2025.10.06

外交安保

【25夏中国シリーズ③】大国アメリカと中国のそっくりな驕り-中華思想とアメリカ第一主義は同根- 25.10.06

 米中相互関税の交渉は、イギリスとの間で真っ先に決着し、日本も15%に決まり他の主要国も次々と決着つけつつあるが、中国とは90日間交渉することになり、今本命との交渉に乗り出した。ここにトランプ関税の標的が中国だったことがあぶり出されてくる。

<標的は500億ドルの日本から3000億ドルの中国に移る>
 1980年代後半、力を失ってきたソ連に代わり経済大国としてのし上がってきた日本が、アメリカのライバルと目されるようになった。長らく年間500億ドルの対日貿易赤字(第1位)が続いており、それが米国の気に障り、いろんな意味で標的にされていた。その当時のアメリカの全体の貿易赤字が2000億ドル。それが今や6倍の1兆2000億ドルに膨れ上がり、そのうち3000億ドルが中国である。奇しくも日本も中国も4分の1を占める。日本は今は685億ドルと対米貿易黒字の点では第7位に過ぎない。米国は他の国も全て続いて10%関税、相互関税、分野別関税と三種類の関税を突き付け出してきているが、いずれも中国を念頭に置いており、それだけでは露骨なので他の国にも巻き添えにしているだけとしか私には映らない。やたら東南アジアにきついのは、中国の迂回輸出を意識してのことである。
 10月末韓国のAPECで19年以来のトランプ・習近平会談が行われ、その後トランプ大統領の訪中、来年初めの習近平主席の訪米が予定されており、一気に2国間の交渉が進むとみられているが、貿易関税は決着が難しいとみられている。

<24年と打って変わった厳しい歓迎>
 今回昨年に続いて、中国側の招聘により1週間余中国の工業団地を中心に視察した。今回は農村にも行き、1970年代の農村をそのまま残した歴史博物館(?)、地方空港を巧妙に改造した農村、公園とバラエティに富んだところを見させていただいた。急激に変貌を遂げる中国、特に農村でその姿を残して置かないとならないと考えた中国政府が各地に50年余前の姿を残せと号令をかけているらしい。アメリカでも各州が開拓農民の暮らしを展示していたが、日本にはほとんどそうした動きが見られない。日本こそ失われつつある風景、伝統を保存しないと消えてしまう。日本が和売れているのに過去にも思いを馳せる姿勢に中国の余裕を見せつけられる思いがした。
 昨年は北京、天津、淮安、常州とそれぞれのところで精緻な日程表が作られ、それぞれで党のトップ・党の総書記(市長より上のランクで)と日本政商視察団団長の私との会談もセットされ、1時間余のやり取りに相当疲れ果てた。そのことはブログには載せなかったが、せっかくなのでその時やり取りで私が話したことを紙にまとめて団員に配布した。
今回は大島敦衆議院議員に団長になってもらい、そうした重圧から解放されたことから、じっくりと視察に集中することができた。

<いきなり出てきた台湾有事>
 しかし、大島団長は大変だった。1日目の北京の外交部の馬副部長の冒頭の発言は、原稿を読みながら延々と続いた。いってみれば、日本に対し自重しろという警告である。
 多分今年からついたのだろうが、各地でみられた横断幕には反ファシスト戦争勝利というのも付け加えて、欧米の賛同も得られるように気配りしていた。昨年はそんな政治的な事は話題になったことが1度もなかった。それどころか1カ月前に実刑判決が出たアステラス製薬の社員が拘束されていることに対して、我が方からいかがなものかとクレームをつけてたくらいである。中国側からは、台湾有事がどうのこうのというような事は一切触れられなかった。それに対して今回はいきなり台湾有事であった。
 通常は団長しか会合しないが、ここはこの訪中団の事務方をずっとしている小山展弘衆議院議員が大島団長を救った形になった。「台湾については内政問題であり、そもそもウクライナと事情が違う、それ以上のことはないんだ」と言い切って、きっぱりと話を打ち止めするかたちとなった。どうなることかとハラハラして聞いていた私はホッとした。

<思いがけず出会った信州のにおい、信濃モーターズ>
 南京のすぐ近くの合肥市工業地帯では、私は単なる偶然だと思うが、同行議員の一部は昨年の団長(私)に対する配慮だという、信濃モーターズを見学した。私の選挙区ではないが、長野県上田市丸孔町の企業が進出していた。800人の従業員を抱え、寮も完備し、きれいな工場だった。帰国後調べてみると、信濃絹絲(シナノケンシ)という紡績会社が、軽薄短小の電機メーカーになっていたのだ。すっかり定着して、中国の企業になっており、製品の売り先は外国や日本よりも中国にせよという社是に私は感心した。つまり、中国が豊かになるのに貢献せよということであり、トランプと同じく工業製品も地産地消に心掛けよということなのだ。
 日本の海外進出企業も、東南アジアの安い賃金をはらって製品を造り、日本も含む海外に輸出するという形が一般的だと思うが、私は、その地でまず売り、海外はこの次にするほうが経営的にも健全だと思う。それを実践しつつあった。

<領土的野心はトランプは口先のみ、中国はちょっかいばかり出す>
 ところが最終盤の合肥市の会合においても意見交換の場が設けられており、そこでまたそのトツプの可志忠氏が馬氏と同じことを言い出した。そこでは予定されていなかったけれども、前述のとおり普通ならば代表どうしがやり取りするだけだけなのに、珍しくそれぞれに振られたので私も以下のような意見を述べた。
 中国はやはり大国であり、根底に中華思想がある。その証拠にちょっと大島団長がクレームをつけたが、周辺諸国という言葉は、中心国中国(中華)を取り巻く周りの国Around chinaという感覚である。日本は、東側が太平洋であることもあり、周辺国とは言わず、中韓台等は近隣諸国、つまり、隣のご近所の国といっている。アメリカファーストと言ってるトランプ大統領の考え方と瓜二つである。つまり、中国ははるかかなた昔から中国第一(中国中心すなわち中華)なのだ。
 米国の領土拡張の野心という考えは、驚いたことにカナダを51番目の州になったほうがいいのではないか、グリーンランドはアメリカ領にする、メキシコ湾はアメリカ湾に変える、パナマ運河は米国のものだから米国に返す等メチャクチャである。最後の点は、パナマが運河は実際は中国資本が入っているからという難癖をつけている。それでは今5500億ドル(80兆円)の日本の投資を呼び込むといっているが、それは日本支配になるあら受け入れられないということ同じになる。つまり、パナマは投資による支配がダメだといい、矛盾も甚だしい。
 しかしアメリカのこれらの事は、今のところトランプ大統領の口先番長(?)よろしく、何一つ実行に移せず、口だけにとどまっている。それに対して中国はこれだけ大国なのであるにもかかわらず、南シナ海でいろいろ領土拡張の実行行為をしている。それに加えて尖閣列島についても航空機や船が悪さを仕掛けてきている。とても大国のすることではない。これでは周辺いや近隣諸国から嫌われ、警戒されても仕方あるまい。

投稿者: 管理者

日時: 2025年10月 6日 10:59