2024.04.27

【花粉症シリーズ②】 緑、緑また緑の美しい日本を取り戻す -日本の山を覆い尽くす杉を伐採して中山間地域を活性化する―24.04.27

 江戸末期、日本を訪れたペリーは、日本遠征記で、初めて見る日本列島の美しさに目を見張った。そして日記の第1頁目に「緑、また緑・・」と書き綴った。赤茶けたカルフォルニアを出航したのであり、その差は歴然としていた。エコロジスト、川勝平太は、そうした日本の美をこよなく愛し、日本全体が庭園とした日本列島をgarden archipelago(庭園列島)と呼んだ。

<絵に描いたような見事な紅葉>
 日本の紅葉はそれはそれは奇麗である。今後も外国人観光客はその見事さに惚れ惚れし、多くの人達が訪れるに違いない。春夏秋冬と四季の節目がはっきりしており、その折々の風景は見る人を楽しませてくれる。我々日本人は当たり前のことであり、あまり有難みを感じない人が多いが、一年でも日本に暮らした外国人はすっかり虜になるであろう。大陸の東海岸に位置し寒暖の差が大きく、それがためにより鮮やかな紅葉となる。 日本各地、どこでも紅葉の名所があるが、私は志賀高原の一気に訪れた紅葉に白樺の白が際立つ志賀高原を横手山の頂から見ると心が洗われる。

<燃えいずる緑>
 私は、今4月から5月にかけての緑なす山々の美しさは秋の紅葉に引けを取らないと思っている。同じ緑ではなく、柔らかな黄色のような緑から、1つ1つ数えれば10数種類違った色の緑がある。日本の多様な広葉樹中心の天然林、自然林のなせる技である。木々が一斉に芽を出す芽吹きの季節であり、まさに緑が燃えているようにも見える。これが初夏を過ぎると皆濃い緑一色となっていく。私は春この一瞬の様々な色の「みどり」こそ日本が世界に誇れる美の一つだと思う。この時期に日本を訪れる大半の外国人は、サクラばかりに気を取られているが、いずれこの日本伝統の「みどり」の多様性に気付く人が出てくるに違いない。
 ところが残念なことに、この誇るべき、そして後世に伝えなくてはならない緑なす山々が、かなり前から危機に瀕している。

<切り出す時も考えず、頂上まで杉が植えられた>
 かつての勤勉な日本人が、山のてっぺんまでせっせと植えた針葉樹・杉の人工林である。だれもあまり違和感を抱かないが、山肌に緑の絵の具で塗りたくったような林があちこちに見えるのは多分日本ぐらいではないかと思う。戦争遂行のため山も木を伐採しまくり、戦後の日本の山は禿げ山だらけになっていた。それを政府の大号令により手の付けられる近くの里山にも実り深い国有林ともせっせと植林したのだ。そこで選ばれたのが成長が早い針葉樹なかでも杉であり、長野県では冷涼な気候に合うのだろう、専らカラマツ(落葉松)が植えられた。信じがたいことだが、杉が日本の国土面積の12%、森林の18%、人工林の44%を占めるという異様さである。

<大半が伐採期になるも金にならず放置される杉>
 国民の半分以上が悩まされる杉・花粉症により杉・人工林は見直しが迫られている。木材としてのプラスの価値は忘れられ杉花粉のマイナス面が国民の怨嗟の的になっているのだ。441万haのうち70%(約308万ha)が50年以上の伐採期に達しているのに、伐採できないでいる。今後10年間毎年5万haずつ伐採し、その後は7万haにするという。これでは70~80年もかかり花粉症対策にはなりえない。 伐採しても材価が二束三文で採算が合わないこと、そして伐採する労働力が確保できないことが大きな原因だという。

<日本経済停滞の一因が花粉症ではないか>
 医療費(45兆359億円 21年度)は年々増えているが、その中で花粉症による医療費は僅か5000億円前後(1%)だと高を括っているが、日本全体へのダメージは相当あると思う。花粉症の症状は、目のうるみかゆくなり、くしゃみが出て熱っぽくなる。体もだるくなると仕事の効率が上がらないのだ。命に別状がないことから、予防医療的研究も進んでいない。
経済学者も何も関心を示さないが、諸外国と比べ日本の生産性があがらず、経済成長率も下がってきたのは、ひょっとすると花粉症も一因かもしれないのだ。何しろ、世論調査では、花粉症の季節には7割以上の人は、仕事が手につかないと言っているのだ。年間1~2カ月、国民の半分が仕事に身が入らないというのは大きな損失である。子供達も勉強する気になれなくなっている。

<アメリカは肥満が経済停滞の一要因と特定>
 アメリカはその点しっかりした国である。肥満がアメリカ人の労働意欲を奪い、生活習慣病の原因となり動きが鈍くなり、アメリカの生産性を低め競争力を落としているという研究が行われ、1980年代から「米国人のための食生活指針(Dietary Guidelines for Americans)」を作成している。2020年には乳幼児の摂取量が初めて設定されている。肥満を小さい頃から抑え込もうという確固たる姿勢の表れである、最近の小学生では、慢性の肥満児は日本のほうが増えてしまっているという。政府は脂肪に偏ったPFC(たんぱく質、脂肪、炭水化物)バランスを改め、日本人並みにするなどと定め、国民の食生活の改善に乗り出している。
つまり病気を経済停滞n一員として国を挙げて対策に取り組んでいいるのである。

<森林環境税をフルに使って花粉症対策を兼ねて山村振興を図る>
 政府は本腰を入れて、日本の山の整備に取りかからなければなるまい。生半可なことでは、花粉症患者は救えない。この際、大金と大労力を山村に注ぎ込むべきである。もっと言えば、これをバネにして中山間地域の活性化を図るべきなのだ。極端なことを言えば、山村に住んでもらう人を増やすテコにもできるのだ。
 お金はあるところにはある。その一つが2024年から徴収される森林環境税(600億円)である。既に2019年から森林環境譲与税で各市町村に配分されているが、東京新聞の関東38自治体調査によると、東京の太田、台東、渋谷の3区では全く使われておらず、10市区は使用率が5割未満だった。新宿区などは繰り越して翌年一般財源化しているという。まさにマネーロンダリングのそしりを免れない。
そもそも建付けが間違っており、配分にあたって森林面積、林業労働者に加え、人口を算定基準に入れたからである。森林がない大都会には使い道もないのだからこんな歪んだ制度はすぐ改正すべきだ。胸に痛みを覚える良心的で気の利いた市区は、協定を組んだ地方の市町村にお金を回し、そこで森林更新が行われているという。どこの都市部の市町村もこの使い方に文句を言うまい

<木材の輸入には高関税をかけ自国の山の整備に充てる>
 次が年間1兆7,503億円(2022年)に及ぶ木材の輸入である。かつてはWTOやTPP等の地域協定により、ひたすら関税ゼロが「是」とされたが、今はSDGsの時代、世界も日本が緑の保全に努めなくてはならない。その財源として木材輸入に関税をかけ、それを原資にして日本の緑の保全に充ててもクレームを付けられることはない時代となっている。ところが、大半の人がこの価値観の大転換に気付いていない。
 今でも国際社会からは違法伐採された木材は輸入すべきでないと言われている。かつて、日本の凄まじい木材輸入により世界の熱帯林が減少し、他の国の山が荒れていると難癖さえつけられたこともある。高温多湿の日本は、1年に消費する木材は十分に賄える国であり、外材に頼る必要のない国なのだ。今はそれをすっかり忘れ、安ければよいと輸入しまくっている。このあたりで姿勢を根本的に変えないとならない。

投稿者: しのはら孝

日時: 2024年4月27日 18:18