2025.01.14

政治

【石橋湛山シリーズ⑩】今脚光を浴びる石橋湛山の思想ー12月臨時国会所信で石破首相が冒頭と結語に湛山を引用ー

<12回を数える勉強会>
 野党議連で2回、超党派議連になって10回開催し、活発な議論が展開されている。
我々がやり始めたせいかわからないが、いろいろなマスメディアが石橋湛山研究会に注目し、かつ、石橋湛山の功績について注目し始めて報道されている。
 特に2024年12月の臨時国会において、石破首相が所信表明の中の冒頭に石橋湛山を引用し締めくくりにも引用するということで、さらに拍車がかかったと思われる。
  石破茂首相は、当初から石橋湛山研究会のメンバーである。メンバー表は100人余に及んでいる。主な人たち挙げると今閣僚の中に入っている人たちの相当多くが石橋湛山研究会のメンバーである。この点については、2024年10月7日の「石破首相にエールを送る」という私のブログにおいて明らかにしているが、石破首相、共同代表の一人である岩屋毅外相、そして村上誠一郎総務相等7人のメンバーが閣僚入りしている。つまり、石破内閣は石橋湛山研究会内閣ともいえるかもしれないのだ。

<はみ出し者集団が内閣を乗っ取る?>
 2023年3月に野党で立ち上げてから既に合計12回に及んでいる。いろんな議員連盟というのは年に1回か2回、重要な問題について議論するだけのものが大半であるが、この議員連盟は違って、国会開催中にほぼ2ヶ月に1回は開くことを運営方針としてきている。人数が多いゆえに参加者も多いのが特徴の一つである。
 超党派ということもあり多くの人たちあるいは無党派の人たちが来ている。すでに前のブログに書いた通りであるが、各党のはみ出し者の集団だと船橋洋一氏には指摘されているが言い得て妙な感じもしないでもない。ただ、そのはみ出し者たちが政権与党・自民党を乗っ取った形になり、内閣を形成していることになる。

<野党議連>
 長年の友人である小山展弘議員から相当前から要請されていた湛山研究会を発足させたのは、2023年3月のことである。その前に月刊日本が1月より1年間湛山を追いかけ始めていた。
 野党第1回目の講師である増田弘氏(立正大学名誉教授)は石橋湛山研究の第一人者であり、オーソドックスな話をしていただいた。いずれ超党派になったのでもう一度来ていただく予定である。まさにいろいろな石橋湛山の著作をわかりやすく一般の人の目に触れるようにしてくれたのは増田教授である。私は「小日本主義-石橋湛山外交評論集-」(草思社、1989年)で湛山を知り、それから虜になった。
 2回目は、鎮目雅人(早稲田大学教授)であるが、朝日新聞にちょうどその頃安全保障問題で湛山を引用し、小日本主義的な考えを取り入れていかなければならないということを主張しておられたので、早速お呼びして話をしていただいた。

<超党派議連>
 その後、自民党の古川禎久(現議連幹事長)が、議場で私のところに来て「自分もやろうとしていた。私も入れて欲しい」ということ言ってきたので、超党派議連に衣替えをして発足させた。
 6月1日に1回会合が開かれ、ハーバード大学でエズラ・ヴォーゲル教授の下で日本研究をし始めた、ダイク・リチャード氏に話をしていただいた。彼は日本研究していたけれども、湛山を全く知らなかったという。しかし読めば読むほど、石橋湛山の主張には世界的普遍性があると気づき、毎朝3時に起きて3~4時間英訳をしては仕事に出かけているという。
 第2回は孫の石橋省三氏、第3回は石橋湛山が東洋経済新聞社で仕えた三浦銕太郎の血を引いているという藤原帰一千葉大学教授と、縁のある方をお招きした。
 第4回の第10回は寺島実郎氏、当代きっての政治評論家である。わかりやすいレジメをもとに湛山の功績の大なることを紹介されるとともに、現下の政治情勢を交えて湛山思想の今日的意義を述べられた。
 第5回は宇野重規氏(東京大学社会科学研究所教授)、第6回は中島岳志氏(現東京科学大学教授)と2回連続で学界からお招きした。その中で宇野氏がされた、湛山がやみくもに自己主張するだけでなく、巧妙に官憲の制止をくぐり抜けたというのは意外だった。
 第7回は船橋洋一氏(元朝日新聞論説委員)、第8回はノンフィクション作家であり評論家である保阪正康氏、第9回は毎日新聞の編集委員の倉重篤郎氏と言諭界からお招きした。船橋氏は主にジャーナリストとしていかに自由闊達な主張を展開した立派なジャーナリストだったか、保坂氏は戦後すぐ1945年に敗戦して植民地を失いせいせいしたと言ってのける湛山の凄さ、倉重氏は天皇陛下が石橋湛山に宛てた書簡のことについて、それぞれの切り口で話しをしていただいた。
 第11回は1月28日、田中秀征氏と佐高信氏の2人の対談集と『石橋湛山を語るいまよみがえる保守本流』を出版されたが、その片方の佐高信氏に来ていただくことになっている。ちょっとどぎつい佐高節を楽しみしている。(石橋湛山研究会の開催状況は湛山議連講師とその著書.pdf)

<石破首相の所信表明における湛山の引用>
 湛山は政治や経済ばかりでなくありとあらゆる社会事象について膨大な文章を残している。
 大の読書家の石破首相は多分長い石橋湛山評論集を読みこなしているに違いない。その中から自分の現在の政治状況下で参考になる、あるいは味方をしてくれる部分を都合よく使っている。
 石破首相は熱心な「湛山ファン」であり、就任前に出版した著書『保守政治家』で「気骨のリベラリスト、石橋湛山に学ぶべきことは多い」「湛山政権が続いていれば全く違う日本が出現したのかもしれないとも書いている。石破首相は従来は多数で押し切る政権運営を進めてきたが、少数与党という苦しい状況の中で、野党の意見も聞く協議の中でコンセンサスを得ていかなければならなくなった。そこで、「国政の大本について、常時率直に意見をかわす慣行を作り、おのおのの立場を明らかにしつつ、力を合わせるべきことについては相互に協力を惜しまず、世界の進運に伍していくようにしなければならない」という湛山の主張を借りて野党に協力を呼び掛けた。
 また、結語でも湛山の施政方針演説・「常に国家の永遠の運命に思いをいたし、地方的利害や国民の一部の思惑に偏することなく、国民全体の福祉をのみ念じて国政の方向を定め、論議を尽くしていくように努めたい」を引用し、国民の後押しをお願いしている。
私は石破首相にしっかりと湛山を学び、日本を元気にして欲しいと願っている。

投稿者: しのはら孝

日時: 2025年1月14日 18:51