2024.03.29

政治

【政治とカネシリーズ⑫政治責任 裏金議員は議員辞職して参考人招致に応じた辻元清美の潔さを見習え 】-82人の裏金議員のうち1人も政治的責任を取らないのは異様-24.03.25

<22年前の秘書給与疑惑>
 辻元清美参議院議員は、2002年2期生の時に秘書給与疑惑に巻き込まれた。佐藤観樹議員の妻が長らく公設秘書を勤めながら、ほとんど事務所にも出てこなかったことが発覚し、一気に秘書疑惑問題がマスコミで取り上げられた。何も知らなかったとはいえ法律違反をしていたのである。社民党はお金がなく政策秘書の資格がある人を雇った形にして月に50,000円を渡した後、残りを寄付の形にして政治活動に使っていたのだ。皆がそうしていて、当然のことだと思って辻元も同じようなことをしていたのである。これにより議員家族の公設秘書は勤務実態があったとしても家計が一体の配偶者のみ公設禁止になるという愚かな法律改正をしたのである。この点を詳細に述べると時間がかかるのでこの辺にしておく。

<潔く議員辞職し、参考人招致に応じた辻元清美>
 辻元は、言い訳をして逃れようとすることもできたけれども、当時の土井たか子党首に「先があるのだからさっさと身を引いて、そしてまた出直してくればいい」と言われ従った。私はその当時は政界には全く縁がなかったが、なぜかしら彼女の予算委員会で追及される場面をTVで見ていた記憶がある。荒井聡議員が「思い切り泣きなさい」と言って優しく追及していたのが印象的だった。土井たか子党首のアドバイスの通り、辻元はその後に復活してずっと衆議院で活躍し続けることができた。政治家にとっては上り調子の時に機会を活かすのも大切だが、むしろ問題が生じたときの対応の方が重要である。

<安倍元首相は退却の重要性を示した>
 その点で私は安倍元首相の政治感の良さには舌を巻く。2007年参議院選で私が責任を持って作成した農業者戸別所得補償で私自身も信じられなかったが、当時の小沢一郎党首がこれで戦うと言いつつ、なんと当時の1人区の29のうち23勝ち、自民党は6県しか勝てなかった。1人区は農村県であり自民党の金城湯池だった。ところが農業者戸別所得補償に農民は期待を抱き、民主党の議員の名前を書いてくれたのだろう。1票が動くと2票分の働きとなり信じられない大差がついたのである。その結果、参議院で「ねじれ」が生じ、衆議院では圧倒的多数を占めていながら、参議院で民主党が反対する法案は通らなくなってしまった。それを察知した安倍首相は、参議院選挙後の秋の臨時国会では、所信表明をし終わり、翌日から代表質問が始まるというその間の日に突如潰瘍性大腸炎を理由に首相の座から降りてしまった。実際病気があったのかもしれないけれど、のちのちの行動を見ると、これではとても政権運営はできないと観念して、見極めて辞めたのではないかと思う。つまり、将来の復権のための見事な撤退だった。

<小沢、福田の大連立は民主党を救ったはず>
 その後を継いだ福田康夫首相は、予算委員会で「正直これではとてもやっていられない」と愚痴をこぼし、それからしばらくして小沢一郎党首と謀って大連立政権ができるという手筈を整えた。ところがそれを民主党の両院議員総会にかけたところ、赤松広隆を筆頭にこぞって反対して連立政権はできなかった。もし、数人の民主党議員が、自民党政権中で修行をさせてもらっていたら、政権奪取後の政権運営はずっとうまくいっていたに違いない。民主党はせっかくのチャンスを潰してしまったのだ。
 そのためにその後も法案はなかなか通りにくく、民主党のご機嫌取りをしなければならなかった。かくして1年で福田内閣は交代し、その跡を継いだ麻生太郎内閣も1年で終わり2009年の政権交代に結び付くことになる。もし安倍首相がそのまま続けていたら、復活はなかったであろうしそれで終わっていただろう。潔く退いたがために5年後の大復活があり、その後史上最長の在任期間という偉業に結び付いた。政治家にとっては引き際が大切なのである。
 安倍元首相より先に政治家に成りたての辻元清美が見事な退却をやってのけて、今女性政治家として知らぬ者がいない存在に返り咲いている。

<政倫審は全く役立たず>
 安倍派の幹部がこぞって衆参の政倫審に出席した。二階派の武田良太事務総長も出席したが、国民の大半の90%以上がとてもではないが説明責任を果たしているとは思えないという世論調査が出ている。実際に、裏金造り(キックバック)がどこで誰が何を決めて、いつから始まったのかさっぱりわからないでいる。世論は正直である。自民党は党則を改正し、厳しい処分すると言っているが、岸田自民党総裁は秋の総裁選をにらみあまり厳しい処分はできるはずがない。そんなことをしたら、ただでさえ突然の派閥解散で麻生派、茂木派の信頼を失っているのに、もう再選は不可能になる。それよりもなにも宏池会も不始末をしでかしており、岸田総裁は派閥のトップを処分するのだったら自らも処分しなければならなくなり、とても総理を続けられなくなってしまう。

<辞める(退却する)が勝ち>
 私は本当に不思議に思う。2期生議員の辻元清美はその名の通り、清く正しく美しく振舞ったのである。82人の関係者のうち、1人も議員辞職をしないでいるというのは、私には信じられない。とっくに政治家を退いた森喜朗に5人衆とか称されて乗せられ、最大派閥を仕切って大きな顔をしていた者が、全く責任を取ろうとしないのは、辻元ならずとも怒りがこみ上げてくる。安倍元首相が決めたことを守れなかったと神格化し、一方で生きている過去の人・森にヘーコラしている。途中の事務総長に罪はないというなら、始めた時の森喜朗会長を政倫審にでも何にでも引っ張り出すべきなのだが、それにも応じようとしない。見苦しい限りである。まして、お決まりの「秘書が、秘書が」という罪のなすりつけは言語道断である。
 3月25日、やっと二階俊博元幹事長が、次期総選挙不出馬を表明した。議員辞職ではないが、一つの責任の取り方であろう。似たような考えから、安倍派事務総長経験者等の幹部4人(塩谷、下村、世耕、西村)は公認しないという重い処分が仄めかされている。
 しかし、そうしたところで韓国のような厳しいところは絶対許さないであろう。毎度前政権の人たちや前大統領を糾弾し罪人に仕立て上げている。一方アメリカでは、前大統領のトランプが刑事訴追を受け、そして大統領選に出る資格があるのかどうかということで裁判が行われている。ところが優しい日本国民は、退けばまぁそれでいいか、反省しているなという優しい態度をとってしまう。しかし、今回は忘れずに追及し続けるべきである。

投稿者: しのはら孝

日時: 2024年3月29日 11:23