2024.02.10

政治

【政治とカネシリーズ⑨責任】キックバック議員は辞職、岸田内閣は総辞職が筋 -自浄作用が働かない自民党には任せられず- 24.02.10

 過去の幾多の公職選挙法違反、政治資金規正法違反でも議員本人まで処罰されたことはあまりない。そして、今回も関係者のうち、関与を否認し続けて証拠隠滅のおそれが生じた池田佳隆以外、法律的には何のお咎めもない。安倍派の7人の幹部も立件されず不起訴となった。今まで捜査中だからと説明せずに逃げまくっていたのが一斉にやっと弁明し始めた。しかし、国民はこれに少しも納得していない。

 検察は、薗浦健太郎の4,000万円、安倍晋三の3,500万円を目安としたようだが、今回は裏金の多寡ではなかろう。窃盗と違うのであり金額で線引きするケースではないと思う。明々白々な法律違反である。軽々に国会議員の地位を奪うのには慎重を要するとしても何らかの処罰が必要である。
 しかし、一般の国民がインボイスで消費税について詳細にチェックされるのに対して国会議員は大雑把で済まされ、後で訂正すれば許されるというのは、均衡を失する。収入があるのに申告しない不記載は脱税に相当する。

<立件されなくとも政治的、道義的責任はとるべし>
 違反者の罰則の問題ははっきりしている。政治の世界は信賞必罰である。ただ、政治家の地位は刑法犯とかよほどのことがない限り、有権者が生殺与奪の権を持っている。つまり最終的には選挙が決める。だから、国会議員には国会開会中の不逮捕特権がある。といっても、国家権力の手が、政府を追及する野党議員に及ばないようにするのが第一義的な目的であり、自分たちの決めた政治資金や選挙についていかがわしいことをしていたキックバックのようなことは別の話である。
 今回のキックバック問題で、議員辞職するのは谷川弥一1人である。歴代の清和会事務総長は、閣僚や党の役職からは退いたが、それ以外はお咎めなしである。キックバックに指示があったか、共謀となりうるかは、検察の話であり、とやかく口を挟むことではない。国会議員の扱いはやはり慎重でなければならない。しかし、政治的、道義的責任はいつまでも続く。
 将来的には、会計責任者や秘書だけでなく議員本人の責任もとらせるようになるのは当然である。いわゆる連座制であるが、公選法と同じく公民権停止5年以内が妥当なところだろう。

<不正を働き続ける自民党には懲罰として5年間政党助成金を配分しない>
 そして、今回もっといい手がある。キックバックで不正を働いた政党には懲罰として例えば3年間その不正金額の10倍を政党助成金からさっぴくことだ。厳しく5年間は政党助成金を配分せず、残りを他の政党に振り分けるようにしてもいい。仮に裏金が適法であったとしても、税法上は個人所得となる可能性が高い。となると、収入があるのに記載しないことは、税の世界で言えば脱税である。脱税には延滞税、過少申告加算税、重加算税などが課されるはずである。私は税の世界のことは専門ではないが、「目には目を」と同じく、「カネにはカネ」で厳重に罰するべきである。国民に反対する者はいないのではなかろうか。

<今後は連座制が当然>
 ただ、今回のキックバック事件で議員の不始末の処遇、しめしが問題である。今(1月22日)頃になって、自民党内で幹部なり関係者の処分をという話が湧いてきている。自民党にいくらかでも自浄力があるか、お手並み拝見である。
 政治資金規正法の違反については、報告書の不記載や虚偽記載で会計責任者だけでなく、むしろ議員に厳しくし、連座制で辞めさせ、10年内の公民権停止にするのも一案である。つまり、政治家として息の根を止める強力な罪にし、抑止効果を高めるのだ。そうでなければ政治とカネの問題は、いつまでも続いてしまう。

<2009年と2012年の2度の政権交代選挙が政治の質を落とした>
 それから、問題は、こうしたことをしでかす政治家の質の問題である。池田佳隆は、今あまり言われなくなった魔の〇期生である。つまり2012年末の選挙で民主党が大敗、308議席あったものが57議席になり、一挙に100人以上もの新人議員が自民党に誕生した、いわゆる安倍チルドレンの一人である。2009年の政権交代選挙で自民党の有力中堅議員の多くが落選し、民主党政権が10年ぐらいは続くだろうと見たのだろう、多くが政界引退を表明した。そして3年後の2012年の選挙には出馬せず、一気に多数の若手議員が生まれたのだ。その時に諦めず待ち続けて再出馬した一人が、今自民党政調会長として政治改革を託された渡海紀三朗である。
 余談となるが、2012年に議席を失った民主党議員には、2009年に初当選したそれこそ新進気鋭の若手ばかりではなく、多くの実力者たちも含まれている。残念ながらこの人たちも、多くは再挑戦することなく政界を去ってしまっている。後者(べテラン)がいなくなったことでピーチクパーチクが得意でのぼせ上った若手が大半となり、民主党は迷走することになった。
 つまり、2回の極端な選挙によって、2009年には自民党議員の世代交代が一挙に進み、2012年には民主党の良識派を失い、両党とも質が劣化したのである。皮肉を言えば、民主党の場合はこれで世代交代は進められたが、肝心の政権交代ができなくなったともいえるのだ。

<キックバック議員は辞職すべし>
 いくらキックバックの責任者の処分をと声高に叫んでも、ルールのできる前のことについて遡及して適用するのは当然無理である。そこはある程度検察に任せないとならない。ただそうだとしても政治的・道義的責任は残る。素直に言って自らの出処進退の問題であり、関係した(関係していなくとも責任のある立場にあった)幹部は、こぞって一旦は身を引くべきであり、離党だけにとどまらず、辞職するのが筋だと思う。
 例えば安倍派5人衆は、全員有力政治家である。遅くとも1年8カ月以内には衆院選がある。有権者の理解を得た上で、再び議員に戻るなりしたほうが、国民は納得するであろうし、支持も戻りやすいだろう。議席にしがみつくのは、かえってマイナスになるはずである。最近あまり聞かれなくなったが、少なくとも「みそぎ」(選挙)は必要である。
 自民党は、既に政務三役にはお灸を据えて、岸田内閣は安倍派清和会の4閣僚を辞めさせた。副大臣、政務官は躊躇したが、やはり辞めさせるべきだろう。なぜならば、1月25日の報道によれば、野党の要求があっての上の事だが、国会の委員長や理事までも辞めさせるというなら、それとの兼ね合いで、政務三役からも関係者を一掃するのは当然のことである。そのままでは均衡を失する。二階派・岸田派の関係者にも累が及ぶことになり岸田首相は躊躇しているようだ。

<岸田内閣は総辞職すべし>
 お隣の韓国では前政権への追及はいつまでも続く、アメリカでも数年前の不始末なのに、大統領候補となっているトランプ前大統領を裁判で追及し続けている。国会開会前にケリをつけるといった、わけのわからないルールはなく、民主主義が貫徹されている。それに対して日本は優しく、辞すればそこで追及は止まる。これでは、同じことが繰り返されるばかりだ。今回は厳しい処置が必要である。
 そうなると、最高幹部こそ問題である。これだけの不始末をすれば民間企業のトップならとっくに辞任して、次の社長が決まっている。よい例がビックモーターであり、損保ジャパンである。またリクルート事件でも竹下内閣はつぶれている。江副浩正がバラまいた未公開株をもらうという受け身の罪だったが、キックバックは長年にわたり平然と能動的な法律違反を続けたのである。ここで責任を最もとるべきは、岸田文雄自民党総裁である。

投稿者: しのはら孝

日時: 2024年2月10日 15:43