議員に読んでもらいたいという思惑から、禁を破って出版記念パーティーをキャピトル東急という安くはない会場代のところで開催した。同僚議員たちは、一度もパーティーを開いたことがなく、金のない篠原が、なんであんな高いところで開催して採算は合うのかと心配してくれたが、もともと金集めが目的ではなかった。だから、お土産は2つの本であり、通常の励ます会と比べて、お土産(本)も会場費も相当高額だった。ただ、それ以降一度も開催していないし、今後開催するつもりもない。

<野党もパーティーにはなまくらな態度を取り続けた>
 私は2012年の2冊の本の出版記念パーティー以外に開いていないが、国会議員のパーティーには義理でなるべく顔を出すようにしている。野党でもよくわからないが、3分の2ぐらいの議員は開催していると思われる。
 保守だと言わんばかりの振る舞いをし、企業にも入り込んでいる者は、企業もパーティー券を買ってくれているだろう。また、労働組合の強固な支援をもらっている者も支援する労働組合にごっそり買ってもらうことができる。そのいずれでもない私などは、とてもパーティー券を何枚も売りさばくことはできない。だから、かつて党主催のパーティーがあり同じようにノルマが課された時は、一応販売努力はしたが、大半は自腹を切って金を党に収めた。その時には、担当幹部に二度とこんなことには応じないと抗議していた。だから、24年春に開催予定であった立憲民主党のパーティーでは、私は絶対にパーティー券など売らず、ノルマも果たさないつもりでいた。ところが、自民党のキックバック騒ぎでとりやめになった。当然のことである。

<夕食代わりのパーティー参加>
 我が党のパーティーのルールは、議員同士は招待で、2万円のパーティー券を買わずに参加できることになっている。大半の人はちょっと顔を出してそそくさと立ち去っている。経費を抑えてお金を残すために当然料理は大したものではなく、あまり食欲も湧かない。しかし、私は夜遅くまで議員会館で質問準備をしたり、あまり読者がいないしつこいブログ・メルマガを書いていたりと忙しいので夕食のつもりで食べに行き、その返礼として同僚議員として紹介され、ひな壇に並ぶまではいることにしている。
 それをしっかりみていた平岡秀夫(山口2区、元法相)は「励ます会で篠原さんほどきちんと食べている人はいない。我々は2万円払っていないから、本当は食べる資格がないのに」と冗談を言ったことがある。私は「このケチ大蔵省役人め」とやり返した。主催者側からすると、なるべく多く券を買ってもらい、出席者はなるべく少ないほうがいいのだ。ただ、国会議員には多く来てもらい、これだけ多くの仲間がいるということを一般の支持者(パーティー券購入者)に示したいという矛盾する面もある。私は夕食をごちそうになるお礼の意味もあり、登壇するまでいることにより、後者の期待に応えている。

投稿者: 管理者

日時: 2024年2月 2日 16:02