2025.07.21

外交安保

【トランプ関税シリーズ⑦】【令和のコメ騒動シリーズ⑥】 徴税権は国家の権限でありトランプ流の関税政策に乗った方が得ではないか ―日本も高関税により農林業を復興すべし―25.07.21

<トランプ流のディール取引にこれ以上惑わされるな>
 期限の7月9日、トランプが書簡という屈辱的な形で関税率を各国に伝えた。日本は赤沢担当大臣がアポもなしに7回もアメリカに行ったけれどもほとんど効果なく、日本とマレーシアだけが今課されている関税よりも1%高くなったが、他の国、韓国とかインドネシアやタイ等では、前と同じかあるいは下がっている。インドネシアは関税率を32%から19%に下げて別途合意が成立した。それを日本は24%から1%上げられており、屈辱的な結果である。
 当初アメリカは、日本が第7位の貿易赤字国であり、日本を真っ先の交渉相手国にし、合意の見本を作るといった雰囲気が両国に流れていた。しかし、結果はアメリカに対して貿易赤字を抱えているイギリスと、とてもではないがまともとはいえない関税率145%や 115%という報復合戦をしていた中国との合意が成立し、日本は後回しにされた。そして、今現在ベッセント財務長官が万博外交で訪日したが、8月1日が最後の期限ではないという思わせぶりで、更に圧力をかけている。それ以上延ばすことはしないと言いつつ、全く固い日付ではないというのもディール(取引)を楽しんでいるかのように見える。

<アメリカの車にまつわる言い分は筋が通らないものが多い>
 日本は対米輸出を3分の1が自動車又は自動車部品であり、自動車の高関税25%が1番悩みの種である。日本の経済は、貿易についていえば、自動車1本足打法と言われるのはむべなるかなである。
 もう言い古されているが、アメリカの車がほとんど日本では見かけない。それに対して、アメリカには日本の車が370万台も輸出され、なおかつそれと同数以上の車が、日本が投資したアメリカ国内の工場で造られている。ハンドルの位置は変えようとしないし、ばかでかい車ばかりだし、アメリカは日本に合わせて売る努力をほとんどしていない。その証拠に欧州車は外車でも使われており、中国のBYDに至っては日本の独特な軽自動車も日本向けに作り始めたりしている。

<新自由主義への決別に乗っかるべきだ>
 戦後80年、アメリカが見栄を張り、片意地を張り自由貿易の旗手としてきた時代は過ぎ去ったものと思われる。何よりもアメリカがもう音を上げて、今まで自ら築きあげた国際秩序を根底から潰し、変えようとしているのだ。ずっとアメリカと歩調合わせきた日本は、今のところそのアメリカに素直に同調していく以外ないのではないか。今更中国側につくことはできないし、EUやBRICS、東南アジアといった違ったグループとの新たな自由貿易グループの構築は理想ではあるが、時間がかかりすぎるし、当面アメリカに代わる市場にはなりえない。
 1兆2000億ドルの貿易赤字というのは、日本円にすると180兆円であり、日本の総予算の1.5倍。アメリカこそ国難である。放っておいたらこれがもっと増えていく。しらばっくれているが、デジタル貿易ではアメリカは黒字だが、その部分を引いても、どっちにしろ貿易を見るとアメリカは大赤字国なのだ。だから軍事産業以外の製造業の大半がガタガタになっているので、復興したいという気持ちに協力する姿勢を示して行かなければいけないと思う。基軸通貨国としてアメリカ市場をいわば開放し、輸入を増やし各国が経済成長できたのである。その地位にあぐらをかき過ぎて過剰な消費を続け、産業の衰退を招いてしまった。それに気付いて是正しようとしているのだ。だから水面下で行なわれているだろうアメリカの造船業の復興に手を貸すことなどを考えていく必要がある。

<アメリカと一部では同調しつつ、多方面への展開を試みる>
 アメリカのような大国でない日本は、アメリカばかりでなく外国と今まで以上に連携し仲良くしながら生きていくしかないのである。
 アメリカの高飛車な関税攻勢を横目で眺めていた中国は、難癖をつけていた水産物の輸入禁止を解いたのに続き、ASEANの外相会談と何立峰副首相の万博訪日時に合わせて、24年間続く牛肉の輸入禁止も解き、日本に秋波を立て続けに送っている。他の国はアメリカとそこそこ対峙しつつ他の途を探し、対米交渉のカードを広く使おうとしているのだ。日本もアメリカにただすがってお願いするだけでなく、いろいろな方途を探し求めなければならない。

<アメリカの悩みを聞き入れる度量が必要>
 アメリカの悩みに寄り添う姿勢をまず示す必要がある。アメリカにはアメリカの理屈があるので、工業製品の輸出についてはアメリカの悩みを聞いてやる以外にない。ただそれだけでは譲り過ぎである。
 アメリカのやっていることは明らかにWTO違反である。戦後GATTから始まる、ブレトンウッズ体制等は、皆アメリカが主導したものであり、それを今自ら放棄しようとしているのである。それならば日本もそれに歩調を合わせ、アメリカが産業・製造業を復興したいと言うならば、自動車の25%もぶつくさ言わず受け入れる以外にない。アメリカは関税を最初から下げる気などなく、今後もあり得ない。
 その代わり日本は、愚かなことに次々に譲った農林水産物を日本国内で作り、地方を元気にしたいと言い出したところで何の罰も当たらないのではないか。仮に高関税をかけたところでアメリカにとってはそう痛手にはならない。報復関税などと言わず、日本の痛みもわかってくれ、とこっちでお願いしたらよい。だからこの際、もうただただアメリカにお願いするといった屈辱的な対応はやめていくべきなのだ。アメリカが安全保障上の理由から、鉄(50%)、銅(50%)、アルミ(25%)を打ち出すならば、日本も食料安全保障を持ち出して、コメが飛び切り大切であり、絶対に国内で生産しなければならないものだと主張していけばよい。

<木材に高関税で中山間地域を救済する>
 アメリカは、さびれ果てた西部の工業地帯を高関税で復興したいという。もっともなことである。同じように木材の大量輸入で今伐採できる木も伐り出せないでいるのが、日本の中山間地域である。この地域の活性化のためには木を伐り出せるようにしないとならない。そうすれば人口流出、過疎にも歯止めがかかる。材木に100%の関税をかけてもいいはずである。何も関税の課税の権限をアメリカだけにふるわせておくことはない。トランプが言い、そして実行しているように、関税は国内産業を守るために使っていい各国の権利なのだ。それをガット・WTOに使わせてもらえなかったために、国の形が歪んでしまっただけのことだ。今、関税をフルに使い、正常に戻る時が到来したのである。

<コメは日本の生命線・安全保障として一歩も譲ってはならず>
 今のところ米については譲る気配がないのは当然のことだ。石破首相や小泉農相にコメの輸入という譲歩をさせてはなるまい。コメなどいくら輸入しても685億ドルの対米貿易黒字の削減にはほとんど効果がない。
 アメリカはアメリカ国民の命を守るということで医薬品に更に高い200%の高関税をかけるという。これもまさにわからないことでもない。だから日本もアメリカの高関税政策による主張に呼応して、同じような対応すれば良いのではないかと思う。

投稿者: しのはら孝

日時: 2025年7月21日 13:05