2025.08.07

【参院選総括シリーズ2】立憲民主党は一人区は農政で大善戦-野党共闘できず、詰めも甘くあと一歩足りず。長野に見習えー 2025.8.7

 参議院選挙の勝敗は、32の1人区で決まるとよく言われる。その点では、野党が17、自民党は14(1は保守系無所属)で野党の勝利である。私が深く関わった2007年の参議院選挙は、29の1人区で野党が23、自民党は6しか勝てず、全体では自民党が37。それに対して、今回は自民39で似たような敗北である。ただ比例区が全く違って、2007年は民主党が20なのに、今回は7のみであり、全体で07年の65対して今回は22にとどまった。

<自民党:比較第一党、立憲民主党:野党比較第一党は見苦しい限り>
 2007年には農業者個別所得補償で農村県を中心に1人区で勝利した。ただ、比例区の20(比例区2,326万票)は、マスメディアに大きく取り上げられた消えた年金に相当後押しされた。ところが、今回は物価高対策、そして食料品の消費税率0の公約はあったが、全野党が同じような公約を設けており、有権者にはアピールするまでに至らなかった。
今回は、比例区の得票は740万票にすぎず、どんぐりの背比べでしかないが、同じく700万票台の国民民主党、参政党の後塵を拝し、第4位である。その陰で自民党の比例区の当選者数は12、立憲、国民、参政の3党は7、公明、維新が4、共産、れいわ3、保守2、社民1、みらい1と多党化している。これでは立憲民主党が野党第一党などと言えた義理ではない。石破総理が少数与党と言わず、苦し紛れに比較第一党と言っているが、こちらの方がまだ理がある。
有権者が自公にNOを突き付けたのは紛れもない事実だが、政党への支持がそのまま表れるのが比例区の票で、立憲が前回24年の衆院選の1156万票を大きく割ったのは、支持者が離れている証拠である。他党の、「日本人ファースト」とか「手取りを増やす」といったキャッチフレーズもなく、有権者を引き付けることになった。

<立憲民主党は1人区では農政で大善戦>
 また当選者数でも22と、前回の大敗北した時と変わりない。前回22年は1人区では、長野と青森のたった2選挙区でしか勝てず、野党全体でも山形と沖縄の計4県しか勝てていない。それに対して今回は、立憲が青森、岩手、宮城、新潟、長野、三重、大分、宮崎の8県で(立憲)が勝てた。無所属の秋田、徳・高、愛媛、沖縄は立憲側とみていよいと思われることから、それなりの勢力は確保したともいえる。
 22年の1人区の惨敗は、〇〇調査会を作り公約作りをしたが、そこに農政がなかったことが大きな原因の一つだった。参院選に農政の目玉がないなど、私にとっては信じ難いことだった。今回は、コメ不足、コメ価格高騰の起きる前から、農政の目玉の議論を行い、07年の農業者戸別所得補償のバージョンアップ版、食料・農地直接支払いという政策を掲げ、公約の3番目に位置付け、チラシも作成した。野田佳彦代表は、1人区を駆け回り、前回22年の2人から8人と当選者が増え、あと一息が5~6県あった。その点では、1人区では07年以来の大善戦である。きちんとやれば農民に、そして有権者に響くのだ。

<自民党の底力は盤石で、参政党の伸びは脅威>
 立憲民主党は後半戦で接戦と言われた、福島、栃木、岐阜、岡山、佐賀、熊本等でことごとく負けてしまった。長らく政権与党にある自民党の地方組織の底力は大したものであり、危機感をバネに相当巻き返しを図ったからだろう。この5県が勝っていたら、8+4+5=17で勝利といえたのに残念である。
 一方、参政党が長野県等の地方でも、得票率を相当伸ばしていたことに驚かされた。それほど知らない政党だが、自民党に近いということで参政党に投じたのだろうと思う。
 参政党は、選挙戦に突入してから、排外主義(外国人政策)的な主張が大きく取り上げられてきた。多分、都会では関心を持たれただそうが、もう一つ、食料自給率 100%、学校給食の地産地消、有機化等は農村地帯ばかりでなく、コメ価格の高騰により、農政に関心を持ち食料不足を心配した主婦の賛同も得られたのではないかと思う。
 本来、裏金問題はもっと焦点になるべきだったが、物価等の影響に隠れて忘れられた感があった。しかし、どっこい有権者はやはり裏金自民党を許してはいなかった。石破政権というより自民党に厳しいNOを突き付けた。ただ政治全体の不信が拡大し、共産党、立憲民主党といった既存政党も飽きられ、新興政党に流れてしまった。その意味では、日本の多くの有権者の目が肥え、浮動層化しているのだろう。

<1人区は参政党が自民票を奪う>
 自民党の敗北は、1989年の宇野宗佑政権の36、2007年の第一次安倍政権の37に続き、今回の39は3位の大敗北である。特に大きなのは、参政党が相当、自民党にお灸を据えるという票の受け皿になったことである。参政党が議席を得たのは大都市だが、前述のとおり恐ろしいのは全国に候補者を擁立し、地方の県でも相当得票したことにある。だから比例票も700万票に達している。立憲民主党等の野党側が1人区でそれなりに勝てたのは、参政党が主として自民党の票を相当奪ってくれたことによる面も大きい。ただ、浮動票に頼ってきた我が党も相当喰われたことは間違いない。

<長野県は1人区5連勝、他県は学ぶべし>
 立憲が伸びなかったのは、他に野党の一本化という問題もあった。長野の場合、2019年に一人区になり杉尾秀哉で初めて野党共闘が成立し、それをずっと引き継いできている。羽田次郎の21年の補欠選挙も含め5連勝である。自民党は、35歳の若手女性外交官を擁立した。国政選挙では初の女性候補で、刷新感を訴えたが、長野県民の心をつかむことはなかった。12万票引き離して野党では一番圧勝した。立憲民主党が2つともとっているところは、今回青森が加わっただけで他にはない。
 1人区の戦い方にはもっと工夫が必要である。21年の羽田補欠選挙では、共産党とくっ付きすぎだと県連代表の私が党本部からも連合から批判されたが、選挙は勝たなければならない。5連勝の長野県が文句を言われる筋合いはない。
 選挙が近づいてからドタバタと野党連携をしようとしてもそう簡単ではない。常日頃からの付き合い、蓄積が大切なのを分かっていない。手前味噌になるが、次回必勝を期すため猛省し、大物銘柄議員もいない長野がどのように勝利しているか学んだらいいと思う。

<複数区での退潮>
 立憲民主党が議席数を伸ばせなかった二つ目の要因は、複数区で多く取りこぼしたことにある。典型が東京である。6人目にも入れず塩村文夏がやっと(3年任期の)7人目に滑り込んだ。2013年、鈴木寛(民主公認)と無所属にさせられた大河原雅子が共倒れで落選して以来である。
 また、立憲民主党は自民党公明党もっと言えば共産党と同じくらい手垢のついた政党と見做され新鮮味が感じられなくなってしまったのだ。数年前に維新、1~2年前から国民民主党そして今や参政党に目移りされてしまっている。
 大阪はもうかなり前から参議院では我が陣営はいない。埼玉、千葉、神奈川、愛知では辛うじて議席は維持したが、 茨城(2人区)福岡(3人区)の現職が落選している。いずれも成長著しい参政党に取って代わられたのである。茨城(茨城都民?)も政令市を2つ抱える福岡も都市化が急速に進み新住民が多くなり、この人たちが新興の党に投票しているに違いない。
東京は国民民主党が2議席を確保、参政党は2位、自、公、共が1ともうカオスといってよい。3年後にどうなっているか誰にも予測できない。

投稿者: 管理者

日時: 2025年8月 7日 17:00