2024.11.13

政治

期待感が失望感に変るとダメージが大きい  - 民主党政権・石破政権・今の国民民主党 - 24.11.13

 2009年民主党政権ができたときに、私は早すぎるのではないかと危惧した。民主党は経験が乏しくて政権を担える力がまだ備わっていないと考えたからである。同じことを考えていた人に羽田孜元首相がいた。他の人たちは選挙で政権交代できたということで有頂天になっていたと思う。何しろ衆議院が500議席を超えていた時ですら、300議席を超えた政権与党はなかったのに、465議席に減ったにもかかわらず、308議席という大与党の政権ができたからである。
 私が心配したとおり、子供手当て、16兆円の埋蔵金等で、出だしからしっちゃかめっちゃかで、ガタピシし続ける政権となった。このことはあまり触れたくないのでやめにする。
 わかる人にはわかるのであろう。小沢一郎民主党代表も同じ懸念を抱いたのだろう。福田康夫内閣の時に大連立を考え、政権を奪取する前に民主党議員に経験を積ませようと考えていた。しかし、民主党は血気盛んで単独で与党になるといって却下し、一時は小沢代表が民主党を飛び出さんとする気配も漂っていた。

<民主党への期待が大きすぎ、それに応えられなかった3年3ヶ月>
 2012年に野田佳彦現代表が党首討論で安倍野党自民党総裁に総理として啖呵を切り、解散総選挙となり、民主党は57議席という大敗北を喫した。
 羽田さんが私を政界に誘う時に常に言っていたことが耳にこびりついていた。「期待感が失望感に変わる時は怖いんだ。政権交代はできるけれども、政権維持をするためには民主党だからではなく、この人だから投票すると評価される選挙に強い同僚議員をたくさん増やしておかなければならない。それには大都会のように浮動票が大半のところは無理だ。日本で最も律儀で浮気をしない有権者の集団は農民だ。その農民の心を掴む農政をあんたに作ってほしい」と、いうことを盛んに言われていた。まさに羽田さんが言われた通り、期待感が失望感に変わったのである。
それから十数年、私の所属した党は民主党、民進党、国民民主党、立憲民主党と名前は変わっているが、政権を奪還することができないでいる。

<石破人気は自民党内野党の正論にあった>
 日本では石破政権が誕生した。私は前回のブログに書いたとおり、石破政権には相当期待していたし、今でもその気持ちに変わりはない。真面目な石破茂が、今まで彼が発言してきた党内野党的な事をきちんと実行するなら、日本の政治は変わると思っているからである。4回も総裁選に落ちていながら、次の首相に相応しい人として常に石破茂が一位であり続けたのは、日本国民が彼の正論に拍手を送っていたからだろう。多分自民党のコアの人たちよりも、無党派層や野党系の人が石破茂を首相にと考えていたのであろう。

<1ヶ月で期待感が失望感に変わる>
 ところが、総裁になり首相になった途端、かつての彼の主張は影を潜めた。あまり生々しいのでここでいろいろ書く事はやめるが、石破カラーが全く出せなくなっている。ただ、まだ数ヶ月であり、これから石破カラーをちゃんと出して期待に応えるならば、リカバリー・ショットも打てるのではないかと思っている。しかし、石破政権に対する期待感が高かった分、もしそれが実現できなかったとしたら、失望感は民主党政権以上ではないかと思う。
 余計なことだが、私は石破さんが解散総選挙をすぐにしたのは間違いだと思っている。少なくとも来年の任期まで、誰が何と言おうと必死で石破カラーを出す政策を実行すべきだった。5回目の挑戦で漸く総裁になったのだから、短くても何でも、もう自分の好きなようにやればよかった。しかし、周りからの圧力もあったのだろう、押されて解散総選挙に打って出てしまった。期待感が短期間の間に失望感に変わってしまったのである。

<浮かれすぎの玉木国民民主党代表>
 今人気絶頂なのは国民民主党である。手取りを増やすということで若者の心をとらえ、立憲民主党が比例区で数万票しか増やしていないというのに、倍増どころか6百万票の上の比例票を取り、議席数では4倍の28議席になっている。期待感がいやおうなく高まっていると思う。玉木代表はあちこちから注目され、今は絶頂期にある。若者の期待感が大きいのだ。しかし、この今の期待感が失望感に変わる時が来て失速していくに違いない。
 我が立憲民主党は野党第一党として議席数を98から148へと伸ばして躍進はしている。少数与党に成り下がった自民党は国会運営で悪戦苦闘している。国民民主党を味方につけんとして103万円の壁については妥協をしていくというような姿勢を示している。しかし、これはトリガー条項の解除と同じような目に遭う可能性がある。違うのは、あの時は余裕綽々の自民党だったが、今は国民民主党なりを味方につけなければ法案も簡単に通せないという危うい立場にある。

<手練手管の自民党は新代表の維新に乗り換える可能性もある>
 今回の選挙で、維新の会は改選前の44議席から38議席に減少し、その責任を取る形で馬場代表が辞任。現在、維新の会は代表不在の状態にある。
 ただし、臨時国会で新たな代表が選出されると自民党には維新の会という別の交渉窓口もできることになる。自公連立の215議席に維新の38議席を加えれば、合計253議席となり、過半数の233を大きく上回る計算だ。こうなると高飛車な国民民主党はあっさり捨てられて梯子を外される可能性がある。自民党はこうした修羅場での国会運営に慣れている。今後の展開には注視が必要だろう。

<立憲民主党は5つの委員長ポストで力を貯える>
 首班指名で野田佳彦と書いて民主党政権の誕生ということも言われているが、一つの党ですらまとめてやっていけない党に、他の党を政権内に取り込んでうまくやっていく能力はない。それほど期待されてはいないと思うが、これで政権運営がうまくいかなかったら、国民は二度と野党に政権を任せてみようと考えなくなってしまうおそれがある。
 だから、せいぜい大躍進により手にした5つの委員長ポストをうまく活用して力を貯えることに専念したらよい。

<反省する自民党が復活する可能性大>
 一つ、自民党で感心したことがある。11月7日、自民党の両院議員懇談会がマスコミ抜きで行われた。新聞報道によると、3時間かけていろいろな議論をしたという。私は、自民党が徹底的に議論を尽くす党だというのを米価決定の折に見てきている。徹夜でへとへとになるまで議論し、それにつき合わされる役人の目として見てきたのでよく承知している。それにひきかえ、我が党は形式的に議論をするだけで、決定は一握りの幹部が不透明なプロセスで決めている。非民主的であり民主党の名が泣く。
 2022年に参議院選挙で大敗した際も、蓮舫が激しく泉健太代表に責任をとれと食って掛かったが、公開の場であった。議論の時間もほんの僅かであった。ここに自民党と立憲民主党の差が出ている。自民党は反省しているのであり、必ず復活してくるのではないかと思っている。
そういう意味では、我が党にとって今が正念場である。心して運営していかないとならない。

投稿者: しのはら孝

日時: 2024年11月13日 08:40