2024.02.11

政治

【政治とカネシリーズ⑩安倍派5人衆の「表金」】 「裏金」の使途の前に公表されている「表金」の中身の検証が必要 -西村、萩生田、世耕は政治活動費の大半を派中派の囲い込みに注ぎ込んでいる- 24.02.11

 今、裏金を一体どこに使ったのかという問題に対し、疑惑のある議員全員が政治活動費に使い、私的流用はしていないと弁明している。公的活動であり税金がかからないことになっている政治活動に使ったという理屈であり、私的なことで何千万円も勝手に使ったとなれば完全な脱税となってしまうからだ。
 それでは一体どこに使われているのか。政治活動とは何か見てみる必要がある。弁明する議員たちは口をそろえて、人件費や事務所の運営に金がかかると言う。私が使っている政治活動費はまさにそうしたことに充てられている(資料『2023年篠原孝の政治資金の収支報告(簡略版).pdf』参照)。一方で、裏金議員たちが表に公表している政治資金収支報告書から、一体「表金」をどこから集め、何に使っているかを見れば、自ずと「裏金」がどこに使われているかわかってくる(資料『安倍派5人衆の2022年の収支報告概要.pdf』と『2022年5人衆と篠原の項目別(寄附・交付金・パーティー券・飲食・贈答・花代)支出一覧.pdf』を参照)。(なお、数字は全て24年2月上旬の訂正前のもの)

【西村康稔】
<領袖になるために繰り越しを多くして貯め込む>
 政党支部と資金管理団体(総合政策研究会)の収支報告書を見ると、22年の収入が3億8,514万円、22年度のみでも1億8,997万円を集めている。自らが派閥の領袖になるための準備なのだろう。繰り越しで多くを貯め込んでいることがわかる。
 総合政策研究会(資金管団体)では、他はパーティーとしているのに、「セミナー」「囲む会」「集い」を都市センターホテル、ANA系列のホテル、憲政記念館、地元などで18回開き、1億2,138万円を集めている。セミナーなど呼び名は違うが、内情はパーティーと同じであり、集めた総額は安倍派の派閥パーティー1億9,762万円と比べても遜色ない。
 もう1つの収入である寄付では、個人献金23件2,541万円、法人56社で1,810万円、政治団体190万円と合計4,381万円と1億円を超えている世耕と比べると少ない。

<50万円ずつを安倍派議員に配布>
 支出で見ると、政党支部から寄付金として63件、2,890万円①を支出しているのが特徴である。50万円を、山本佐知子、土井亨、小鑓隆史、井原巧、細田健一、簗和生、塩崎彰久、堀井学・・等23人(安倍派18人)の国会議員に配っている。安倍派内に自分の子飼いを着々と集めているのがよくわかる。他に、洲本支部の120万円をはじめ、選挙区内の自民党の支部(県議や市議を代表とする政治資金団体)に10万円ずつ、合計1,630万円寄付している。
 後述するが2022年は参議院選挙の年であり、当然のごとく萩生田も松野も参議院候補者に多く寄付しているが、西村は専ら衆議院議員が対象のようだ。高木には他の国会議員への支出はない。

<パーティー券もくまなく購入し、一般議員の5倍も支出>
 一方、総合政策研究会は、政治活動費として国会議員の励ます会等に費やされ、250件にも及ぶ。パーティー券の相場は1枚2万円だが、先輩議員として5万円、10万円、更にパーティーで主賓として挨拶したりしたのだろうと予想されるが20万円払っているケースも数件確認できる。領袖への布石であろう。そしてそれらの合計はなんと一般の議員の平均、約250万円の約5倍の1,294万円②にものぼる。
 寄付金とパーティー券の購入で2つの形で合計4,184万円(①+②)が同僚議員や、地方自治体議員等に支払われているのだ。このように政治活動といいつつ、仲間にお金を渡し、自分の派閥の議員、つまり将来の西村派(?)の囲い込み始めていることが、この資金の流れからわかってくる。これが自民党政治活動費の実態である。

<多くの秘書や運動員で着々と進む選挙の準備>
 もう一つ、目に付くのが人件費である。経常経費の75%に当たる7,019万円も支出している。この内訳は収支報告書からは明らかにはならないが、給料が1人700万円だとしても私設秘書10人分になる。
※いかに多くの運動員を抱えて活動しているかがわかる。

<政治活動費は、次の選挙のために使われる>
 いずれにしろ私のような、4,000万円でやりくりしているのと比べると段違いの収入、支出である。
 西村個人がパーティーで1億円以上の資金を集め、それを安倍派の更に親しい関係議員に配ってという構図である。いわば、将来の「西村派」の氷代、餅代である。個人のパーティーは許していいのではという、なまくらな改革案もあるが、それだと結局領袖の個人のパーティーが、禁止される派閥パーティーに代替されることがすぐわかる。だから、パーティーは派閥だけではなく個人も禁止しないとならないのだ。
 地方自治体議員や首長を寄付・交付金(陣中見舞い?)でつなぎ、地元活動を支える者には人件費を払い、盤石の支持基盤を固めている。これではとてもじゃないが新人はどうあがいても対抗できず、多選を続けられることになる。

【世耕弘成】
<個人献金で1億円近く集める>
 これを西村と同じように「覇」を競っている世耕でみてみると、少し違った傾向がみられる。収入総額は2億354万円、22年度だけで1億7,612万円を集めている。西村は様々な規模のセミナーを18回も開催し資金調達をしているのに対して、世耕は719件(460人)の個人寄付で資金管理団体「紀成会」に9,031万円も集めているのが際立っている。他にたった2回の大規模パーティー(400名弱)で4,447万円を集めており、極めて効率的な資金集めといえる。
 法人からの寄付はなく、政治団体からも実質は医師会、薬剤師会からも160万円にすぎない。同様のことが他の5人衆にも言える。自民党議員というと様々な政治団体から巨額の献金があるかと思いきや、意外と少ない。大半が自民党なり派閥に直接いっているからだろう。

<西村と異なり参議院に重きを置く寄付>
 西村と同じように政党支部から、22年の参議院選の候補者25人(安倍派10人)に寄付として10万円ずつ配っている。支出日から想像するに、選挙応援の際の陣中見舞いだと思われるが、衆議院には1人も寄付を行っていないことから、安倍派というよりも参議院を囲っているようだ。参議院をガッチリ抑えて政界(政治?)を動かした青木幹雄の再来を目指しているのだろう。
 世耕の場合は、紀成会から政治活動費として9,381万円使っているが、その内訳は、自らの和歌山県参議院選挙1区支部に2,448万円、世耕弘成後援会に4,762万円寄付されており、同後援会の収支報告を見ると純粋な日常業務(収支報告書の経常経費)に費やされている。
 紀成会から大量に仲間のパーティー券を購入しており127件736万円にのぼる。よくいわれる透明性も貫徹され全員の名前が記されおり、参議院議員には安倍派でなくとも10万円、衆議院は安倍派議員に2万円とここでも参議院を重視している。地域支部への寄付はないが、後援会等から出ている可能性がある。
 
【萩生田光一】
 安倍派後継を目指している3人目の萩生田光一の金の動きも西村や世耕とほぼ同様である。
 収入は2億2,290万円で世耕と同じだが、22年は7,299万円と一番少ない。内訳は個人寄付24件2,479万円、法人寄付261件1,403万円、政治団体寄付1,282万円。
 前2者の半分ぐらいで大体傾向は同じだが、西村と違い22年の参議院選挙の年なのだろう、主として安倍派の候補者20人には差をつけて30万円、20万円、10万円を寄付している。
 ただ2021年は、西村と同じように安倍派の衆議院議員を中心に、50万円を池田佳隆他3名、30万円佐々木紀他6名、20万円を10名に寄付している。衆と参の扱いは、前2者の中間を行き、着々と地歩固めをしているのが読み取れる。
 一方、はぎうだ光一後援会は、総支部からの400万円の寄付以外に目立った収支はない。
 世耕・西村・萩生田・松野の4人の支出をみると、せっかく苦労して(?)集めた金の多くが、安倍派の同僚議員や地元の地方自治体議員、他の議員に配分されていることがわかる。

<松野博一、高木毅>
 松野は22年参院選のためか、安倍派の候補に10万円と20万円に分けて寄付、他に官房長官としてパーティー券をくまなく購入(240件で558万円)している。地域支部への寄付はない。高木はパーティー券の購入をするだけで、他の国会議員への寄付はしていない。寄付は自分の政治資金団体、21世紀研究会と自分の後援会だけである。

投稿者: しのはら孝

日時: 2024年2月11日 19:18