【石橋湛山シリーズ⑨】地方・農村に目を向ける石破首相にエールを送る - 石橋湛山議連、農林(水産)族、国防族の政策友人内閣 - 24.10.08
自民党総裁選、私は石破さんか小泉さんのどちらかになってもらいたいと願っていた。ただ、立憲民主党にとっては高市早苗さんが一番有利だっただろうが、もし政権交代をしなかったら、日本の国がおかしくなってしまう。だから石破総裁・総理でホッとした。
政府与党に対峙しないとならない野党の立場にある。しかし、私は、石破茂首相にエールを送りたい。
<率直な発言は煙たがられる>
石破さんは29才で衆議院議員となり、 私は、ずっとあとから55歳で政界に新規参入した。38年の政治キャリアには雲泥の差がある。しかし、有力な農林族議員で農相を務めた自民党議員と農林水産省の役人、そして野党の農林族として相当長い付き合いがある。また、政治姿勢には似た所がある。
石破さんはよく勉強し、一家言を持ち、素直に発言してきた。そのせいで一部の人たちには煙たがられる。かくいう私も思ったことは口に出し、ものに書いており周囲からは胡散臭くみられている点で同じである。
石破さんは、農林と国防を中心に政治活動をしてきている。自民党は2つの分野を担当させプロを育成している。私も1978年から2年間、鈴木内閣の総合安全保障担当室に食料安全保障担当で出向して以来、安全保障も一つの分野になっている。
<4回目の総裁選の後、チャンスが来ると励まし続ける>
石破さんが4回目の総裁選に敗れた後、もともと小さかった派閥がグループとなり、皆離れていった。現金なものである。
私は、朝8時の党の勉強会がある前日は赤坂議員宿舎に泊まり朝食をとる。そこにはいつも石破さんがいたが、隅の定位置で順番が来るのを待ち、その間も本を読んでいる。邪魔しては悪いと思いつつ、時たま話しかけた。その時の決まったフレーズは、「政治は一寸先が闇だが、逆もあるからその準備を」というものである。私は石破総理が実現すると思っていた。と言うよりは願っていた。
<石橋湛山研究会内閣>
私は、今石橋湛山研究会の共同代表を務めているが、石破さんは重要メンバーの一人で、7回の会合の大半は出席し、村上誠一郎さんと競って質問・意見を述べている。もう一人の共同代表の岩屋毅さんが外相となった。反安倍を貫きとおし、安倍元首相を国賊と言ってしまい、役職停止1年となっていた村上さんも総務相として入閣し、安倍派は憤然としている。
研究会にゲストスピーカーとして講演をしていただいた当代の湛山ともいうべき剛腕ジャーナリストから、我々の議連は「はみ出し者」の集団だと、的を射た指摘をいただいていた。しかし、そのはみ出し者集団が、内閣を乗っ取る形になったのだ。
他に平将明デジタル担当相、牧原秀樹法相、伊藤忠彦復興相、中谷元防衛相と合計7人もの閣僚がいる。このことに触れたメディアは今のところない。
<久方ぶりの農相を経験した首相>
石破さんは、羽田孜首相以来30年振りの農相経験者の首相である。安倍晋太郎、渡辺美智雄、中川一郎、そしてその息子の中川昭一と末は総理と期待された元農相がいたが、いずれも志半ばで亡くなってしまった。
<農林族議員が政府・与党の要職を占める>
石破さんは、派閥もなくなり、党内基盤が弱いとされる。そうした中、いかにも政策通の石破さんらしく、親しい友人の多くは農林族の皆さんだったのだろう。内閣には、小里泰弘農水相、赤沢亮正経済再生相、伊東良孝地方創生相、以上の3人は推薦人に名を連ねていた。林芳正官房長官(2度の農相)、そして中谷防衛相(林政中心)といった農林族が多くいる。
党をみると、森山裕幹事長は農相経験者であり、鈴木俊一総務会長も小野寺五典政調会長も水産に力を入れる農林族である。他に坂本哲志国対委員長(前農相)、浜田靖一議院運営委員長(前国対委員長)がいる。政務三役を農林族で独占したのだ。
報道によると石破さんは、総裁に選出される前から幹事長は森山さんに決めていたという。野村哲郎、坂本、小里と九州勢ばかりが農相に就いている。今回小泉候補が総選挙を直ちにすると主張していたのに対し、石破さんは、予算委員会等で国民に判断材料を示してからと言っていたのを、踵を返して、小泉論に従ってしまった。解散は首相の専権というのに、なる前に解散・総選挙に舵を切ったのは、森山幹事長の強い主張に従ったとみられている。
<政策で付き合った国防族も多く入閣>
もう一つの国防族については、メディアは危険だとかいうありきたりの論調が目立つ。
中谷防衛相、林官房長官、岩屋外相と閣内に4人、党の要職に小野寺政調会長、浜田議運委員長の2人の元防衛相がいる。これは、石破さんは農林水産行政と安全保障政策に力を注いできた政策の人だという証拠である。つまり派閥ではなく、政策の友人を閣内に引き入れたのだ。
<自民党は政策のプロを人事でも育成>
これをみておわかりいただけると思うが、石破、中谷、林、小野寺、浜田の5人は、農林と国防の2つを専門分野とする点で共通である。安全保障問題が複雑となり、緊急対応も必要なことから、林が1回あとの3人が2回、中谷は3回防衛相を務めている。
ひるがえって我が党の代表を顧みると、自らが力をいれてきた政策分野が不明瞭な者ばかりである。
同じ党にいながら、野田佳彦代表と泉健太前代表の専門分野は私にはよくわからない。辛うじて枝野幸男元代表が、金融・財務分野だとわかるぐらいである。
<思い通りの人事は幸運、但し、先は苦難が続く可能性大>
このように、石破さんは湛山議連に集う同じような価値観を持つ人々、農林族、防衛族と「政策お友達人事」を断行してきた。
今まで派閥の注文を聞いて組閣しないとならなかったのに、形式上は派閥が解消した。その間隙を縫って、思い切り勝手な人事ができたのである。その点では幸運ともいえる。しかし、10月1日の首相指名の記名投票時、石破さんが投票するのに拍手がわかず、野党の誰かが「拍手ぐらいしろよ。石破さんに失礼ではないか」ともっともな優しい野次を飛ばした。私はうっかり大きな拍手をするところだった。
<国防を除けば野党に近い石破さんの政策>
意外と政策の方向が一致していることが多い。農政については、もともと与野党に差はなく、日本の農林水産業を振興しなくてはならないという気持ちは私と変わりがない。
原発についても総裁選では当初「原発をゼロに近づける努力を最大限にする」と述べ、経済界を慌てさせた。外交面でも、日米同盟は対等という考え方は、湛山の独立自尊の考えを引いている。その延長線上で、それこそ不平等な日米地位協定の見直しも主張している。 更に、アジア版NATOも提唱している。これも湛山の日中米ソ(ロ)平和同盟の系譜につながるのではないか。他にも夫婦別姓も容認する立場である。これらは野党の主張に近い。
<正々堂々と政策論議を重ねて政権交代を目指す>
しかし、憲法9条の改正、安保法制となるとじっくり議論したことはないが、私との基本姿勢は結構異なると思う。ただ政治家は考え方がすべて一致する者などいない。二人とも日本の平和、そして世界の平和を願っていることに変わりはない。
農業政策については、力を合わせて同じ方向を目指せると確信している。地方への眼差しもも同じである。ただ違いは明らかにして、やはり政権交代して日本の政治を変えていかなければならない。