2025.08.08

【参院選総括シリーズ3】多数の野党の勝利はかえって政権交代を遅らせるのではないか-多数野党乱立は、少数政権与党の思う壺であり、責任野党が必要-2025.8.8

<思いがけない都市部の高投票率の一方で下がり続け過疎地の投票率>
 驚くことは、参議院選挙であるにもかかわらず、15年ぶりに50%台後半の58.2%という高投票率だったことである。19年には5割を割り込んでいたのが、過去30年間で3番目という。その中であまり取り沙汰されてないが、都市部ではいつも投票率が低いのにもかかわらず、東京が61.53%と3番目の投票率というのは、SNS世代の若手がたくさん投票したことによるものではないかと思う。一昔前では考えられなかったことである。
 それに対して地方の投票率が低くなっているのは、好ましくないことである。地方の投票所を次々と廃止統合し、お年寄りが歩いて投票に行けないという悪い環境になっていることも影響している。大都会向けに投票締め切りが午後8時とされたが、地方を中心に4割近くが締め切り時刻を切り上げている。政治学者やマスコミもやたらと一票の格差ばかりを差別だと採り上げるが、私は投票所へのアクセスの格差は人口減少の続く過疎地と期日前投票がすぐにできるような都会とで相当拡大していると思う。後者こそ一刻も早く改めなければいけないことである。そうでなければますます地方の地道に暮らしてきた人たち、そして地方の高齢者の声が政治に反映されなくなってしまうからだ。
 そこにSNSで若者に媚を売る政策が垂れ流され、今だけ金だけ自分だけといった判断で投票されていたら、この国はデタラメな方向に行ってしまうのではないかと心配である。

<二大政党制とは程遠い多党乱立>
 羽田孜元首相らは、1993年二大政党制を目指して自民党割って出た。それから32年、参院選で政党要件を満たした党が11にも及んだ。
 ①所属議員5人以上 ②直近の衆参選挙で、比例代表が選挙区で2%以上の得票、のいずれかを満たすことが条件である。危うかった社民党はラサール石井に救われ、チーム未来も2%条件を満たしたした。当分この状態が続くと思われる。
 今回の選挙結果を見ても、日本にはに二大政党制は向いてないのかもしれない。衆院選挙比例区で2%はハードルが高いが、参院比例区は、SNSだけでも戦える事から、今後も小政党が参入してくると思われる。

<自民党は政権維持のために懸命に結束>
 今(7/28現在)自民党は石破降ろし等で大変である。しかし、いずれは落ち着き、反省して再起に向けて団結し、結束力を高めていくだろう。石破内閣になって、石破首相に続投を働きかけたのは、岩屋外相、村上総務相、中谷防衛相。3人とも石橋湛山研究会のメンバーである。私が石破内閣を「石橋湛山研究会内閣」と称した由縁である。各グループ(昔なら派閥が中心となる)は、いざとなったら政権維持のために団結する。自民党内の足の引っ張り合いはあるけれども、石破内閣を支える人たちは少なくとも石破内閣で行こうという姿勢を保っている。こんな逆境をバネにしているのだ。敢えて言えば、災い転じて福となすである。
 国民は正直である。各種の世論調査でも石破総理は辞任する必要なしというのもみれる。読売と毎日が即座に石破辞任の報を流すなど、ほとんどの大手マスメディアは石破交代を書き立てている。それにもかかわらず、国民は冷静である。この調査結果に驚きを感じている。

<野党連合政権などは今はとても無理>
 自民党のベテラン佐藤勉や木原誠二選対委員長が一旦野に下ったほうが良いという、もっともな意見を述べた。ところが私はそれが実現することの方が正直言って怖い。なぜならば、今野党に政権を任されても、自分の党ですらきちんとガバナンスがおぼつかないのに、野党がまとまって連立内閣など運営できるはずがないからだ。このことが充分すぎるぐらい分かっているから、不信案を提出し、政権交代して行くという動きが殆ど見られない。全野党(参政党は少しニュアンスが違うが)が、自公政権との連立を否定している。本当は政権与党入りしたくてウズウズしていたくせに、あまりの大敗に驚き、今更落ち目の泥船になど乗れるものかという功利的な動きであり、当然のことである。
 しかし、それ以上に立憲民主党党首の首班指名には応じないだろう。バラバラで足の引っ張り合いになってしまう。私のように55歳で受動的に(つまり散々せがまれて仕方なく)政界に足を踏み入れた者と違って、20代30代から国政政治家を目指してきた人たちは、飽くなき向上心の塊で「俺が、俺が」という意識がものすごく強く、私はそれにいつも辟易している。しかし、私は今も野党が大同団結する夢を追い続けており、名刺には「立憲民主党(略称民主党)」と書き入れ、いつしか元の民主党に戻りたいと思っている。

<大同団結して責任野党を作る以外なし>
 ところが、比例票が700万票の三つの野党が鼎立している今は、それぞれの政党が「俺が党、俺が党」と主張して折れようとしないことは目に見えている。自公は否定され、せっかく野党が多数になっているのだから、立憲民主党が他の野党より抜きん出た多くの議席を得た上で、他の党が集まればよいという状態に持っていかないとならない。
 結局、羽田孜元総理が言われたように「責任ある野党」、つまり1つの大きな野党が必要であり、そこに他の政党が参加する形しかない。それを今のように、それぞれ自分の党が一番だと思っている党が組んでも決してうまくいかないということである。
 自公を衆参ともに少数与党に追い込んだ今は、首班指名の時に全野党が野田佳彦と書けば、それで政権交代が実現する。しかし、決してそうはならず、ますますいがみ合って混迷を極めるということが予想される。だから今は一方では自公政権の危機ではあるが、それよりももっと危機的なのは立憲、維新、国民、参政が鎬を削るようになってしまった野党の方ではないかと思う。中でも野党第1党としての地位がグラついている我が立憲民主党こそ危機的状態ではないかと思っている。何とか建て直しを図っていく以外に政権交代の途はない。

<喜ばしい最多女性議員当選>
 私は2014年に、女性議員を増やすための提案ペーパーをまとめ、関係者に実行を促して以降、ずっと自らも汗をかいてきている。しかし、国会議員に限れば、残念ながら私の手掛けた実績はゼロである。2011年6月も二(三)連ポスターを貼り出さなければならなくなり、仕方なしに2人の女性議員に囲まれた三連ポスターを10種類200枚ずつ作り貼り出した。辻元清美には、「篠原さん、いろいろやってるけど実績ゼロじゃない」と厳しい指摘を受けた。
 2022年の参院選、私は西村幹事長の下、幹事長代行として、せっせと女性候補擁立の手助けをし、地方区で初めて候補者数で女性が上回った。面倒なはずの野党共闘も上回り、ちょっと差が開いていた比例区でも、最後には女性候補が上回った。その結果、当選者数で初めて女性が上回ったが、何のことはない男性が当選できなかったのも理由の一つだった。
 今回、候補者で半数を超えた党はなかったが、当選者数は43人と過去最多だつた。22年の35人上回り、当選者全体に占める割合も34%で、前回の28%から6ポイント高まった。立憲民主党が12人と最多で、自民党と参政党が7人だった。また立憲民主党は22年に引き続き当選者でも半数を超えた。
 もともと衆議院より割合が高かったが、今後もこの傾向が続いて欲しいと願っている。

投稿者: 管理者

日時: 2025年8月 8日 17:00